上州の孤独な山 小野子山・十二ガ岳 齋藤

Fri, 26 Feb 1999 10:18:01


             上州の孤独な山 小野子山・十二ガ岳 眺望・温泉に恵まれた山域


 今日は天気がよい。子供の帰りも遅く自動車も十分使える。ところが買い物に車で
行く妻が言い出す。私が自動車で行く方が,経済的だとわかると譲ってくれる。この
天気だと赤城が気持ちよさそう。前回失敗しているので,赤城「風ライン」への入り方
は心得ている。快適に進路を進む。無事に桐生郊外の122号線を走っていると,とて
も雰囲気の良い民家が建っている。まして塀越しに早咲きの梅が美しく咲いている。
幸先がよさそう。

 赤城山麓に移ると,道が蛇行し始める。高度を稼ぎながら進む。結構眺めも良い。
特に榛名山方面が見事に眺められる。途中から赤城神社を目指して北上し,高度を上
げていく。途中「土砂崩れのため通行止め」の掲示,滝沢温泉の上左に行く道がそうら
しい。私は赤城温泉より右へ行く小沼への道(県道16号)を行く予定なので,そのまま
進む。

 しかし,赤城温泉から右へ行こうとするとゲートが閉められている。土砂崩れのた
め・・・・。説明図(私の解釈)が悪い,ここまで来てはっきりした。「赤城山へは行
けません」程度の解りやすい説明がほしい。すでに8時30分過ぎ,すっかり戦意を
失ってしまう。下りて赤城神社に参拝に行く。なかなか立派である。赤城道路で登る
決心(有料だから通りたくない)をし,山麓道路まで戻る。所々一車線になり,工事が
進んでいる。工事箇所に邪魔され,目標である「赤城ふれあい館」をあっという間に通
り越してしまう。

 戻って有料道にのるのも不本意。気づくと榛名・小野子山・子持山の見事な姿が前
方にある。撮影しているうちに登りたくなってきた。地元温泉ツアーも頭に浮かんだ
が,この誘惑に負けた。小野子山に行くことにする。そうなれば,渋川まで進めばよ
い。この道は赤城林間学園に行く際何度も通っている。難なく渋川・子持村を過ぎ
る。草津方面に行きすぐに右折すれば,三国街道に乗れるはず。

  快適な峠道を進むと,あっという間に国民宿舎「わらび荘」がある中山峠につく。寂
れた峠を想像していたが,牧場・ゴルフ場・看護短大・天文台・野外活動施設などが
ある。なかなか整備されている。国民宿舎も改修されこざっぱりしている。牧場沿い
に迂回するように林道が付いている。忠実に進むと中腹に「姉妹つつじ」の説明がある
登山口に出られる。3台ほどは留められる(路肩)。20メートルほど先に5・6台のス
ペースがある。

  なんと4時間弱のドライブをしてしまった。牧場の上で先ほどの国民宿舎わらび荘
がはっきりと確認できる。なかなか高原の雰囲気が感じられる。ここから見える小野
子山は,斜面を伐採され植林されたばかりで痛々しく,その上土留めの縞模様斜面に
多少の残雪が付いている。あまり魅力を感じられない。しかしここまで来たら登るし
かない。あたりを再確認した後,身支度を整え登山口を入る。幅が2メートル弱の平
らな道が続く。植林作業の為に造られた道だろうが,歩きやすい反面味気ない。

 10分程度で車が入れる林道と合流する。傾斜は急になりながらしばらくこの道を登
る。最終点に車が止まっていたが,作業をしているものらしい。ここから登山道にな
る。細くはなるが,整備されているので歩きやすい。「姉妹つつじ」の標識を頼りに登
らされる。傾斜もあり高度を稼ぐことができる。振り向くと,子持山が腰のあたりに
「獅子岩」を付け横たわっている。ちょうど登山道の傾斜が解り,比高断面図のように
見える。

 やや土が露出し歩きにくくなっている急な斜面を頑張ると,稜線にでる。枝越しで
はあるが,武尊方面が見えてくる。雪も出始めこの冷え込みで凍りついている部分も
多い。そういえば,登りはじめから雪がチラチラ舞っている。幅もある歩きやすい尾
根道が続く。このまま頂上に行くものかと思うとそうではない。途中「姉妹つつじ」を
過ぎると急になり登りが強くなる。すぐにピークにでるが,ここではないようであ
る。まだ先に高いところがある。4つ程の小ピークを越えると見晴らしが良くなり,
中岳・十二ガ岳を確認できる。遠方からの山容と違い,凸凹している。鞍部越しに浅
間山の真っ白な姿が印象的なところでもある。

 最後登りを頑張れば,小野子山山頂(1296M)である。広くなっているが樹木が多
く,枝越しの展望になるが,北側は邪魔するものがない。谷川方面が眺められる。夏
場はかなり展望が制限されるものと思われる。榛名方面が前面に展開し見事である。
十二ガ岳も岩場のようであり,独立峰としての威厳がある。山火事防止の大きな垂れ
幕が,雰囲気を損なう程度でゴミもなく美しい。ここまでもそうであるが,雪もあり
冬山としての要素は満たしてくれている。

 中岳への降路が北斜面になっているせいか,クラストしておりなかなか手強いとこ
ろがある。ビブラム底でない(私は布製ハイキングシューズ)とこういう場所は慎重に
なる。春には美しく咲くであろうツツジの枝を利用しながら,足のフリクションを十
分利かしおりる。雪が無ければ,足場に合わせて下りればよい。鞍部まで,コースタ
イムは10分となっているが,15分程かかってしまう。ここから高山村方面へ下りられ
る標識が付いている。下山をどうしようかと迷うが,小野子山の登りはつらいので半
ばこの降路をこれに決める(同じ道の往復も芸がない)。

 小野子山から見るほど中岳の登りは急ではない。一汗ごとに高度を稼げる。北側に
開ける展望を栄養素に頑張る。時々,榛名の山が垣間見られる。20分ほど頑張ると
ピークにでる。しかし,まだ先がある。この山域の特徴であろうか,簡単には頂上に
出してくれない。一がんばりで「中岳」の標識がある山頂である。ガイド通り見晴らし
は悪い。まして,本日初めてのゴミ,黄色く色づいたティシュが捨てられている。た
ぶん女性であろう(近辺に汚物はない)が,最近特にこの手の無神経な処理が腹立たし
い。                 休憩する雰囲気でもないので,下降を開始する。なかなか下
る。下れば十二ガ岳の登り返しは多くなる。何せこの三山,1200程度の背比べ。自然
林の中の登路は気持ちがよい。加えて,落葉のおかげで道は明るい。鞍部にでると,
小野上からの登路・高山村への降路が交差する。ここから高山村のどの辺にでるかは
定かではない。しかし山域全体この数年で整備されたのだろうと思われる新しい標識
が設置されている。地形図・地元との確認をすればもっとバリエーションを生むもの
と思われる。

 ここから岩稜となっている十二ガ岳の山容を間近に確認できる。なかなか雄大な岩
峰がそびえている。岩登りのルートにもなっているようで,真新しいボルト・アン
カーが打たれている。また「男坂」「女坂」の分岐にもなっており,選択を迫られる。
私は登り時間が短縮できる男坂を選び稜線沿いに頂上を目指す。岩稜づたいに急勾配
に付いてるが,木の枝などを利用して登ることができる。所々クライマーのでるとこ
ろだろうか,岩稜方面にでられる道がある。ででみると榛名方面の眺望が得られる。
早く昼食にしたいので一気に頑張ると,分岐より20分程度で頂上にたてる。


 山頂(1201M)は,伐採もしているのであろうすばらしい展望が得られる。広さも20
人ほどは十分にくつろげる。先行して登ってきている壮年の男女2名が居るのみであ
る。ラジオを鳴らしている(このての登山者,難の呪いか聞きもしないのにならして
いるものが多い。熊などでるわけがない)ので,できるだけ離れたところを陣取り腰
を据える。風もなく居心地がよい。360度の展望を満喫しながら,ビールの栓を抜
く。谷川・武尊方面が雲が多少出でいるが,殆どの山を堪能できる。特に浅間の姿が
美しい。南に開ける榛名山塊も見事である。南側からは,すべてのピークが確認でき
る。普段水沢山はひとかたまりのように見えるが,独立峰としての姿を呈している。

 久々の気持ち良い天望のため,非常用のビール(500mlを一本必ず入れてある。「合
計1リットル」)まで飲んでしまったので下山する。女坂は,西に多少下ったところに
出できているようである。西に下り,分岐から戻るように山肌を下りる。北斜面にな
るので,雪がそこそこ付いている。しばらく行くとご夫婦と思われる2人が登ってき
た。軽く挨拶すると,「びっくりした」という大声。なんと失礼な話。登山口に車が無
かったので「誰もいないものとして登っていた」との説明だが,私は化け物ではない
(赤顔かもしれないが)。

 分岐までは,なかなか平坦な道が付いている。登りに「男坂」下りに「女坂」が正解の
ようである。高山村方面へ行ってみたいが,峠に車を停めてきているのでそういうわ
けには行かない(この道を紹介した案内は見たことがない)。アルコールが利いてきた
のか,中岳の登りは堪える。しかし飲んだ分一汗かいて水分を出さないと運転できな
いので,頑張って登る。努力の甲斐があり,汗が出でくる。頂上にでる。ここから下
降すれば,高山村(牧場西端)にでられる下降路の分岐である。

 オフロード車であれば登ってこれそうな道である。しかし北側に付いているので,
時々積雪量がある。場合によっては雪の下が凍っているので,注意しながら足を運
ぶ。所々登山口方面に行けそうな林道があるが,足跡は付いていない。いくつか試み
るが,断言できる道が無い。西よりに下降しすぎていると解りながら安全な道を選
ぶ。伐採しているチェーンソーの音が近づくと,植林帯となりチェーンで閉められて
いるゲートに付く。

 ここからは舗装されている林道になる。たぶん駐車した場所に続いているのだろう
が山の形からして,だいぶ西よりに下りてしまったらしい。登り返すようになる。ゴ
ルフ場上部に出たようだが,15分ほどで牧場らしいものが見えてくる。だいぶ山も近
くなり,昭文社が紹介しているルートに乗れたようである。右にチェーンが掛けられ
たゲートがあるので,これを歩いていればアルバイトは少ないのであろう。

 途中関東ふれあいの道の表示や東屋がある広場もある。長い林道歩きになってし
まった。どうにか登山口にたどり着く。今日はどうもルートファインディングに見放
されているようだ。小野子山を登り返した方が快適だったことを悔やんでも始まらな
い。

 この山に来たもう一つの目的「高山村ふれあいプラザ(温泉施設)」に行く。露天風呂
・プールもあり近代的な施設ができた事を知っていたが,行く機会が無かったのでね
らっていた。噂に違わず立派な施設。その上2時間まで500円とリーズナブル。加え
て受付のお姉さんが皆若くてかわいい。非常に気持ちが良いエンディング。何せ露天
風呂からは本日登った小野子山が真正面に見える。女性の方が前コース見えるようで
あるが,残念ながら確かめられなかった。

   今夕は,自治会の会合に出席しなければならない。確か梓の方々は飲んだくれて
いるはず。複雑な思いで家路を急ぐ。

情報@「国民宿舎わらび荘」
 鉄筋コンクリート造りのしっかりとした建物。改装されたばかりの様子で,なかな
か古雑パリしている。宿泊料は7000円程度,15名以上まとまると渋川・沼田・中之条
方面から送迎してくれる。温泉と利いているが,露天風呂はない。宴会も受け付けて
くれる。
 1泊2日で,渋川からタクシーを利用し子持山登山口まで入り登頂,わらび荘に宿
泊し翌日小野子山から十二ガ岳へ向かい,高山村に下り入浴という計画も良い。温泉
下の夕刻のバスは,17時と18時それぞれ1便ある(沼田・中之条共)。

情報A「高山温泉・ふれあいプラザ」
 2時間(500円)を基本ベースとした追加料金制。ヘルスセンター並に下足を人質に
磁気が付いた腕輪を渡され,それで館内の一切の精算ができる。持ち込み不可である
が,さほど高くない料金でいろいろな物が提供される(きちんとした料理が提供され
ていた)。地ビールなどもあり下山祝いは十分にできる。
 小型ながら温泉プールもある。温泉には,浴槽3・高温サウナ・露天風呂がある。
シャンプー・ボディソープも完備。洗い場が区切られており使いやすい。隣接してコ
テージ(6人用15000円・備品冷暖房,寝具完備)も建設されている。
                                                           平成

11年2月23日(火)  齋藤 修
 幸手6:20−桐生(R125・122)−「赤城山麓散策」−渋川−(三国街道)−中山峠−10:00
登山口10:10−姉妹つつじ−10:50小野子山10:55−分岐−中岳11:20−分岐(男坂・女
坂)−11:40十二ガ岳12:15−中岳−分岐(三叉路)−13:10林道合流−13:40登山口13:45
−14:10「高山村ふれあいセンター・入浴」14:40−(三国街道)−(渋川大胡線・R50・
122・125)−17:30幸手

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