甲州/笹子雁が腹摺山  

−−「秀麗富士12景」の一つ


雁が腹摺山シリーズ 笹子雁が腹摺山 縦走気分が味わえる楽しい山並み
単独行 齋藤 修
平成12年5月26日(金)

 一昨日の「雁が腹摺山」に気をよくし、笹子雁が腹摺山へ向かうことにした。この
一帯には『雁が腹摺山』という山が三山ある。5百円札の絵柄で有名な@雁が腹摺山、
本日行くA笹子雁が腹摺山、もう一峰は小金沢連峰のB牛奥雁が腹摺山である。それ
ぞれ違った魅力山容を呈しており、そそられるものがある。また、3山とも大月市が
指定している「秀麗富士12景」に指定されている。景観も優れていることが裏付けさ
れている。
 多くの場合、笹子駅で下車し新中橋から稜線を登るコースがとられるが、以前より
『笹子鉱泉』に興味を持っていたので、下山路に準備してみた。甲斐大和駅を9時す
ぎに下車する。名前は変わってもやはり中央線のローカル駅、平日のこの時間降りる
人は少ない。駅近辺には人もなく、静かなものである。本日は急いで出たので、山頂
用のビールを準備していない。このあたりで手に入れておかないと、本日はノンアル
コールの山旅になる。これは許されることではない。駅から少し離れたところにスー
パー(とは言っても客の姿はない)があった。なかなか品揃えもしっかりしている。で
きるだけ冷えたものを物色し、購入する。持参のクーラーバックに納めれば、準備は
完了である。

 駅を笹子よりに戻るように歩く。5分ほど国道20号線を歩くが、すぐに日川沿いの
道になる。近年整備されたのであろう、なかなか整備された道が続く。途中信玄ゆか
りの史跡を示す石碑が数カ所ある。登山道は、田野地区といわれる集落から延びてい
る。ここには、景徳院といわれるなかなか立派な寺がある。手入れも行き届き多くの
建物が建っている。寺院の入り口には大きな駐車場・便所なども整備されている。山
門の横に、大鹿峠と曲り沢峠を示す標識があるが、大鹿山を指すものはない。

 取り急ぎ登山地図のように、寺を通過する道を選択する。境内にも同様の標識があ
る。大鹿峠に向かうと大鹿山をピストンする事になるので、曲り沢峠方面を進む。こ
こにも立派なトイレがある。すぐに林道になる。2軒程民家があり、躾の良くない犬
が飼われている(むやみに吠える)。地図では沢沿いに多少歩き、稜線に出るようにな
っているので、林道を進むがどうも雰囲気が違う。出会いの「曲り沢峠」の標識があ
る場所まで戻る。運良くおばさんが家から出ていたので、確認すべく声をかける。

 実は、これが間違い。大鹿山に行くなら峠からいけとか、景徳院の住職は変人だか
ら気をつけろと私の聞いていないことを、熱心に話し出す。加えて、どこから来たか
と聞くから「埼玉からだ」と答えると、こんなところまで埼玉の人間が登りに来るは
ずがないなとど吠え出す。加えて、一人で歩くと熊と出会うなどと脅し始める。極め
つけは、私の予定にもない大鹿峠を降りてみろという。下り口に80歳過ぎの変人婆さ
んが住んでいるから注意しろと言う。確かであれば、ありがたい教訓だが、どうもこ
のおばさんがもっとも怪しそうである。聞いた手前、多少つき合ったが20分ほどロス
をしてしまう。

 標識横を踏み跡を頼りに、上昇し始める。おばさんの『熊が多い』という言葉が多
少気がかりになりつつ歩く。一人で歩いていると見えないところでの物音は多少不気
味なことが多い、加えて下らぬ言葉をいただき多少戦意を失いつつある。それも、咲
き始めたツツジ・フジの花を見ているうちに落ち着いてきた。ガスも多少薄くなり、
高度と共に周りの山々も確認できるようになると、足取りも軽くなってくる。

 稜線まではなかなか歩きやすい傾斜で、登山道がつけられている。途中標識が全く
ないのが寂しいが、迷うほどの枝道がないので心配することはない。時々見られる花
や景色を楽しみながら高度をかせぐ事ができる。植林帯が少なく自然林の中を歩ける
ことも嬉しい。
稜線に気かつくと、木を叩くような物音がする。おばさんの言葉がよぎる。コールし
ても反応がない。心配しながら進むと、本日初めての登山者との出会いがあった。2
人連れの中年パーティーである。虫をよけ手を叩いていた音のようであった。

 簡単に挨拶し、大鹿山の山頂に向かう。山肌にも植林の際つけたと思われる、やや
幅のある道もついている。大鹿山への道は、標識は着いているものの踏み跡は寂しい。
落葉の時期はルートをはずさぬよう注意が必要なようである。山頂は狭く、5人程度
が立てる程度である。三角点に腰をかけ、持参したおにぎりで小腹を満たす。甲斐方
面が多少みれるが展望は乏しい。

 下降すれば、先ほどのトラバース道にすぐ出会う。ここには、標識も着いていない
ので、反対側から大鹿山を目指す際には、注意をして読図をしてほしい。笹子側に歩
きやすい道がつけられている。こうなれば、ピークを歩きたくなる。この後も稜線づ
たいの道を選んで歩くことになる。大鹿峠にはベンチがあり、汗を引かせるには良い
ところである。多少峠への道が変更されいるらしく、道が変更されている。案内図が
着いているので迷うことはない。ややもすると笹子へ行く幅のある道に生きたくなる
が、木に打たれている「お坊山」の古びた木札を頼りに登路をとる。

 枯れ草のためあまり、踏み跡ははっきりしていないが、このあたりで木々に赤テー
プが打たれている事が多いので、それを目安に行く。お坊山手前で東峰に行く分岐が
あるはずである。高いところを目指してけば間違いない。分岐は、多少北側が開けて
いる。滝子山が間近に見られる。滝子山はこの後、山陰に隠れてしまうので十分に見
ておいた方がよい。
ベンチもあり、休みたいところだが、すぐ先が「お坊山」なので頑張る。

 お坊山は、これといった特徴もなく展望もない。10人ほどが居られるような広場に
なっているだけである。ましてどこから来たか、虫が多い。顔の周りにまで集まって
くる。払っても無理のようである。時間的にも、ここで昼食(といっても途中で食べ
ながら来ているので、サンドイッチしかない)と思っていたが、やめにする。米沢山
までは40分弱進んだ方が良さそうである。


 少し下ると南側が開けた場所に出る。霞んではいるが、秀麗富士が確認できる。な
かなか残雪の状態が良く、美しい。デジカメだと雲にしか写らないであろうと思いな
がら、久々の富士の姿を納める。物音がするので慎重に歩いていると、反対方向から
の登山者とすれ違う。やはりリタイヤなさったような壮年の男性である。このあたり
で、米沢山から笹子雁が腹摺山までの稜線が確認できる。今日のコースは、ここまで
も何度かのアップダウンを繰り返しているが、この先もありそうである。

 30分程度のがんばりで「米沢山」の山頂に着く。地図にはないが、甲斐大和方面に
行ける下降路があるようだ(目立たない標識であるが、沢には入らないようの指示が
ある)。お坊山同様、展望がない、同じような山頂である。違いといえば、塩山方面
の街まで見渡せるようになったことぐらいである。早速ビールを空け、サンドイッチ
をつまみに昼食をとる。ここも虫が多い。座っていられず立ったまま・動きながらの
ランチになっていく。

 本命の笹子雁が腹摺山までは、1時間20分となっている。しかし、地図を見ても山
並みを見てもそんなにないような気がする。山梨百名山であり秀麗富士12山でもある、
眺望を楽しみに進む。米沢山からの下りは傾斜があり、鎖がつけられている。十分な
木々もあるのでつかまる必要はない。どんどん降りる。そうなれば米沢山と同じくら
いの標高登り返す必要がある。最後の急斜面が終われば、なだらかな道になる。
振り向けば、後方に歩いてきた山と小金沢山の稜線が確認できる。気楽に歩いている
と、「笹子雁が腹摺山」に着くことができる。


 山頂は、所々木々が茂っているが、ほぼ360度の展望が得られる。薄雲の中に富
士山も確認できる。なかなかの眺めである。御坂山塊越しの富士が堪能できる場所で
ある。当然ビールを空け、山頂の儀を行う。大月方面も近いので、標識も増えてくる。
笹子峠に行く道が明瞭についている。晴れていれば、南アルプスの山々も眺望できる
に違いない。途中、男性を抜いたがなかなか現れないので、山頂は占領できている。
汗を乾かしながら、まだ十分に冷えているビールを飲む。15分程度遅れて、先ほどの
男性が到着。私から挨拶するが、なにも返答がない。禿頭が太陽に照らされ目立つ後
ろ姿を見送る。

 山頂からは、降りるだけである。神中橋まで降りていくが、国道を通る自動車が小
さく見えている。まだまだ標高差は大きいようである。高圧線をくぐり、下降してい
く。程良い傾斜が着いてるので、危険なところは少なく歩きやすい。ツツジの花も残
っているところがあり、目を楽しませてくれる。次第に、植林帯に導かれるようにな
ると、植林道を利用した登山道になる。上から見る程距離はなく、40分程度で降りる
ことができた。神中橋は、旧国道と20号の合流点にある。あとは、笹子鉱泉を探しな
がら国道沿いに歩く。

 高速道路料金を省略する大型車が結構多く走っている。排気ガスが急に気になると
ころである。道沿いの集落をを抜けるとドライブインがあり、掲示には「ドライブイ
ンで詳細を確認」との趣旨が書いてある。婆さん一人が居る薄暗いドライブイン(大
衆食堂)で聞くとおばさんが居るから、行ってみると入浴ができるという。早速、道
路を隔てた「笹子鉱泉」へ行ってみる。声を張り上げるが応答がない。ずかずかと入
り、何度か呼んでいるとやっと声が聞こえた。掃除していたらしい。その隙お風呂を
覗くと、あまりお湯がない。「入れる?」と疑問たっぷりに聞く。70は越えていると
思われる、婆さんだが身軽に動きお風呂の準備をすぐにし出す。すぐに入れると、行
動で示している。赤茶けた浴槽が、鉱泉の佇まいを呈していた。

 入浴は、次の電車まで1時間弱あるのでのんびりできる。川が眺められる浴槽での
んびりと汗を流す。割にさらっとしていて気持ちの良い、お湯である。湯あがりにビ
ールを飲みたいが、笹子まで20分弱ある。髪を乾かしながら駅を目指し、出発する。
駅前の酒屋でロング缶を購入し、ホームに出るとすぐに電車がやってきた。後は、逆
らわず中央線に乗っていけばよい。

大和9:30−9:50景徳院−10:00登り口−
10:50稜線−11:00大鹿山11:05−11:15大鹿峠−11:40お坊山(東峰分岐)−11:45お坊山
−12:15米沢山12:30−13:30笹子雁が腹摺山13:40−神中橋−14:40笹子鉱泉15:15−
15:25笹子15:31−高尾−新宿−18:07東鷲宮

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