丹沢水無川セドの沢右俣

橋 元 武 雄  '94/09/10


94年09月10日(土) 晴れ。
新宿7時01分の急行で、全員集合。渋沢駅は真新しいビルになって、昔の面影はない。バス停も山側に変わった。駅舎内のパン屋で行動食のサンドイッチを仕込む。ワラジは大倉のバス停で買い、同時にビールも仕入れる。

バス停からキャンプ場へ下って、水無川を渡渉し林道へ出るが、バス停から林に入るとすぐに植物が気になり出す。高山植物から憶え出したために、秋の丹沢の植物は得意でない。調べるのに忙しくみんなに追い付かない。

作治小屋の先にできた立派な休憩所で地下足袋に履き替える。本谷に入るが、入口ああたりは治山工事のせいもあって、ほとんど記憶にないほど変貌していた。F1を直登すると、すぐにセドの沢が始まる。セドの沢F1、F2とあってすぐに二俣になる。すべて直登可能な滝で、ほどほどの斜度と落差があり面白かった。

最後の大滝はなかなか迫力がある。滝そのものはハングしているので、左側の岩場を登る。ルート図では高度差35mとあるが、途中にテラスがあり、そこでピッチを切れるので、20mのザイルで丁度間に合った。岩場の最上部に、確保のためにあるような格好の木が生えていて、これを使わせてもらった。これがないと、20mでは少し苦しかったかもしれない。岩場を登り終わってしばらくは大きく迂回しながら薮を漕いで、落ち口まで戻る。
そこで遅めの昼食をとる。すでに1時を回っていた。このメンバーではロング缶4本は多いかなと思っていたが、足りないくらいだった。ビールは、そのときどきで、すいすい入ったり、すぐに飲めなくなったりするので、自分でも飲める量の見当がつかない。

ここでサガミジョウロウホトトギス(相模上臈不如帰)を見る。はじめてお目にかかる花だ。普通のホトトギスの紫と違って、鮮やかな金属光沢の黄色である。名前のとおり丹沢近辺の岩場にしかないという。

大滝で目ぼしい登攀は終わり、あとは涸れ沢を登る。これもさほどガレていないので登りやすく、最後の薮に入ったと思うとすぐにはっきりした登山道へでる。戸沢と表尾根縱走路を結ぶ登山道だ。これを10mほど登ると縱走路へ出る。1,209mの三角点のある無名峰の上手である。

二十代ではじめて表尾根を登ったときにバテバテになった話などをしながら、のんびり下る。多分表尾根は初回を含めてこれで2回目だと思うが、遠く秦野の家並と相模湾を見下ろしながらのアップダウンはなかなか気分がいい。富士見小屋へ着いたのは5時に近かった。当然ヤビツ峠発のバスはなく、タクシーを呼ぶ。小屋の周囲が車でいやに賑やかだとおもったら、すぐ近くに名水が湧いているとのことで、それを採りに来るひとの車が列をなしている。

恒例のソバ屋信玄で一杯と思ったが、閉
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っていたので、つぼ八にする。若者向けの一杯飲屋という雰囲気。客も従業員も若い。 大森氏は、今日のコースがお気に入りで、登れなくなるまで毎年来ようという。自 分の体力の目安にするつもりらしい。たしかに、沢も面白いし、核心部を過ぎての登りもほどほど。さらに下山路の景色は気分がよい。それも悪くないかなと思う。
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