笛吹川東沢渓谷遡行

高橋尚介     '89/01/15〜16


メンバー  鈴木 高橋

 4か月半山から遠ざかっていた。車の免許を取る決心をして、自動車教習所に入校したのが9月なかば。土日コースを選んだため、山にいく時間をそれに充てるしかなかった。目標は年内取得。ようやく卒業検定試験をうけたのが、暮れも押し迫った12月24日。年末恩赦なのか1回でクリアした。27日に1日休暇をとって、千葉の免許センターに出向き、免許の交付を受ける。3か月要したが、土日のみでこの年齢を考えれば、むしろ順調すぎるくらいではないかと我ながら感心している。
 それはさておき、以上のような理由で山どころか運動らしきことからもまったく遠ざかっていたため、体力には自信がない。鈴木さんから久し振りに山行のお誘いを受け、迷ったが、山には行きたい。そこであまり体力を要さない軽い山行ならという条件付きで了解した次第。鈴木さんから東沢渓谷という案がでた。氷瀑ならそれほど飛ばされることもないと踏んだから、東沢ならと思う反面、帰りの戸渡尾根のことを考えるとやはり気が重い。
 1月15日午前5時30分、鈴木さんのワーゲンで出かける。時間が早いこともあって、交通渋滞もなく、順当に不動小屋の前の駐車場に着く(8時30分〜45分)。身支度を済ませて林道を辿る。ナレイ沢やヌク沢は氷結してたり、水が流れていたりで、東沢の凍り具合が気にかかる。氷結していなければ、そのまま引き返そうということ
になる。西沢渓谷から分かれて、東沢に入る。最初の渡渉点は両岸が凍っているだけ。次のも凍っているものの薄氷で頼りにならない。鶏冠谷出合いも同じ状況。暫くは高巻のへつりが続く。清兵衛沢とホラノ貝沢を横切ってホラノ貝の高巻にかかる前に朽ちた橋が頼りなげにかかっている。途中まで渡ったが、先が崩れかかっていて乗せられるかどうか判らない。引き返して下から巻くつもりで取り付いたが、登れない。苦労していると、後続のパーティが橋を渡っていく。再度戻って橋を渡る。ホラノ貝が覗けるところで一本立てる。
 急な巻道を登って山ノ神の祠の前にでる。ここから開けた河原になる。右側につけられた小径を辿る。東沢小屋の前の乙女の滝には氷壁登山組が取り付いており、数パーティが順番を待っている。東のナメは凍っていないが、西のナメは氷結している。ここにはまだだれも取り付いていない。金山沢の出合いをトラバースして、魚留ノ滝に着く。取り付きの倒木はまだそのままだが、側の岩にベルグラがついていてイヤ。横手から鈴木さんが上の様子を見にいく。ベルグラはそこだけで上はなんでもないという。ここを越えると小滝が凍結している。ここでアイゼンをつけるが、滝を越えると左に巻かなければならず、せっかくつけたアイゼンを外す。快適なナメが続き、四段ノ滝に取り付く。両門ノ滝は凍っていない。体力的には限界に近づいてきた。滝前にテントサイトがある。明日のことを考えると少し先に進んでおいたほうが良い。
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疲れた体に鞭うって荷を担ぐ。右の巻き道を辿る。かなり急で木の根っ子にすがって、重い体を引き上げる。次の滝は左を巻いて滝上に出る。鈴木さんがそこで快適なテントサイトを確保して待っていた。地理的には広河原の上端にあたる。恒例により、テントを張った後は夕食までひととき酒を楽しむ。塩山駅前の売店で手にいれた七賢はおかんをすると甘口になり、あまり美味しく感じないのは不思議。
 1月16日、テントサイトを後にしたのが7時15分。広河原の原生林の中を踏み跡を捜しながら進む。左手のカラ沢を見て、右の沢に入る。やがて最後のツメで行く手の滝がほとんど氷結状態になる。堅い氷になり、アイゼンだけでは歯が立たなくな
る。一部ステップを切って登ったり、鈴木さんからバイルを借りてなんとか登る。次第に沢そのものが大きな氷壁となり、たいした傾斜でなくても、ずっと氷が続いていると高度感がある。木賊からの大ナメ滝を渡り、最後の大滝は歯が立たず、右手の斜面を巻く。氷の沢を水場まで詰め、甲武信小屋には11時15分に出る。4時間かかったことになる。15分ほど休んだ後、小屋から巻き道を辿って戸渡尾根分岐に出て、ひたすら下る。
 これ程急いだのは訳があり、この日の夕方に義母の喜寿を身内で祝う会が予定されていたためで、鈴木さんの努力の甲斐あってようやく間にあった次第。感謝!
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