俳句への珍挑戦

高 僑 尚 介


 昨年10月の金精峠〜日光沢温泉へのコースを歩く計画の折、何かの本で矢島 市郎氏の日光沢温泉か手白沢温泉にて詠める次の句が紹介されていた。
 「露天風呂星をかぞえてのびている」
 「湯あがればさすらい心やや和み」
 「山寂しさびしき人の慕い寄る」
 素人のあさはかさで、これくらいの句なら俺だって詠めると、初挑戦してみようとの決意を胸中にいだいて出かけた。
 金精峠から温泉ケ岳にかけての奥白根、尾瀬方面の眺めの良さやまゆみの実の赤さに気をとられて一句。
 「かすむ尾瀬赤あざやかにまゆみの実」どうも素材がうまくつながらない。むずかしいものだが、まあ一応字あまりにはならずにすんでホッとする。
 根名草山から日光沢温泉へのくだりにかかるところで、鬼怒沼湿原が望まれここ

















で一句と思ったものの、字あまりばかりで断念。急な下りの続く日光沢温泉への小道がようやく終わって、温泉の横手にとび出す。
 「日光沢紅葉にじむ湯のけむり」
 翌朝は鬼怒沼湿原までの散策。夏ならば一面高山植物が咲きほこっているだろうが、黄色の草っぱらに池塘が散在しているといったさむざむとした風情。
 「風立ちぬ秋の鬼怒沼わびしけれ」
帰路冨山さんがスリップして脇腹を強く打ってかなり苦しそう(後に骨折と判明)。天幕を撤収して女夫淵に。日光沢で入りそびれた湯につかり、一句。
 「紅葉浮く露天風呂にて初泳ぎ」
何とか苦しまぎれに浮かんだ句はどうも以前に聞いたような気がする。それとも名句なのか?判断できぬまま、机の中にしまっておいたものを引っ張り出してみた。
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