橋元武雄 '05/6/16

                        Photo by Teiko Nakamura,Takeshi Omori
                                     & Fumiaki Gotoh



 レブンアツモリソウ(O)


アツモリソウ3種  レブンアツモリソウは、今回の大願目であるが、そのほかにカラフトアツモリソウと、 この両者の交雑種があった。前回はレブンの花期は過ぎていて数株を見ただけだったし、 カラフトも交雑種も記憶にない。交雑種は、花の大きさがレブンに似て大きく、花の色 がカラフトの上弁に似て赤紫、全体としてアツモリソウあるいはホティアツモリソウに 似るが異なる種だという。レブンとカラフトが近くにあれば交雑種は生まれ、それ自体 が増殖するので、草体は残すが適当な時期に摘花するという。われわれがレブンアツモ リソウの自生地を訪れたのは、環境省が摘花する日で目標の株には目印が着いていたが、 まだ花は残っていた。翌日なら花は見られなかったろう。


  カラフトアツモリソウ(G)

 レブンとカラフトの交雑種(G)

 レブンアツモリソウ(G)

カラフトハナシノブ  花忍とは美しい名前だが、本州の山ではミヤマハナシノブを見ることができる。ぽく が見たのは南ア北岳大樺沢である。梅雨の頃に何度かバットレスに通ったことがあるが、 大樺沢の左岸の山道を覆う草むらには沢山自生している。雨に濡れた青い花に黄色のシ ベが印象的だった。なお、カラフトハナシノブのなかで礼文島に自生する物は花序が短 く花が密生するのでレブンハナシノブと呼ぶ図鑑もある。またミヤマハナシノブの命名 上の母種としてエゾハナシノブをあげる本や、ミヤマはエゾの変種とする本もある。


 カラフトハナシノブ(O)

 カラフトハナシノブ(N)


エゾエンゴサク  ボン山組の写真にはあまり綺麓な色に写っていなかったが、利尻岳にはこのみごとな 御花畑があった。 規模はさほどではなかったが花の盛りで、この写真よりも濃い色の 花が絨毯のように敷き詰められていた。


 エゾエンゴサク(O)

工ンレイソウ、オオバナノエンレイソウ、 ツバメオモト、ザゼンソウ、マイヅルソウ これらはみな同じような場所に生える。比較的明るい木陰の湿地である。工ンレイソウ の花は赤紫、オオバナは白ですぐに区別がつく。本州では、オオバナの代わりにミヤマ 工ンレイソウが多く見られる。こちらも花は白で、それにくらべて北海道のものは花が 大きいのでオオバナノとついたのだろう。  5年前の利尻岳は、マイヅルソウの花が山道の両側を埋め尽くしていたが今回はオオ バナとツバメオモトがいたるところに咲いていた。丈の低い潅木の下にはオオバナとザ ゼンソウを見ることが多かった。冨山さんの記録で、チヤウの推論として、ザゼンソウ は葉が出る前に花が咲くのだろうとあったが、その通り。同じ仲間のミズバショウも同 じである。なぜかザゼンソウの花は葉の方を向いていて、まるで子供がはずかしがって 親の身体に顔を伏せるような格好になっているのが多かった。その様子は面白いが写真 は撮りにくいだろう。


 エンレイソウ(N)

 オオバナノエンレイソウ(N)

 ツバメオモト(N)

 ツバメオモト(G)

 ザゼンソウ(N)

 マイヅルソウ(O)


スズラン  園芸種としてドイツスズランがあるので珍しく思わないが、自生状態で見ることは多 くない。葉だけ遠目に見てギョウジャニンニクと間違えた。臭いをかげばすぐに分かる が、スズランは見かけによらず毒草である。ある本には、牧場に自由にスズランを摘ん でよいと書いてあるのは、牛が食べて中毒しないようにするためだとあった。


 スズラン(N)

ネムロシオガマ  ゴロタヘ向かう海岸沿いの道によく見られた。手元の図鑑の写真と少し印象が違って いたが花期の違いだろう。他の図鑑もあったったが間違いないようだ。他に白花のシオ ガマは、セリバとエゾしかないが、どちらも姿形も花も一目で区別がつく。


  ネムロシオガマ(O)

 ネムロシオガマ(G)


センダイハギ  文楽や歌舞伎の伽羅千代萩(めいぽくせんだいはぎ)を連想してしまう。ネットで調 べると、この芝居の外題からとって花の名がついたとする解説がほとんどだが、安易な 受け売りに思える。花は、芝居ができるよりさきに咲いていはずだ。たったひとつ、船 台の回りに咲くからとするページがあった。 海岸に多いので納得できる。芝居のほうはお家騒動や妖術使いといったおどろおどろし い印象だが、それとはまるで違う大振りで鮮やかな黄色の花だ。


 センダイハギ(G)

ミヤマオダマキとハクサンチドリ  これら2種は礼文島では、人家の庭、車道の脇、山のお花畑など、いたるところに咲 いている。本州では希少な高山植物でも、礼文島では道端のタンポポなみの雑草である。 ミヤマは、園芸種のオダマキの原種とされる。  これがじつに強壮な草であることがわかった。レブンウスユキソウの自生地の近くだ ったが、林道ののり面が崩れた泥とガレキのなかで、まだイタドリも若い株しか生えて いないのに、ミヤマの大群落があったのだ。条件があえば、よほど繁殖力が強いに違い ない


  ミヤマオダマキ(O)

 ハクサンチドリ(G)


ハクサンイチゲ、エゾノハクサンイチゲ、ヒメイチゲ  これはあとでわかったので確信はないが、利尻岳のものはただのハクサン、桃岩のあ たりはエゾらしい。葉の一部の形と果柄の長さで区別するらしいが、後の祭り。イチゲ ついでのヒメイチゲだが、名前の通りこれがイチゲの仲間では一番小さいかもしれない。 ボン山の写真にもあるし、利尻岳の記録でも書いたが、相当高いところにも咲いている。 小粒で元気である。


  ハクサンイチゲ(G)

 エゾノハクサンイチゲ(N)

  エゾノハクサンイチゲ(O)

 ヒメイチゲ(N)


レブンソウとレブンウスユキソウ  レブンソウは、桃岩展望台の昼食時に見た。チヤウも書いていたように遠目でよくわ からなかったが、解説の看板があったのでそうだろう。実物を見たのはこれだけ。その 意味で、レブンウスユキソウも最初のお花畑でみただけ。それも蕾だった。開花期なら、 工−デルワイスを知っていれば誰にでもわかる。


  レブンウスユキソウ蕾(G)

 レブンウスユキソウ蕾(O)


レブンキンバイソウ、ミヤマキンバイ、ミヤマキンポウゲ、クロユリ  最初は育ちのいいシナノキンバイだと思っていたがレブンキンバイソウだった。それ にしてもなぜこれだけソウがつくのか謎。シナノキンバイにはエゾキンバイの別名もあ る。シナノも大きな花だがレブンはもっと大きく(個体差の範囲かもしれないが)、花 弁の重なりがやや複雑な感じ。桃岩展望台から下つて元地灯台へ登り返す辺りの窪地は キンバイの谷と呼ばれ、レブンキンバイソウはそこにしかないという。かたやミヤマキ ンパイもミヤマキンポウゲも南アや北アで普通に見ることができる。前者の花はミヤマ ダイコンソウに似るが葉がまるで違う。後者は田んぽの畦によく咲くウマノアシガタ (たんにキンポウゲともいわれる)とよく似ているのですぐわかる。  最後にキンバイの谷に多かったクロユリは、見慣れたクロユリよりも花も背丈も大分 大きかったが、実はこちらが本家で北アなどで見ているものはミヤマクロユリであった。 キンバイの谷には、まだ花は咲いていないがオニシモツケとチシマワレモコウが多く見 られた。もうしばらくするとオニシモツケの白い花が谷一面を埋め、つぎにチシマワレ モコウの赤紫に彩られることだろう。


  レブンキンバイソウ(O)

 ミヤマキンポウゲ(O)

 クロユリ(O)

サクラソウモドキとレブンコザクラ  サクラソウモドキは、場所は悪いが、キャンプ場のトイレの脇に咲いていたものだ。 最初は園芸植物かと思っていたが、北海道にしかない自生種だった。似ているから仕方 がないが・モドキでは可哀想なほど独自の美しさがある。レブンコザクラは南部散策の ときにレブン林道から桃岩へ向かう途中に多く見られたが、もう花期は過ぎていた。


  サクラソウモドキ(N)

 レブンコザクラ(O)


チシマフウロ  ハクサンフウロとタカネグンナイフウロは見慣れているが、これは東北と北海道にし かなくあまり見ていない。分類的にはタカネに近く、色はタカネに似てハクサンより濃 いが、タカネほど毛深くない。今回の山行では、レブンアツモリソウを見て峠を越えた あたりから道端に増えだした。翌日の礼文林道散策のとき、三番目の御花畑ではまだ咲 いていないチシマが大群落をなしていた。


  チシマフウロ(N)

 チシマフウロ(G)


シラゲキクバクワガタ  クワガタと名の付く仲間は高山に多いが、北海道では白毛のないただのキクバクワタ が多くシラゲは礼文島にとくに多いと本にあった。都会の春におなじみのオオイヌノフ グリは同じ科に属する。フグリはかわいそうだが、鍬形は兜の前に二本にょっきり立っ ているあれのことだ。花から飛び出す二本の雄しべをそう見たか。虫のクワガタも同じ だろう。


  シラゲキクバクワガタ(N)

アナマスミレ  今回は訪れていないが礼文島の西海岸、宇遠内の北にアナマ岩という名所がある。こ こで発見されてこの名前になったという。スミレはあまりに種類がおおくて、セリ科同 様に同定を諦めてしまうのが常だが、チヤウからスミレ図鑑で見つけたとメールがあっ た。主に日本海側の海岸付近に分布し、写真に見られるように長い葉が縦に丸まるのが 特徴だそうだ。この写真はボン山で撮影。

  アナマスミレ(O)
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