秘湯探訪

間 瀬 寿 彦


 のりなれた上野駅発新潟行の鈍行に乗ったが8月の下旬と言う事もあるのか登山客も少なく意外とすいている。しかしあまり眠ることはできないまま越後川口についてしまった。
 飯山線の始発は7時すぎなので、特合室のベンチで仮眠をとる。登山客はほかにだれもいない。駅員におこされ飯山線にのる。ローカル色豊かな景色を見ながら一度終点迄乗ってみたいと思うが本日は津南駅で下車して、駅から5分ほど歩くとバス停の大割野である。なぜ駅前にバス停がなく5分もはなれた所にあるのか不思議である。
 バスに乗り見玉をすぎた頃から急に田園風景の両側の山がせまり、すぐ峡谷の道になって道路の右下に中津川の清流が見え、逆巻温泉を通りすぎてまもなく上結東でバスをおりた。
 靴のひもをしめなおし、村の中を川にむかって下り、つり橋を渡って、また同じ位の高さまで登り返すと見倉につく。人の住まないかやぶきの家が2,3軒あるだけである。ガイドブックには15分とあるが40分もかかり少々ガッカリ、それでも気を取りなおして10時30分にスタート、これからが本番である。
 2,3軒ある農家の横を通りすぎ、尾根に取付く。それにしても最初からかなりの急登である。途中休みを入れたが2人ともバテバテで金城山にたどりつく。これで1日目の目的地小松原小屋につけるか少し不安になる。やっと金城山につくと道はゆるや
かになりホットしてピッチを上げるがこの辺は林の中で見晴らしは良くない。
 また登りになりしばらく行くと目の前が突然ひらけ学校の校庭位の湿原が現われる。道はかすかについているが、ふみあとに注意して進む。いくつかの湿原と池塘を通りすぎて行く途中、道に水がでていたので脇にそれたとだん足元が1m四方位いの大きさでしずみはじめあわてて元のコースヘもどる。水が少し靴の中に入ったようだ。木道がない湿原は歩き方も注意しなくてはと初めての経験にちょっとびっくり、お天気もわるくガスが出てくる様になりもう見えてもいい小屋もまだ見えない。しかも入山してからまったく人に出会うこともなく時間がすぎて行く。小屋についたのが4時を回った頃で、すでに2パーティが苗場の方から先着していた。近くに水場もあり古いが熊笹の中にたつ小屋はサッパリと整理され気持が良い。あ……つかれた。おやすみなさい……。
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 いよいよ苗場山から赤湯までのコースで、最後の赤湯が楽しみである。苗場までのコースは大部分が登り一方のコースで三ノ山が草原で見晴しがとてもすばらしい。ここで小松原湿原に向かうパーティーに出会う。神楽峰までとうとう他のパーティーに会うことはなかった。
 苗場山遊仙閣と言う小屋に入るが管理人をふくめだれもいない。土間をかりて昼食をすませる。頂上はガスがかかり展望はない。湿原の大きさもわからない。しか
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し時々ガスが切れほんの少し先まで見え足元にはワタスゲがぬれてキラキラまるで幻想の世界である。昌次新道はただただいやになる下りである。最後の短かい急登を登り下ってりっぱな橋を渡ると赤湯である。
 2人はすぐにビールを買い温泉にとびこむ.ビールはうまいし、も一っ最高の気分!川原には3ヶ所ほど湯船がある。小屋で山菜を中心のおかずをランプの下で食べる。うまい!室にもどり同室の釣り人に釣の話を1時間ほどきかせてもらう。今日はくたく
たなので早々と寝る。
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 今日は4時間位の歩きで、内2時間が林道歩きなので気が楽である。しかし今回の山行はガイドブックの時間と大分違うので、うのみにするのはだめだと痛感し大いに反省する所である。8月の下旬という事もあり、ほとんど人と会うことがなかったのが不安もあったが新鮮な経験だと思う。もう一度行ってみたい山である。但し苗場山を先にしてこんどは逆巻温泉で泊まってみるつもりである。




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