水流との格闘

−−黒部上の廊下遡行報告 鈴木

Tue, 17 Aug 1999 17:59:06


上ノ廊下無事終了しました、御心配をおかけしました、ありがとうございました。
鈴木善三

8月11日
 我々3人と読売新道を登る橋元さん中村さんと5人で斉藤さんが手配してくれた夜行バ
  スに都庁地下大型バス駐車場を10時30分出発。

8月12日
 5時扇沢に到着。トロリーバス出発6時30分出発の予定だったが、それは明日からで今
  日は臨時バスが7時発。
 7時15分に黒四ダムに到着、ダムを渡った遊覧船乗場で身支度、7時40分歩き出す。11時
  40分平渡し着、船乗場は水位が低くずっと下の方に降りなければならない船を待つ人は
  30人位、2便に別れて乗船、我々は先の便に乗ることが出来た。
 12時20分に対岸に到着、やはり登山道迄ずいぶんと登らなければならない、息がきれる。
 ところで今回、明日の朝迄の食料は橋元さんが用意してくれた。ザックの中にはビール
  ロング缶が10本、斉藤さんがやはりロング缶4本を持っていた。船を待つ間に斉藤さん
  が2本を素早く冷やして片付ける、少し冷えが足りなかった。
 どれくらい歩いた頃か、さっきのビールはちょっと冷えていなかったから、もう2本開け
  る、今度は沢の水でしっかりと冷えている。天気は良いし極楽極楽。そして2時半頃も
  う2本飲もうと冷やす、大森さんは、これには呆れてしまう。雨も降ってきたし先に行っ
  て木ノ下で待っている、小雨の中4人で空にする。

平の渡し

奥黒部ヒュッテへの道(1)

奥黒部ヒュッテへの道(2)

  3時20分奥黒部ヒュッテ到着、先着パーティのテントがあちこちに。良い場所がないか
  と探していると、大森さんが、ちょっと待てと言って小屋の方に行った。帰ってきて小
  屋代5千5百円「二人3千円出さないか俺が1万円出す、俺は今日は小屋に泊まりたいんだ」
  で決定。
  橋元さんと中村さんは、最初から小屋泊まりで、食事だけテントに来る予定だった。
 ところで酒はビールの他、日本酒を橋元さんが2.7・、鈴木が0.7・、斉藤さんも同じく、
  大森さんがウイスキーを1.5・。酒はたっぷり、小屋に入れば後は宴会。自分は何時も
  の ごとく、また酔いつぶれてしまい、気が着いたら布団の中だった。また失敗反省...。
 僕は知らなかったが夜中は相当の雨が降っていた、小屋に入って大正解だったと話が出
  た。
8月13日
 橋元さんと中村さんが、6時に小屋を出て行った。赤牛岳の登りは大変だろうなあと話
  し、我々も6時45分出発。7時丁度に沢に入った。ところで、ここで大事件。
 大森さんに続いて入った僕が、中ごろ迄行かないうちに足をすくわれ、あっという間に
  流される。2度程浮き沈みして20m位先でやっと河原に立って後ろを振り向くと、大森
  さんが、ぽかぽかと水の中に浮いていた、でも大森さんは15m位しか流されていなかっ
  た。斉藤さんのみ無事通過。
 ちょっと気弱になってしまった。しばらくは河原歩きである、大森さんが杖を手にした、
  自分も手ごろな木を拾って手にする。多分下ノ黒ビンガの所だと思うが青々とした水を
  たたえていて流れもある、自分が其処に着いた時には2人とも渡り終った後だった。大
  森さんは単独行の人と話している。斉藤さんは、河原に座っていて早く来いというよう
  な顔をしている。ザイルが欲しいが斉藤さんは出す気も無いらしい...。
 多分流されるだろう、此処で流されたらずいぶん下迄流されるだろうなあと気に掛る。
  思いきって水に入る、水量は胸のあたり迄有り流れもある、2度流されそうになったが
  何とか持ちこたえる、此処でさっき拾ってきた杖が役に立った。杖にすがってやっとの
  ことで対岸に渡ることが出来た。今回の遡行で一番恐かった、やはりザイルを出しても
  らうべきだったと後になっても思っている。

腰までの渡渉は大変

 広い河原歩きも終わりスゴ沢出合に着く11時35分。続いて上ノ黒ビンガ通過、苔むした
  滝の前で一休み。拾った杖もゴルジュの中を通る時やむなく手放す、大森さんはいつま
  でも持っていたが徒渉の時に折れてしまった。
 金作谷出合の、今日のビバーク地点に12時40分に着いてしまった。ちょっと時間が早す
  ぎる気もするが、先のことはどうなっているのか分らないしテン張る。小屋で残ったビ
  ール2本を斉藤さんが担いできていて乾杯。雨が降ってきたが直ぐ止んでしまった。
 斉藤さんはイワナを焼く串を20本用意してきている、大森さんに「3匹ね」と言われて
  イワナ釣りに出かけて行った、大森さんは夕食の支度、僕は焚き火の準備といっても流
  木をちょっと拾いに出かける。
 焚き火も火がつきイワナもいつでも焼ける用意も出来た、夕食の支度も出来てきたが、
  斉藤さんは一向に帰って来ない、酒も未だ斉藤さんの分がそっくり有る。待切れないで
  酒に手を出す、そして3時半見に行くと一匹も釣れていなかった。「4時迄がんばって
  ダメだったら諦めるつもりだった」と、此処は多分イワナはいなかったんだということ
  でおしまい。

金作谷の手前


待ち受ける厳しい谷筋


8月14日
 天気は昨日の朝と同じく曇っている、昨日も晴れたことだし今日もそう成るだろうと希
  望的観測をもって昨日と同じ6時45分に歩き出す、
 金作谷からの土砂で出来たルート図のプールは消えて無くなっている、次の懸垂下降の
  所も難無く通過。
  1692m地点(8:35〜45)赤牛沢出合(10:10〜25)立石奇岩(11:35〜50)
  C沢出合(13:15〜35)
 B沢出合に着くと高天原からの登山道が一緒になっていてこの沢も此処で終わりのようだ。
  歩きづらい河原を進み、そして薬師沢が少し先にと思われるところで傍らの砂地を見付
  けてテン張る。(14:30)
 今日は1日中しとしと雨にやられる、この中斉藤さんは、雨具を付けずに通してしまっ
  た。テント場に着くと明日はもう濡れる心配はないと全部着替えてさっぱりしていた。
 今日も8時頃寝たのかな?。夜中に大森さんに、オーイオーイと起こされる12時半頃だっ
  た、何事かと思うと、水位が上がってきたから荷物をもっと上に移動しようとのことだっ
  た。雨は3時頃には止んだと大森さんが言っていた。

快適にぐんぐん遡る


旨いものが出来るのかな


8月15日
 5時3人とも起きる、天気は今日も曇り、しかし昨日と違い少しは明るさが見られる。
  川の水位は幾らか増えていたが夜の時からは随分と減っていた。 支度をして、7時45分
  出発、昨日より1時間遅い。我々が出る前男女のパーティが行ったが、その2人に追いつ
  いた時女性の人が「あそこにテント張ったんですか?水は大丈夫だったんですか?」と話
  してきた。彼等は、我々より少し下で張ったんだろうけど苦労したんだろう。

ほっと一息


記念撮影


ミヤマリンドウ(太郎平付近にて)


 薬師沢出合(8:20〜25)薬師沢小屋の直ぐ上にきれいな草原が有り其処でまた一休み
 (8:35〜50)途中2回程休みを入れて11時半太郎平に到着。大森さんが亀村さんに電話
  報告し、ビールを買ってきて乾杯。
 12時20分太郎平を出ると直ぐ雨が降出してきた。今日は折立でテントを張る予定なので気
  楽に歩いている。雨は降ったり止んだりで変な天気だ。斉藤さんが、それにしても周りを
  歩く人が何となく気世話しなく歩いていると言う、ずっと下に降りてから、斉藤さんが人
  に聞くと3時15分の最終バスが有るのでそれに乗る為急いでいるんだと。雨は強くなって
  きた、この中テントを張るのはちょっと気が引ける。
 折立に着くとバスが出るところだった。で、バスに最後に乗る。大森さんが、でも「折立
  のテント場は良さそうだったなあ」と一言。バスは途中のセンター風の所で5分休憩、斉
  藤さんがビールを仕入れに走る。バスの中で乾杯。
 有峰口に4時40着、電車は5時6分特急大阪行き、次の富山行きは5時57分(?)、きれい
  な電車で富山に着き、さて越後湯沢行きの電車迄どうするか迷っていると、斉藤さんが臨
  時特急6時5分のが有ると調べてきた、またそれに乗る。電車は思っていたほど混んでいな
  くて3人とも座ることが出来た、斉藤さんが仕入れてきたビールとつまみで乾杯、もちろん
  まだ残っているウイスキーが出たことは言う迄もない。
 越後湯沢に着いて、東京行き電車の時間を調べて駅前の温泉に行く。ゆっくり温泉に入っ
  て新幹線の乗客と成り、またビールを仕入れて乾杯し今回の山行無事終る。
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