「仙人が岳」静かな信仰の山 斎藤

Thu, 21 Jan 1999 23:40:03


冬枯れの山は一変して展望の山にもなる「仙人が岳」静かな信仰の山

 水曜日は,前日夜自宅に夜いるため早く寝ることができる。従って朝早くからの行
動が可能になり,予定を都合し特に近郊の低山歩きに精を出すことになる。

 今日の目的地は,足利の裏山「仙人が岳」。自宅からは,国道122号を北上し50号
を経由して,小俣方面に向かう。国道から別れ渡良瀬川を越える(乗用車2台がやっ
と交差できる幅しかない橋)。小俣駅を過ぎ最初の交差点を左折すると,岩切の集落
に向かえられる。前日の冷え込みと小雪のせいだろうか,路面が凍り付いている。奥
へ行くほどに,スリップしているのがわかる。スタットレス+4WDとはいえやはり,
凍結には慎重な気持ちが必要なようである。

 集落の終わりに行くと,小俣フィシングセンターの看板があり,道が間違っていな
かったことを確認できる。程なく,岩切に着く。「小俣ホタル保存会」の素朴な看板
が目に付く。バスの折り返し地点には,駐車スペースがあり1台も停まっていない。
おそるおそる停め様子をうかがっていると,教育委員会のマイクロバスが停まってき
た。どうやら,足利市のスクールバス。聞いてみると小学生のみの送迎だそうだ(別
に定期バスあり)。
 登山口には標識はあるが,登山・ハイキングの経路を示すものは特にない。
ホタルの集落とういうだけあって山村の雰囲気が漂う。
朽ちかけてはいるが,水車小屋などもあり,小規模な湿原には夏になれば「ホタル」
が飛びかつている姿が想像できる。のどかな集落からのスタートとなる。

 歩道が凍り付いているため慎重に足を運ぶ。小俣側沿いにしばらくは幅のある道で
ある。しかし「猪のワナに注意」という標識が至る所に付けられている。物騒な雰囲
気。登山道に沿ってついているので,一応足元が気にはなる。しばらくすると登山道
らしくなり,沢沿いのアップダウンを繰り返しながら,沢の右岸・左岸を入れ替えな
がらのぼらされる。

 道が上下に分けられて付いており,下へ行くと「不動沢の滝」となっている。どの
ような滝か確認のするため沢沿いの道を選ぶ。だが滝らしい姿は5M程度。さほど美
しい姿でもなく,魅力も感じない。謂われはあるのだろうが標識の方が立派である。
すぐに後にする。多少沢沿いの道にも勾配が出てくると,前方に社がある。生不動尊
らしいが,朽ちかけていて仏像もなく雰囲気も暗い。もう少し整備しておいくれても
良さそうな感を抱く。

 多少沢が狭まってくるが,沢沿いにまだ快適な道がついている。社を過ぎると急激
に水が無くなるので,補給するのであればここが沢の最上流部である。すぐに枯れ沢
になり勾配が一層急になる。次第に斜面の登路に変わる。前方上部に稜線を確認しな
がら汗を流す。途中,ロープが張られいる場所があるが,つかまるほどではない。

 トラバース気味に登り詰めると,熊の分岐につく。自然林に囲まれ小俣方面が見渡
せるが,小鞍部のため標識だけが目立つ所である。夏は,緑に包まれ一層鬱陶しいの
だろうと想像する。右に登り詰めると「仙人が岳へ20分」なっているので,一息入れ
山頂を目指す。



 ツツジ・クヌギなどが葉をすべて落とし,枝だけが残った稜線を進む。枝越しに隣
接する山が見え隠れする。右前方に赤雪山の肩越に男体山の頂上が見えだしてくる。
稜線も岩場が多くなり,楽しめる。頂上と思われるピークに達すると「後2分」の標
識。10畳ほどのスペースに別れを告ぎ,快適な枯れ葉の上を山頂めざし急ぐ。

 ガイドブックには「展望はなく狭い山頂」となっているものが多いが,なかなかこ
の時期囲まれている広葉樹が落葉し,程良い展望を恵んでくれる。足尾の町・桐生の
町を眼下に低山が雲海を抱いている。残念ながら雲のため,富士山は見えないが天候
によっては十分期待できる。北方には,遠くに真っ白になった「浅間山」が赤城山の
肩越しに見られる。袈裟丸山方面の前方峰が足下を演出しながら,赤城山が雄大な姿
を見せている。恒例の一人での乾杯を楽しみながら,枝に越しのほぼ360度の展望を
満喫する。

 気温があがってきたせいか,北東方面からの風が勢い強くなってきた。低山とは
いってもやはり冬山,風に当たると体温の消耗は早い。腹ごしらえも終わり落ち着い
たので,静かな山頂をあとにすることにする。

 熊の分岐まで同じルートをとる。すべて同じルートはつまらないので,猪子峠への
降路を選ぶ。登りの2倍弱の距離はあるが,変化に富む稜線があるらしい。重ノ岳・
友ノ岳・宗ノ岳・雄ノ岳というピークを次々に越えているようであるが,標識がある
わけではないので確認するすべはない。特徴ある「犬帰り」には,巻き道の指示もあ
る
標識がついているので,ここまで来てやっと位置を確認する。

 
 小さな岩峰があり,下りに鎖が付けられている5M程度の垂直に近い降路がある。
途中多少振られ気味になる場所もあり,慎重に行動したいところである。半分ほどは
日があたって気持ちがよいが,下半分は日陰になり冷たい。難なく降りられたが下が
切れているので,なれない人には多少恐怖感が感じられるところである。巻き道も念
のため確認するとだいぶ下降して滑りやすそうな道を登り返している。楽しみながら
犬帰りを降りた方がこの山を楽しめると思う。

 多少の岩稜帯を行くが,振り向くと登ってきた山域が眺められ,このあたりで見て
おかないともう見ることができない。すぐに511Mの標高地点らしいが,高いピークが
3つほどありやはり確定できない。その後。,深高(しんこう)山がゆったりと前方に
見えてくる。穏やかな山容である。以前何度か登った足利近郊の名草巨石群から石尊
山の山並みも,松田ダム越しに見える。しかしこの辺の低山,どのピークがなんだっ
たかは似ているので判別しかねる。

 降りるにつれ,松田の集落も見えてくる。一気に下ることになるが,この下りで本
日初めての登山者と出会う。植林帯に入ると再びなだらかな整備された道になる。そ
の鞍部が猪子峠になっている。小さな祠があるだけで標識以外なにもない。ここから
深高山へ登る登山路がついている。加えて工事中の林道が間近に迫ってきている。快
適でなだらかな道を下る。小さな沢が生まれるが,このあたりの水は鉱泉なのだろう
か川底が赤い。目の前が明るくなると,猪子トンネル出口にある登山口に出られる。

 朝あんなに凍りついていた林道のアスファルトも,太陽に照らされ暖まっている。
10分ほど降りると駐車場に出る。「バスの回転路だから停めないでください」と書い
てある標識の前に3台の乗用車が停められてある。ナンバーから見て近郊のハイカー
のものらしい。どういう神経をしているものだろうとくだらない疑問を最後に抱く。

 帰路は,「足利温泉スタンド」なるものがトンネルの松田町にあるというので確認
に行く,なにもないところにスタンドがあるのみ。自動販売方式で100リットル100円
の表示。効能書きも掲示されていた。興味ある人は,ポリタンクを持参してくるのも
良いだろう。
 今日の仕事の段取りを考えながら,ハンドルを握り自宅に急ぐ。


平成11月20日(水)  齋藤 修

 幸手6:20−国道122号線・50号線−小俣−7:38岩切7:50−不動の沢滝−生不動
尊−8:35熊の分岐−8:50仙人が岳9:20−9:30熊の分岐−10:25犬帰り−
10:35猪子峠−登山口−10:50岩切登山口


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