今週も出かけてみたい、このような気持ちが平日半日山行につながる。 今日は,筑波山の裏に隠れてあまり目立たない「加波山」に出かけてみた。 高々700mにすぎない低山である。遠方から見る山容も,隣接する筑波山に圧 倒され寂しいものである。下妻あたりから筑波連山が眺められ加波山が認識で きるが,こぢんまりとしているので,あの山に岩稜が存在するものかと疑いた くなる。真壁近辺になると山肌が,岩石の採掘のため荒らされた姿が痛々しく 確認できる。 自動車の進入口は簡素な看板で指示され,加波山神社を目指す。混雑時は,神 社の駐車場を利用させてもらうのだろうが今日は冬のまして平日。3合目にあ たる「桜坊」と名付けられた場所の空き地に駐車する(5台程度は可能)。かつて は見学場所としてもくろんだであろう極彩色の観音像があれた姿でガラスの建 物に納められている(迂闊なことは言えぬがどう見ても信仰者をカモにした施 設だったように見える)。
加波山神社の鳥居や石仏が安置されているが,保存状態は芳しくない。信仰 の山とは言うが,最近は信者の信仰も多少希薄になってきているのかもしれな い。今日は,山椒魚石などがある親宮道からの道を登路に選ぶ。簡易舗装にな っている車道を沢沿いに登る。採石場のために着けられているせいか,埃っぽ い。沢には以外に美しい水が流れている。自然破壊がなければ,なかなかの清 流美を与えてくれたに違いない。採石場を怪訝な気持ちで横切り,先を急ぐ。 途中で後方を見るとなんと,関東平野越しに「富士山」が眺められる。もう少し 早くでていればと悔やむ(ガスが出始めていた−この後確認できなくなった)。 5合目からは登山道になる。枯れ沢沿いも登れなさそうも無いが,ルートに はなって無い。依然として清流と共に登るように道が付けられている。植林帯 の単調な道であるが,所々で確認できる水の流れは,潤いを与えてくれる。7 合目あたりでこの流れとも別れなければならない。水を汲む(上流には何もなく 飲料として可能と思われる)のであれば,このあたりが限界であろう。 展望もなく,つまらない道を野鳥が演出してくれている。やはり水の流れ・ 自然は共存しているらしい。名前は確認できないが,数羽の鳥の姿と鳴き声が 確認できた。明るくなると,林道に出た。どうやら8合目らしい。林道越しに 登路が付けられている。申し訳程度の簡単なベンチがあるが,とても座れる代 物ではない。 進むとすぐに9合目・後10分の標識。考えてみれば,8から10単位でこの山 は,1合登れる。なんと効率的であろう。親宮までくると,急に明るくなり広 場になっている。どこから来ているのであろうか,林道まで来ている。右を見 ると石の鳥居と立派な社が鎮座している。平成の改築となっていたのでまだ新 しいようである。「社務所でお茶を飲んでいってください」とありがたいお言葉 が張られているが,隣接する社務所には人の気配が感じられない。ここから本 殿への道が上方に付けられている。 ここまで来ても樹木が適宜生育しており,快適な展望がない。振り向くと「雨 引山」と思われる穏やかな山に角(最近おきまりの携帯電話のアンテナ)が確認で きる。本殿に至る道は勾配もあり,岩稜を多少味あわせてくれる。しかし,奉納 者の墓ともつかない石仏が目に付きいやらしい。数個の社を小ピークごとに見送 りながら,高度を稼ぐ。
巨石群(どうしてこんな石があるのだろうと思われる石が山頂を占有している) あたりが,加波山山頂らしい。
見落としたのかもしれないが,標識がない。 本殿を確認したのでそう決めることにした。時より,東側を見ていると枝越しに 隣接する低山の姿がある。 休憩するほど快適な場所ではないので,先を急ぐ。 すぐに加波山神社本宮につく。寂れた社務所と改築した社があるが,誠意的な 環境ではない。「初詣は加波山神社で」の掲示が出たままになっていることでも, 信仰・社務所の姿勢がはかられる。この先の足尾山まで行こうと思っていた が,このあたりで戦意を失ってしまった。峠くらいまでは行ってみようと数分下 ると,熊笹に覆われた小ピークがある。巨石もあり休憩するには絶好の場所であ る。どうやら「旗立山」という場所のようである。休憩後,石でできた墓標のよう なものを見るとそのように表示してあった。 恒例の一人での乾杯をすることになる。陽当たりもあり気持ちがよい。ふと気 がつくと前方の平野越しに「霞ヶ浦」が確認できる。このあたりでなければない景 色である。多少の空腹とのどの渇きをビールで補う。
静かにくつろいでいる と,途中で追い抜いた登山者が来る。通り過ぎるものだろう挨拶をすると,近づ いてくる。急に全自動の1眼レフを渡され証拠写真を撮ってくれと言うので,指 示に従う。撮影後,先を急ぐものと思っていると私の横で,ザツクを広げ始める。 何かいやな気配,話しかけてきた。この手の単独行(仕事をリタイアした壮年男 性)は,同行者を見るとすぐに仲間意識を感じるらしい。いろいろ話しかけてくる。 時間も迫り,片づけようと思っていた矢先なので,よけいに気になる。しょうが ないので,15分ほどお付き合いをして分かれさせていただく。
霞ヶ浦をつまみに休憩の予定が長くなってしまった。きた道を登り,本宮横か らおりる。関東ふれあいの道になっている割には,標識が不鮮明である。地図を 頼りに分岐点を見極める。雨が降ると水の流れ道になるような凹状の道を下る。 両側が樹林帯の上,窪んでいるので単調な道になっている。この道を登路として いる書物(野口悦夫著−マイカー登山)があるが,信じられない。私が歩いている ルートが楽しめるはずである。 唐沢山・筑波山を横に見ながら下山できる。 ガタガタというすさまじい音,何度幅がある登山道を大型のクレーン車が,路肩 を削りながら登ってくる。もうこの山は,少しづつ削られる運命を背負っている のだろうと再確認する(武甲山のようにならなければよい)。運転手をにらみつけ ると,止まったのでその隙に横をすり抜ける。
すぐに駐車スペースの3合目になっていた。以前は,『鳥居をくぐり抜け小道を 山頂に目指す』などと書かれた案内もあったが,その雰囲気はない。どうにかハ イキング道としての体裁は保っているが,楽しめる山とは思えない。地元の理解 と開発に関する,知性が必要な気がする。中学生が立てたと思われる案内に「自然 は取り戻せない自分で守ろう」という札が途中についていたが,今後どうなるのか あ<まり期待できない山であった。 平成11年 1月29日(金) 齋藤 修幸手6:50−下妻−真壁−8:35加波山神社−8:45三合目登山口8:50−山椒魚石−林道 (8合目)−9:35加波山神社親宮9:40−9:55加波山・加波山神社本殿−加波山神社本宮 −10:00旗立岩10:20−加波山神社本宮−10:55三合目10:55−真壁−下妻−12:25幸手
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