蓮華〜七倉 ―― 雷鳥より少ない人の影・橋元武雄

1998年8月20日-23日


「蓮華〜七倉」縱走報告(8/20〜8/23)

梓蓮華・七倉縱走隊(大森、中村、橋元)は、無事目的を達して帰着しました。
当初針ノ木・七倉縱走としましたが、針ノ木は登らなかったので、蓮華・七倉縱走とし
ます。

このところの天候不順がいやな予感を抱かせたのですが、幸いなことに連日好天に恵ま
れて楽しく縦走することができました。

初日は扇沢まで入り恒例の小宴会。今回は3人ですからまさに小宴会でした。

2日目の針ノ木雪渓の登高は、安全な雪渓がほとんど残っていず、右岸左岸のへつりと
高巻で終始しました。針ノ木峠の幕営地は小規模ですが、明日の縦走路を眼前しながら
の一杯はまた格別でした。

3日目の蓮華から七倉岳の縱走は、今回のハイライトです。
高原のように広闊な蓮華岳の山頂部をあとに、一気に500mを下降、次に北葛岳までの
300mの登高、さらに200mを下降して最低鞍部へ、最後の七倉岳までがまた200mの登
高と、しごきにしごかれるアップダウンの繰り返しです。

しかしそれだけの価値はありました。
行程がハードで登山者が少ない(出会った登山者の数より雷鳥のほうが多かったくらい)
だけに、自然が手付かずに残されていました。冨山さん言うところの、
赤もの(ウスノキ、ヒメウスノキ、コケモモ、イワハゼ)、
白もの(シラタマノキ)、
藍もの(クロマメノキ、クロウスゴ、オオバスノキ)、
黒もの(ガンコウラン)などの実がたわわにみのり食べ放題です。
休憩時に顔をあわせて笑ったりすると、各人の好みによって口内が赤く染まっていたり、
青く染まっていたりしたものです。
時期もありますが、ぼくの登山歴のなかでも、これほど多様で豊富な果実に出会ったこ
とは今回がはじめてです。

あえぎあえぎの登高の最後に、
大森氏がいみじくも「これは良い縦走路だよ」とつぶやきました。
実感です。もう応える気力もなくなっていたチャウも、大森氏に促されて、うなずいて
賛同を示していました。

最終日の4日目は、最高の天気に恵まれました。
清楚な船窪小屋の周囲から展望すると、北アルプスの最奥部の全容が見渡せました。
はるかの遠くにわずかに黒部五郎の黒い岩肌がみえ、その前に前穂から槍への稜線、さ
らに手前に薬師、五色が原、立山、別山、剣の稜線、そのまた手前に水晶から赤牛への
読売新道の稜線、さらに眼前に、船窪から野口五郎への稜線が、十重二十重に展開して
います。

ただ、それからの下山路がすさまじい急下降で森林帯ですから高度感は出ないものの、
あれで岩場なら2級程度の斜度があるのではないか、とおもわれるほどでした。
核心部は、あまりの急斜度のためか、胸突き八丁ならぬ鼻突き八丁の名前が付いていま
した。
最後の樹林帯では、カモシカの幼獣が岩の上から物珍しそうにわれわれを見送ってくれ
ました。

なんと最終日はテントサイトを離れてから、バス停へ至るまでついに登山者に出会わな
いという新記録を樹立したことを報告しておきます。

難行苦行、よれよれの下降ではありましたが、降りでしまえばこちらのもの。バス停前
の木陰に陣取って、冷え冷え(ほんとに冷え過ぎ)のビールで乾杯すれば、苦しさもな
にもふっとぶのでありました。

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