奥秩父・真ノ沢

鈴木善三     '89/05/28〜29


メンバー  鈴木

 奥秩父は交通の便が悪いので、時刻表で間違いのないように調べてきたが、お花畑駅で連絡時間を間違ってしまった。家に帰って調べてみると、時刻表には休日用の時間がのっていて、上のほうに小さく注意書きがあった。
 三峰駅に着いたときは9時20分になっていた。次のバスは10時迄ない。タクシー会社に川又までの料金を聞くと、4千円位だとのことである。一人で払うには少し痛い。会社の前でタクシー待ちをしている4人パーティがいて、水晶谷へ入るとのことで、川又まで便乗させてもらうことになった。
 川又には、予定より早く10時20分に着いた。昨年田中さんと大荒川谷へ入ったので、途中までは道がわかる。赤沢谷出合いまでは気持の良い最高の遊歩道だ。荒川谷出合いの下降点から柳沢小屋までは思っていたより遠く、うんざりしてきたころにやっと着いた。
 真ノ沢の出合いは、柳沢小屋から10分ほど先のところだ。身支度をして歩きはじめるが、なんとなくすっきりしない。川はきれいだし、緑も良いが、滝らしい滝がない。沢登りというより、河原歩きだ。遡行図を見間違っていた。千丈ノ滝までなかなか行き着けない。またもうんざりしてきたころ、前方に大きな滝が見えてきた。千丈ノ滝だ。滝の下まで行って、しばらく見とれる。立派なきれいな滝だ。
 滝から少し戻って左側から急斜面に取り
付くと、5、6分で真ノ沢林道に出た。滝の上は平凡な河原だが、広くて静かで、何となく落着く。休憩するには最高の所だ。
 千丈ノ滝から木賊谷出合いまでは、遡行図ではずいぶん長いけれど、すぐである。木賊谷出合いは、はっきりしたものでなく、広々としていて何となく合流している。わかりにくい所だ。気を付けないと真っ直ぐに行ってしまうが、右側の林の中から流れ出しているのが本流である。本流に入ってからも心配で、ザックを置いて2度、3度と行ったり来たりした。
 木賊谷出合いは、テントを張るには絶好の場所だ。滝らしい滝もなく進むうちに疲れも出てきた。時間もまだ早いけれど、右側に良いテント場を見付けた。今日は、登山道では2、3の人に出合ったが、沢に入ってからは誰にも会わなかった。さびしい気もするけど、静かで楽しい沢歩きができた。
 翌日は、朝早く目が覚めた。通常一人の時は、朝飯はとらないで出発し、体が慣れてきてから食べるので、今回も朝飯の分は持ってこなかった。今日はお結びを二つおじやにして朝飯とする。
 5時半に歩き始めると、すぐに二俣に出合う。三宝沢出合いとばかり思っていたが、通り過ぎてから見ると、もう一つ上の枝沢のようだ。奥の二俣には7時に着いた。ここには「荒川源流」の石碑が建っている。この碑を見て、1度は来てみたいと思っていた所へ、やっと来ることができたと感慨にふける。
-1-



 奥の二俣から上はほぼ全面雪に覆われている。今日は5月28日。思ってもいなかった雪だ。足を取られて苦労しながら、甲武信小屋に直接出ることを考えていた。しかし、少し左に寄り過ぎて、戸渡尾根の縦走路へ出てしまった。少し戻って甲武信小屋へ行ってみたが、小屋はひっそりとして いた。
 戸渡尾根の縦走路には、新しい踏み跡がついていた。2組のパーティが下って来るのに出会った。
 今回の山行は、長い念願の一つではあったが、沢としての魅力には少しもの足りないものがあった。
-2-
次の作品へ ↓
目次へ ↑

inserted by FC2 system