前編

前編
(1)計画、そして利尻へ   大森武志
(2)利尻岳登山報告     高橋尚介
(3)利尻登山        橋元武雄
(4)姫沼からポン山へ    冨山八十八
(5)キャンプ場にベース設営 大森武志
(6)礼文島北部       後藤文明
後編
(7)香深井のひとと魚とタコ 橋元武雄
(8)礼文島南部の旅     中村貞子
(9)旅の打ち上げは宗谷岬で 大森武志
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*タイム記録と花の同定 橋元武雄*

                      Photo by Teiko Nakamura,syosuke Takahashi
                             ,Takeshi Omori & Fumiaki Gotoh
                             Sketch by Yasoya Tomiyama



 礼文島香深井から利尻富士を望む(G)

■平成17年(2005)6月12日〜16日
メンバー:大森武志、後藤文明、高橋尚介、冨山八十八、中村貞子、橋元武雄


   (1)計画、そして利尻へ      大森武志



6月12日(日曜日) 曇り 利尻島へ



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ANAの超割切符、羽田・稚内往復24,700円をチャウが代表で購入した。

ANA571便 羽田発9:40→稚内11:25。

機内は、同じく超割仲間と思われる同年配のジジ・ババで満員。

利尻町鴛泊港行き15:30発の東日本海フェリーFeelease号に搭乗。

このフェリーは、椅子席は一等座席指定だけで、あとはお座敷船である。

鴛泊着(17:10)。FTからジャンボタクシーをひろって北麓キャンプ場へ

北麓キャンプ場到着(17:43)     記録:橋元(以降同じく)

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 今回の利尻・礼文行きは、いつどこで決まったのか。梓掲示板を遡ってみると、2月24 日にchau名で「ANAの超割6月搭乗分は6月10日〜。先行予約は3月18日〜」という書き込み があるから、たぶんそれ以前に話は出ていたのだろう。「超割」利用を前提にしたこの計 画は、実施のおよそ4カ月前に動き出していたことになる。

 以後、参加希望者のアンケートを経て、日程は6月11日(土)〜15日(水)の4泊5日と 決まったのが3月10日。しかし新千歳→利尻の便は取れず、6月11日の稚内便も予約できな かったので、日程を1日ずらして12日(日)の出発となった。 そして、ANAメンバーの中村さん(チャウ)が一括してチケットを購入したのが4月11日の こと。参加者は冨山、後藤、高橋、橋元、中村、大森の6名。羽田一稚内の往復運賃は、 1人2万4700円である。  それからは橋元、中村、大森の3人は連休の八甲田スキー山行に忙しく、計画が再び動 き出すのは、善さんをゲストに迎えた5月23日・華屋での準備会からだ。激しい雷雨に見 舞われた当日は、大森が用意した「行程と装備の計画表」をたたき台に担当者を決め、詳 細は後日、担当者から提案することになった。掲示板に提案が載るたびに、計画表の空白 が埋まっていく。幕営装備のほとんどは橋元さん(OJ)によって、あらかじめ礼文島緑ヶ 丘公園キャンプ場に送られる予定だ。  こんどの計画はおおむね、橋元、中村、大森が参加した先回(1999年)の経験に基づい ている。初日に利尻島に渡り、北麓野営場のキャビンに宿泊。2日目に利尻岳に登って、 下山後そのまま礼文島へ。違いは日程が1日増えて、礼文で3泊することだけだ。天候に恵 まれれば、今回は礼文島南部も楽しめるだろう。

 稚内空港に降りると雨、気温8℃。とりあえずバスでフェリーターミナルまで行って荷 物をデポし、昼食と買い出しに出かける。まずはJR稚内駅前の食堂で、ビールと蕎麦+に ぎり寿司の定食。利尻北麓野営場のキャビンはすでに予約してあったが、管理人(町の職 員らしい)が5時には帰るというので、ここから確認の電話を入れておいた。 食堂の前で、ホームセンターにガスボンベを買いに行くOJと別れ、今夜の食料と酒の買い 出しへ。ところが近くの商店街は人影もまばらで、品揃えも貧弱。利尻や礼文の状況は承 知していたが、稚内の駅前がこれほどとは思わなかった。ショッピングの中心は、国道沿 いの大型店に移っているのかもしれない。


 雨の稚内フェリーターミナル(G)

 利尻島鴛泊港ペシ岬灯台山(G)

 大きな看板がで出迎えてくれる(G)

 雨のなかすぐに大型タクシーで野営場へ(G)

  利尻北麓野営場に到着(G)

 キャビン2棟に分かれる(G)

 風雨が強く心配していたが、稚内港を出て進路を南にとると、フェリーは背中から風を 受け、平穏な航海が続いた。鴛泊港ではすぐにジャンボタクシーが見つかり、北麓野営場 へ急ぐ(稚内の店には「多聞」しかなかったので、途中の酒屋に寄って「男山」をゲット)。 キャビン(4人用2500円×2棟)は畳敷きベッドに寝具・電灯つきで快適だが、宴会用のス ペースはない。やむなく入り口の板敷きに6人が陣取り、何はともあれ乾杯!外は依然とし て雨。高橋さん(尚ヤン)苦心の献立はポトフ、あとはジンギスカン以外、覚えていない。

 雨は、明け方には上がったらしい。鳥のさえずりにヨロヨロと起き上がると、OJと尚ヤ ンの2人は利尻岳山頂めざして出発した後だった。残り4人の朝飯は冨山さん担当の中華お こわ、ほか。食後、各自の荷物をトイレ脇の、というよりトイレの中廊下風にしつらえた 屋根つきの休憩スペース(けっこう快適)に移し、タクシーを呼ぶ。今日の4人の行程は姫沼 からポン山にまわってキャンプ場に下りるハイキングコースだ



   (2)利尻岳登山報告      高橋尚介 6月12日(日曜日) 曇り 利尻島へ

 今回の利尻・礼文花の旅のメインはなんといってもレブンアツモリソウだった。前回の (1999年)機会には残念ながら参加できなかった。どうしても一度は利尻岳には登ってみた いと思っていた。今回を逃してはもうチャンスが訪れることはないといち早く参加希望の 手を挙げた。  事前の打ち合わせで、2日目の利尻島では、利尻岳登山組とポン山・姫沼散策組2班に 分かれて行動すると聞かされる。しかも前回参加の橋元、大森、中村の三氏のうち、今回 も利尻登山に付き合ってくれるのはOJさんこと橋元氏のみとのこと。しかもその日のう ちに礼文島に渡るため、沓形港からの最終便3時20分に間に合わせることが条件。 従って登りは鴛泊コース、降りは沓形コースを予定するという。沓形コースには難所がい くつかあり、慎重を要するとガイドブックにある。当初キャンプ場6時出発位と安易に考 えていた。ガイドブックによると登り6時間、下り4時間。沓形港に3時までに到着する には、休憩を含めると4時発でないと間に合わないではないか。初めて組としては、いさ さか緊張を強いられる。不安いっぱいの旅立ちであった。

 梅雨晴れの羽田から稚内へ飛ぶと雨に変わっていた。肌寒く、折りたたみ傘を持ってこ なかったので、ショボ降る雨に濡れて買い出しと昼食を済ませる。稚内から利尻島の鴛泊 までフェリーで1時間40分。後はタクシーで北麓キャンプ場へ20分。キャンプ場のキ ャビン2棟に分かれる。散策組のキャビンで夕食宴会。初日の食当にあたり、大鍋等は礼 文に直送されているため、6人用コッヘルでレシピを考えるとポトフが手間いらずと踏ん だがあまり評判はよろしくなかった。  雨は降り続き、明日の天気が気がかりだ。この雨の状態が続くようなら、利尻登山は断 念しようと、半分あきらめの心境になる。なにはともあれ早立ちの登山組は早々に隣の棟 へ引き上げる。  沓形コースは今シーズンまだ誰も降りていないとの情報をオジさんがタクシー会社から 聞き込んできた。やっかいなコースのうえ誰も通っていない下りであれば、ルートを外す 虞れがあり、今回は鴛泊コースの往復にする。ということは時間的な制約がもっと厳しく なるということだ。

6月13日(月曜日) 曇り、ときどき雨 ******************************************************* 利尻岳登山 利尻岳登山組(高橋、橋元) 出発(4:28) キャンプ場から上の森で見たもの ハリギリ、アカエゾマツ(トウヒに似た実。トウヒは北海道にはないのでこれだろう)ヒ メイチゲ、クルマバツクバネソウ、トドマツ?(アオモリトドマツ同様自信はない)、ナ ナカマド、ハリギリ(多い)、ウダイカンバ、ツルシキミの花と実(大きなミヤマシキミ かと思ったが、違うらしい) 野鳥の森、四合目通過(5:08) 針葉樹林を抜けて笹原へでる(5:22) 登山道の両側に残雪が現れる(5:32) ダケカンバのトンネル(5:37) 5合目ではじめての休憩(5:37〜54) 6合目(6:14) ミヤマオグルマ(6:17) 丈の低いダケカンバのトンネル(6:18) 携帯トイレブース(6:19) シマリスが姿を見せる(6:26) 7合目、七曲(6:37) 標高940m、頂上まで1590mの標識(6:41) 長官山の大分手前で一本(6:44〜7:09) 岩稜へ出る(7:16) コケモモ、エゾヒメクワガタ(7:23) 尚やんと別れる(7:30) 8合目 長官山、標高1218m(7:32) キバナノシャクナゲ(7:35) 長官山、避難小屋間のピーク(7:38) 利尻岳山小屋、いわゆる避難小屋(7:42) まだ蕾だけのハクサンイチゲ群落(7:54) 急登の開始を前に少し開けた場所で一本(8:01〜09) 9合目(8:19) エゾタカネヤナギ(8:14) ジンヨウスイバ(8:27) エゾエンゴサクの群落が絨毯を敷いたよう(8:27) 沓形ルート分岐で一本(8:41〜45) 山頂(9:04〜10:01) 沓形コース分岐(10:12) 9合目(10:26) 避難小屋(10:42) 長官山と避難小屋の間にあるピークで一本(10:53頃) 7合目(11:32) 6合目(11:44) 5合目で軽く行動食(11:56〜12:27) 登りには咲いていなかったマイヅルソウがちらほら咲いている(12:31) 葉に白の斑入りのツバメオモトを尚やん発見(12:44) 4合目(12:50) キャンプ場帰着(13:05) 沓形港からフェリー(15:20) また東日本海フェリーFeelease号だった 香深港(15:56) 緑ヶ丘公園キャンプ場(16:14)      記録:橋元 *******************************************************


  見送りを受けて出発(G)

 利尻岳は昼まで雲の中だった(G)

 天気が気がかりで、夜中何度か目を覚ます。OJさんも2時半頃鳥の囀りで目を覚まし たよし。予定通り4時起床。昨日に比べると小降りというよりガスの中にいる状態。何と か登山できそうだ。雲海の上に出て、頂上は眺めがいいかもしれないと淡い期待を秘めて。  4時半雨具をつけて出発。石畳で舗装された道を10分ほど歩くと最北の名水「甘露泉」 の水場につく。ここが3合目になる。先行パーティが水を補給している。我々もここで水 を補給して出発すると、すぐポン山姫沼ハイキングコースとの分岐だ。小さな木の橋を渡 る。とど松の森の緩い登りだ。4合目あたりで先行パーティを追い抜き、5合目で一本立 てる。第一展望台と呼ばれている狭い広場。持参のおにぎりで朝食。先ほどのパーティが 追いついてくる。抜いていかないので先に出発する。  6合目(野鳥の森)には環境保全のための携帯トイレ用のブースが備えられている。使 い慣れていないし、あまり清潔そうでもないので、我慢。岳樺とハイマツのトンネル状の 樹林帯の急勾配を順調に登る。オオバナエンレイソウとマイヅルソウの群落。ほかにザゼ ンソウが目立った。マイズルソウはまだつぼみで寂しい。今朝は先を誰も歩いていないた め、蜘蛛の巣に悩まされる。また径に被さる草木が水滴を含んでいて、肩や膝を濡らす。 雨具を付けていて正解だった。7合目で一本。一瞬であるがガスが消え、下が姿を見わた せる。七曲がりの途中だ。ここまでは登り始めて2時間と比較的順調だ。

 7合目からは徐々に傾斜が強くなる。長官山への急登であごを出す。付き合ってもらっ て頂上を踏めないことにでもなったら申し訳ないので、OJさんには先に行ってもらうこ とにする。一本の貴重な缶ビールを預けられ、オジさんと別れる。10時には山頂から降 りることにして、降りてくるオジさんとどこで出合うかによっては、登頂はあきらめるこ とにする。まだ7時半だ。あきらめることはない。それからはマイペースでゆっくり休み 休み登る。8合目の長官山は下から見るようなピークではなかった。記念碑が建つちょっ とした広場で、本当の長官山のピークまでまだ登る。晴れていれば長官山のピークから頂 上がの展望が開けるはずだが、ガスの中。いったん下りになる。下りきって再び登ったと ころに避難小屋がある。ここにも携帯トイレブースがあった。徐々に高山の樹層に変わっ てくる。長官山から9合目まで1時間。  「ここから先が正念場」の9合目からしばらく登ると前方にこれまで全く姿の見えなか ったオジさんの姿を上方の這い松帯の中に捉えることができた。目の前のちょっとした広 場を指さしている。休憩しろということか。後で聞いたところシマリスが出現した場所を 教えてくれていたそうだ。  急登が続くが、周りの這い松の背が低くなり、晴れてはいないが視界が広くなって明る い。気分的に楽になった気がする。沓形コースの分岐をすぎる。指導標と分岐に柵がある が、踏み跡はなく、コースは雪に埋まっている。上からのぞくと急峻なコースに見えた。 分岐をすぎると、ガイドブックにもあるように火山礫のズルズル径となる。ところどころ 雪渓も現れ歩きにくくなる。火山礫と凍った残雪で身動きできなくなるところにでてしま ったりで、結構苦労する。


  利尻岳山頂(T)

 かんぱ〜い(T)

 ここが山頂と思うピークを何度か越えたのちやせ尾根を渡り、急ながれ場を登るとよう やく眼前に頂上が見えた。頂上からOJさんが降りてくるところだったが、また付き合っ て頂上まで引き返してくれた。9時半過ぎようやく頂上を踏むことができた。頂上には小 さな祠があり、登ったと実感させてくれる唯一の建造物だった。5時間を要した。長官山 のつめのところは苦しかったが、全般的には比較的淡々と登れた。4合目で抜いたパーテ ィに抜かれなかったというより姿を見ることがなかったことも精神的に最後までがんばれ たのではないかと思う。頂上ではとっておきの缶ビールをあけて乾杯。依然としてガスは 晴れず、残念ながら360度の展望は望めなかったが、一服のたばこの味は最高にうまか った。時間制限があるため、頂上であまりゆっくりできない。

 10時には下山開始だ。下りではばてることはないと思ったが、道悪状態で滑らないよ うに気を遣うので疲れる。下り始めて抜いたパーティとすれ違う。後続のパーティとも数 組出会った。その中には空港から稚内市内への満員バスに同乗していたおばさんパーティ とも9合目あたりですれ違った。同じ径をたどって下ると、登りの苦しかったところが嘘 のようだ。快適に一合一合を逆に辿る。6合あたりでこのままだと早くつきすぎてしまう とペースを落とす。  5合で大休止。向かいにポン山と小ポン山がすぐ近くに見える。距離はずいぶんあるの だろうが、遮るものがない。ひょっとすると届くかもしれないとコールすると小さいコー ルが返ってきた。登る時にはつぼみだったマイヅルソウの花が咲いていた。キャンプ場に は13時過ぎについた。泥まみれの靴を炊事場のホースで洗い流し、散策組が戻ってくる まで小一時間ほど時間をつぶす。 北麓野営場4:30――利尻山頂9:30〜10:00――北麓野営場13:00 登り5時間、下り3時間。



   (3)利尻岳登山      橋元武雄 6月13日(月曜日) 曇り、ときどき雨、午後はおおむね晴れ

 昨夜の宴会の時、行動食がおむすぴ2個しかないときいたが・ままよと寝てしまった。 実は、昨日の稚内で利尻岳用の行動食を買い出し組へ頼むのを忘れて、あとから携帯で連 絡したのだが、大森、中村、後藤、高橋とかけても誰も出ず。どうせ冨山さんは電源を入 れていないだろうと諦めてしまったのだった。

 鳥の声で目を覚ます。窓がわずかに明るい。時間を確認すると、まだ2時半だった。北 国は空の白むのが早く、鳥も早く鳴きだすのか。鳴き声が相当にぎやかだから、今日はお 天気は保つのかも知れないとおもいつつ、また寝込んだ。4時を過ぎると、たまりかねた 尚やんが、登るかどうする?という。もう一度、行動食を確認する。おむすびは2個しか ないが、尚やんが行動食として、菓子パンとエネルギー補給食のウイダーをそれぞれ余分 にもっているという。それならなんとかなるだろうと、出発を決め。隣のキャビンからビ −ルのロング缶をもらい、後藤さん、冨山さんの見送りを受けて出発(4:28)。 われわれの直前にも、車で乗り付けて登山を開始したパーティーがいる。

 雨は降っていないが空はどんよりしている。最北の名水と称する甘露泉水で水筒を満た す。前回、登山道の両側にびっしりと咲き込めていたマイヅルソウはまったく咲いていな い。その代わりにツバメオモトの花が目立つ。北国で花期が短いことと、海原から立ち上 がる孤峰のせいで気温の高度変化が少ないからだろうか。ツバメオモトのあとは、オオバ ナノエンレイソウとザゼンソウが延々と続く。本州の山だと、花の時期と高度はある程度 相関がある。ここでは、山麓で咲いていた花は、相当高度をあげても育成適地であれば同 じように咲いている。利尻・礼文の植性は、水平分布と垂直分布があまり変わりない。  5合目ではじめての休憩(5:37〜54)。朝は食べずにすぐ出たので、ここで朝食。途中 で抜いた同年配の6人ほどの団体が追いついてきた。ぼくは、おむすび2個を平らげたが、 尚やんは1個だけだった。  ダケカンバがひとの背丈ほどに短くなり、ハイマツ現れる(6:09)。下生えにはクロツ リバナが咲いている。クロツリバナは、これから先どんどん増えてくる。  6合目(6:14)。このあたりで登山道に臭気が漂う。ザゼンソウかと思ったが、そうで はなく、ギョウジャニンニクであった。ここから上はハイマツ帯になる。ミヤマオグルマ (6:17)がひと株だけ咲いていた(図鑑を調べるまで分からなかった)。菊科のどこにで もありそうな花だが、北海道以北に分布するようだ。ふたたびダケカンバのトンネル (6:18)にはいるが、今度のは、さらに背が低い。  登山道の脇に携帯トイレブースがある(6:19)。コンクリート製の円筒で、大木を胴切 りにしたような模様がデザインされている。覗いてみると、中に便座がひとつ置いてある。 ただ、内部の印象は不潔感があって、これでは用を足す気になれまい。  7合目、七曲(6:37)。タカネナナカマドが増える。この辺りでは、丈の短いダケカン バの疎林の下生えに、もうツバメオモトはなく、ザゼンソウの花とオオバナノエンレイソ ウの花が目立つ。  長官山までなんとかと思ったが、なかなか着きそうにないので一本(6:44〜7:09)。 樹林帯に咲いていたヒメイチゲがこの高度でも咲いていた(7:14)。  岩稜へ出る(7:16)と、下生えに草が少なくなり苔が多くなる。コケモモ、エゾヒメク ワガタ(7:23)。  尚やんと別れる(7:30)。そろそろ先に行ってもらわないと、二人とも登頂できなくな るというので、尚やんの行動食を分けてもらって先行する。  8合目。長官山、標高1218m(7:32)。長官山の少し先で、キバナノシャクナゲが咲い ていた(7:35)。今回、ミヤマオグルマと同じで、咲いていたのはここだけ。  長官山、避難小屋間のピーク(7:38)。これより避難小屋まではしばらく下りとなる。 下りの途中で、下山の単独行とすれ違った。この時刻で山頂まで行ってきたとは考えにく いから、避難小屋に泊まっていたのだろう。  利尻岳山小屋、いわゆる避難小屋(7:42)。無人であった。避難小屋を過ぎると雪渓上 部のトラバースがある。斜度はないので、雪渓と言うより雪田という感じ。そこを抜ける と道は深くえぐれ、両側から薮が覆い被さっている。そのままだと、朝露で雨に濡れたと 同じことになるので、スパッツと雨具上衣を付ける(7:44〜53)。ここでカッパを着たの は正解だった。薮は短かったが、そのあと、ひとしきり雨も降り出した。  ハクサンイチゲ群落(7:54)。まだ蕾で咲いていない。

 一本(8:01〜09)。避難小屋からはさほど斜度はなかったが、この辺りから急登がはじ まる。その前に少し開けた場所があったので休むことにした。七曲がりの前でもシマリス の姿を見たが、ここでもシマリスが出てきて餌でも欲しそうに近づいてくる。なにかやり たいところだが、人間の勝手で餌付けなどしないほうがいい。悪いけどなにもないよとい うと、きびすを返してブッシュに消えていった。ウイダーなるエネルギー食補給を食べる というか、飲むというか、流し込んで出発する。ザレが多くなり、イワベンケイが現れる、 灌木帯もぐんと背丈が短く数十センチとなる。しばらく登ると後ろから声がする。さっき 休んだ場所に、尚やんが登ってきていた。これでは先行した意味がないなあと思うが、こ れ以上ペースを上げる体力的な余地はない。このころになって、雨雲を抜けたか、大分視 界がよくなってきた。しかし、山の全容はまだ霧の中。あとで尚やんの話しでは、ここで 天気が好転したので登る気になったとか。こちらの後ろ姿を捕らえたこともあったろう。  9合目(8:19)は、斜度が緩んで広場になっている。ここにも携帯トイレ用のブースが ある。ここからが正念場と看板にあるとおり、その先はガレ場の急登となる。ここでバテ もピークに達し、尚やんに負けないくらいへばってきた。登りつづけられず、立ち止まっ て息継ぎをする状態。やけくそで、リービ英雄に触発されて憶えた万葉集最長の挽歌「高 市の皇子の尊の城上の殯の宮のときに柿本の朝臣人麻呂の作れる歌一首、併せて短歌」の 計4首を念仏のように唱える。下山者でもいれば、苦しくて気でも触れたかと思うかも知 れないが、足跡を見る限り先行者はいない。ところが、これが功を奏した。言葉を口に出 すために、自然に呼吸が深くなったためだとおもうが、俄然、身体が楽になってきたのだ。  エゾタカネヤナギ(8:14) ジンヨウスイバ(8:27) エゾエンゴサクが絨毯を敷いたよ うに群生(8:27)  沓形ルート分岐で一本(8:41〜45)。分岐は、急なザレ場の途中にあり、見上げると、 もうあれが山頂付近かと思われる辺りまでガスが上がっている。右側に、小規模だが急な 雪渓が落ちていて、かすかにトレールらしきものがある。沓形ルートだ。これだと、通常 の状態を知らない限り、危険で入らないほうがよかろうと思えた。小さくても崩壊すれば ひとなどひとたまりもない。それにこのバテバテ状態では、ますます危険である。  ここまでくると、登りと下りのコースがロープで仕切られて左側が登り、右側が下り専 用になる。沓掛ルートへの分岐から上は、赤茶けた火山岩のザレで、きわめて歩きにくい。 前回の紀行文で、3歩登って2歩落ちると書いたところだ。分岐から上は、挽歌が終わっ てしまったので、長恨歌を唸りながら登る。ザレを詰めると、ちょっとした急傾斜のルン ゼへ入る。足元は凍結して滑りやすい。ルンゼを抜けてやっと登山道らしき道へ出て、ま もなく山頂である。少し手前に山頂もどきがあるので、気を抜きやすいが、そこにはちゃ んと、山頂方向の矢印がある。

 山頂(9:04)。前回は大勢のひとがいて場所がなく、南峰側へ下りた岩陰で昼食をとっ たが、今日はだれもいない。長恨歌はまだ終わらず、「一瞥温容二つながら渺茫」までで 頂上へ着いてしまった。道士が仙界の楊貴妃を見つけ、陛下の情けを受けなくなって久し くなることを彼女が嘆く場面である。まあ、関係ないが。山頂の社をしげしげと見てみた。 正面の拝殿の背後に、左右2つの社がある。山頂の面積に比して社全体がミニチュアのよ うだが、社が3つもあるとは気づかなかった。身体はぐっしょり濡れているが、上着を羽 織らなくても寒くはない。雲を通して多少日差しがあるからだ。前回より気温は高いよう だ。近間の視界は開けていて、ロウソク岩や南峰ははっきり見えるが、下界も上空も見え ない。山頂は、ちょうど雲と雲との層の間にある。何度か梓コールを発したが応答はない。 フェリーのエンジン音と汽笛だけが下からはっきり聞こえてくる。ウイダーの残りと菓子 パンを少々ほおばりながら誰もいない山頂で30分ほど過ごした。

 下山開始(9:35)。下りながら山頂直下、左側の谷を見下ろすと、すさまじい断崖であ る。滝谷などとは様子が違う。どちらかといえば剱尾根の沢筋の感じか。その様子をICレ コーダーに録音しながら下っていくと、なんと尚やんがひょっこり姿を現した。まだ時間 に余裕はあるので、山頂へとって返し、尚やんの背負ってきた缶ビールで乾杯した。尚や んと下山開始(10:01)。  途中、避難小屋と長官山の間のピークで一本立て(10:53)、さらに5合目で軽く行動 食をとった(11:56〜12:27)。このころから下界の視野が開ける。登りはここまで1時 間で来ているから、キャンプ場帰着予定の2時にはまだ十分時間がある。ゆっくり休んだ。  5合目から下る途中から下界の景色が見えだした。ポン山がはっきり見えたので、もう いないだろうとは思いながらコールする。数回のコールで諦めかけたところ、コールが戻 ってきた。あとで聞くと、コールの主はチャウだった。タクシーでまず姫沼へ行って、そ こから戻ってくるコースを取ったので、そのころ丁度ポン山の山頂にいたのだ。  キャンプ場帰着(13:05)。まだポン山組は帰っていなかった。靴やスパッツを洗って、 着替えをする。まもなくポン山組も帰着し、2時半に手配したジャンボバスで沓形港へ。  沓形港からフェリー(15:20)。航行中、朝方の鬱陶しい天気模様から一変し爽やかな空 が広がる。利尻岳もまだ山頂部分は雲に覆われているが、裾野やポン山ははっきり見えた。



   (4)姫沼からポン山      冨山八十八
6月13日(月曜日) 曇り、のち晴れ

 6月13日、午前4時にバンガローを出たらカメラをもった後藤さんがいた。尚介さんが雨 具に身を固めて隣のバンガローから出てきて、間もなくOJも出てきた。寒い。かなり明る く雨は止んでいるがあたりはガスだ。OJ、尚介さんの「18年組」は元気に利尻山頂を目指 して出かけていった。

 ここ利尻島「北麓野営場」の草地には西洋タンポポの大きな黄色い花が目立つ。木立の 陰にすずらんがかたまって咲いている。  きのう冷たい雨のなかを利尻島の鴛泊に着いたときは、満開の八重桜が強い風に揺られ ているのに驚いた。昨夜は寒さでよく眠れなかった。あたりの花を探していると車が2台や ってきて登山パーティが、そそくさと山へ向って行った。  6時に朝食を用意する。定番の「ニラうどん」はやめ、味噌汁と赤飯にした。ニラうどん は久し振りなので家で試作してみたところ、あまり美味くなかったのと、腹持ちがよくな いので赤飯にしたのだが、インスタント味噌汁は具入りだと思っていたのが具なしで大森 さんにネギを刻んでもらい、煎り卵も作ってもらって朝食をすました。

 利尻島の北部、利尻山が裾野を下げた先にポン山と小ポン山が並んであって、そこから さらに北の海岸線に向って樹林のなかを下って行くと姫沼がある。本日のコースは姫沼ま でタクシーで行って、そこからポン山を経て野営場へ戻ることにした。 北麓野営場の木立越しにぽこんと突きでて見えるのがポン山だ。観光バスがやってきて団 体旅行のハイカーが登って行った。 ザックをパッキングして、立派なウッディ・ハウスのトイレの空き場所へ置いた。


 ポン山が望める(G)

 静かな姫沼(N)

タクシーを呼んで姫沼まで行く。駐車場には観光バスが2、3台止まっていた。「姫沼」の表 示板があって、すぐに沼の前に出た。時計回りに木道をゆく。観光客が途絶えない程度の 混みよう。しばらく行くと絵葉書が木道の端に置いてあってマジックインキで矢印が書い てある。写真はこの場所から見た利尻山の景色か、木立の向こうに雪の利尻山の山頂部分 が写っている。残念ながらいまはガスで真っ白だ。写真の傍にクロユリが一輪咲いていた。 しっかりした黒色の大きい花だ。 そこの先に左への山路があって「ポン山」の表示がある。とにかく池を一周することにす る。石囲いのなかに水が湧き出しているところがあって、この湧水がおいしいと評判らし い。コップを出して飲んでみる。冷たいのはわかるが味の方はわからない。マイヅルソウ がたくさん咲いている。それにオオバナノエンレイソウ。大花という通り普通の延齢革よ り大きな白い三弁で花芯は黄色。池を一周してポン山への路に入った。


 忘れたカメラは無事でした(G)

 撮影に手間取りなかなか進まない(O)

 こちらへはだれも入る人はいない。だらだらとした上り勾配の路。両側は一面のマイヅ ルソウ。めいめい写真を撮りながらゆっくりと進む。やがてツバメオモトがマイヅルソウ と同じような白い点々とした花をつけているのが続く。しきりに鶯が鳴いている。 ある高度まで来るとぴたりとマイヅルソウもツバメオモトも花をつけなくなった。しばら く行くと路が下りになって左側にザゼンソウが群生している。花の背後に水芭蕉に似たよ うな大きな葉があって花に覆いかぶさっている。花はその根っこ部分に咲いているのだが、 みな頭を垂れたように俯いていて写真を撮るのに苦労だ。尾さ頼ケ原でみたザゼンソウは 花だけで背後の葉のようなものはなかったが、たぶん普通は先に花が咲いてその後に葉が 延びるのではというのがチャウの意見。


 オオアマドコロ(O)

 ツバメオモト(G)

 オオバナノエンレイソウ(N)

 ザゼンソウ(N)

 いくつかの小さな沢を渡る(G)

 ポン山入口も間近(G)

 路は少し先の沢まで下っていて、また上りになっているのだが、先ほどから人声がして いたのが、上り路に人が現われ、そこで止まってしまった。われわれは進むことにした。 沢を渡って急な上りにかかるとハイカーの団体が休んでいる。先頭に若いリーダーがいて 後は中高年組だ。その中の男性から「きのうの船にいた人」と言われた。そういえばフェ リーの船内にいた男性だった。ハイキング・ツアーで、今朝、北麓野営場までバスできた 一行らしい。ポン山から姫沼まで下るのだろう。  両側にチシマザサが出てきた。食べ頃の根曲がり竹を摘みながら進む。薮が登山道に出 てくる予防になると大森さんがいうが、これは山菜としてなかなか美味しい。急な下りで また沢を越し上り返して、両側にびっしりのチシマザサの中を進み、ポン山と北麓野営場 との分岐の標識に出会う。

 右折してポン山へ向う。木立のなかの路を詰めると「左ポン山、右小ポン山」の標識が ある。左へ向う。木立が切れて平坦な地にべンチが2脚ある。ポン山頂上だ。若い男がひと りいた。 海からこの辺りまでは雲が切れて陽がさしている。「見所はポン山からの樹海に浮かぶ利 尻富士とその端麗な姿を映す姫沼」と昭文堂の地図の解説にある風景を期待していたのだ が、樹林帯の少し上からはガスに覆われている。昼食とする。


 鴛泊港・衛兵のようなペシ岬は93.2M(N)

 ポン山の頂にて(O)

 ポン山から鴛泊港(TOMI)

 ここは標高444m.だが眼下に海までの平野が広がり、利尻空港の滑走路がみえる。ちょ うど飛行機が飛んできて着陸した。その向こうの海の彼方に礼文島が横たわるのだが、こ れが結構、高い丘陵の連なりだ。下からお昼のサイレンが聞えてくる。 頂上の先の方へ行っていたチャウがコールをかけるのが聞えた。梓のコールが聞えたのだ という。後で登山組と合流したとき、彼らは下山途中でコールをかけたとのことだった。 北麓野営場もすぐ下に見えたようだ。 腰を上げて戻ると「町の見える場所」との看板がある。木立が切り開かれて真下に鴛泊の 港と町が見える。大急ぎでスケッチにかかる。大森さんが「タラの芽だ」と叫んで、みな はタラの芽の収穫にかかっている。  登ってきた路を引き返す。「分岐点」の標識を過ぎると路の傾斜が増し、木立のなかに 入る。少し行くと「甘露泉」があって、そこからはよく整備された道で直ぐに北麓野営場 の建物が現われた。 OJと尚介さんがいた。合流は2時の予定だったが、1時半ごろだったか。



   (5)香深井のキャンプ場にベース設営      大森武志
6月13日(月曜日) 昼すぎより快晴

 利尻島沓形港から礼文島香深港へ向かう(G)

 振り返ると利尻岳から雲が離れつつあった(N)

礼文島には、2つのキャンプ場がある。久種湖畔キャンプ場と、緑ヶ丘公園キャンプ場で ある。久種湖畔キャンプ場は前回行ったときに偵察してきたが、なかなか環境も良く、と くにバンガローは設備の整った立派なものだった。しかし難点は、島の最北部に位置して いること。これでは、全島を視野に入れた行動には不便だろう。というわけで、ベースは 島の中央部・香深井にある緑ヶ丘キャンプ場と決めるのに時間はかからなかった。

香深港でフェリーを降りると、橋元、冨山、高橋の3人はとり急ぎタクシーでキャンプ場 へ。管理人がいるうちに、送っておいた装備を受け取るためだ。残る後藤、中村、大森は 食料と酒を仕入れるため、かねて目当ての中島商店に向かう。 そこで大方のものは揃ったが、魚がない。店で聞くと、近くに漁協の売店があるというの で行ってみたが、本日は営業終了(もっとも、毎日開いているかどうかは疑わしい)。店 に戻って事情を話すと、数百メートル先に久保魚菜店というのがあると敢えてくれた。 タクシーに酒、食料を積み込んで行ってみると、店の一角に魚が並んでいて、氷の上に40 センチほどのクロガレイが2枚。まだ口をバクバクやっている。カレイの中では上等のほ うではないが、鮮度がよければ文句はない。しかも、値段を聞いてうれしくなった。2枚 でたったの600円。ほかに野菜も扱っていて、どうやら中島商店より新鮮で安い。

キャンプ場につくと、テント2張(8人用と5人用)の設営は終わっていた。このまえ来 たときにはスノコの台を確保できず、芝生の上に張ったが、今回のテントサイトはよりど りみどり。選んだのは炊事場にも近い、最高の立地である。


 待望の礼文島がちかづく(G)

 カレイの刺身を前にご機嫌く(G)

ねぐらが決まれば早速、夕食の準備が始まる。木のテーブル・ベンチを2つつなげ、蚊取 り線香にも火が点けられて、宴会場のセット完了。チャウはポン山で採取したタケノコ (ネマガリダケ?)とタラノメの下ごしらえに取りかかり、大森はくだんのカレイの解体 作業を開始する。ちなみにこの仕事は連日、最終日まで続いた。なにしろ別項の「漁師と ねんごろになる」の記でもわかるとおり、OJの(他のメンバーも同様だが)刺身に対する 執念は相当なもので、先に送った幕営装備の中には、しっかり刺身包丁が同梱されている (出刃があれば、もっとよかった)。 刺身ができあがると、後藤さん提供のワインと焼酎がお披露目され、タケノコは皮のまま 直火であぶった蒸し焼き状態で供される。続くは、タラノメとタケノコの天ぷらだ。大い に食い、かつ呑み、話題はとどまるところを知らない。かくして、礼文島第一夜は盛大に ふけていった。



   (6)礼文島北部      後藤文明
6月14日(火曜日)  快晴
******************************************************* 緑が丘公園キャンプ場出発(8:15) 久種湖(9:10) 礼文島北部の船泊湾に沿った車道の歩道部分を歩く 進行方向の海の彼方に、 ゴロタ岬の黒い岩壁と、今日の目的地スコトン岬が見える。山側の草地で小鳥 がけたたましく啼く音を採ってあとで調べるとコヨシキリであった レブンアツモリソウ自生地(9:46〜9:59) 笹地、レブンアツモリソウ、カラ フトアツモリソウ、両者の雑種(ホテイアツモリソウに似る)、カラマツソウ と思ったがエゾカラマツソウ、白いミズチドリ?、ハクサンチドリ、マイヅル ソウ、イタヤカエデの幼生、オオシラビソ?の矮性、ハマナス、イタドリ、リ ュウキンカ?、オニシモツケこの自生地には、レブンアツモリソウ、カラフト アツモリソウ、両者の雑種が生えている雑種は、大きさはレブン、色はムラサ キで、ホテイアツモリソウに似る このままでは、雑種が増殖するので、草の 本体は残して花を摘む 本日は環境省がその摘花をする日なのだそうだ 自生地から海岸へ向かう道路の脇。チシマフウロ、イワベンケイ、センダイハ ギ、カラフトハナシノブ 進入禁止の階段から海岸へ下降する(10:13) 海岸と崖のあいだの草地 オオイタドリ、レブンアツモリソウ、カンチコウゾリナ、ハマハタザオ、ホッ スのような、あるいは、大きな筆を逆立てたような謎の草 ゴロタ岬への登り手前で休憩(11:08〜16) 海岸に海獣のクビなし死体が打 ち上げられていた。 ゴロタ岬(11:56)、ガスと風でなにも見えない 昼食(?12:10〜57) 食後はガスが晴れてきて、スコトン岬も見えだした。 鮑古潭の浜で、ひとりで10分ほど貝拾いを(13:37) スコトン岬(14:04〜15:18)。恒例によりトドの缶詰で一杯 緑ヶ丘公園キャンプ場入口(15:58)            記録:橋元 *******************************************************

 昨日、利尻島の沓形港からフェリーで礼文島香深溝に向かう頃から天候は急速に回復し てきた。夕刻の食事時には強い冷え込みで、下弦の月も明るく天空に架かり今日の天候は 期待された。 礼文花めぐり第1日目のコンダクターを承っていたが土地勘に乏しいこともあり、スコト ン岬を始点とする4時間コースを歩き、さらに礼文岳登山まで含めた行程を計画したが、 現地での話し合いで、4時間コースをゆっくり楽しみ船泊あたりで風呂に入ってさっばり しようとの目論見に決した。 朝8時20分に島の民宿などの共同運行のバス「ノースライナー」を海辺の香深井で待つ、 暫らくするとバスはやってきた。この便は昨日乗ったイシドウハイヤーの運転手の紹介で 船泊の久種湖キャンプ場まで送ってもらうことになった。(1名500円)

 しばらく島の東海岸沿いを北上して5分ほど走ったあたりで運転手の携帯が鳴り、なに やらぶつぶつ話していたら客の積み残しだというので∪ターンして突然すごいスピードで 走り出し、われわれを乗せた香深井を過ぎてさらに香深フェリーターミナルまで約6KMを 戻ってしまった。そこで年配の夫婦をのせてまたUターン、これまた追い越しを重ねなが ら久種湖畔まできたら無愛想に下車を促され、なにかわれら6名は抛りだされたような感 じであった。美しい久種湖は静かな小波を立てウミネコがゆっくりと飛翔している、明る い空気のかなたに礼文岳がたおやかにすそを広げていた。


 快晴、今日は礼文島北方を目指す(N)

 礼文岳(G)

 レブンアツモリソウ群生地(G)

 レブンアツモリソウ(O)

 カラフトアツモリソウ(O)

 日に輝いてまことに美しい!(O)

船泊湾を右に見ながらスコトン岬にむかう車道をしばらく歩くと浜中に着 き、左折して内陸へ舗装道路をたどると「レブンアツモリソウ群生地」に着く、数台の観 光バスが着いていて見学通路は順番待ちである。50メートルほどの逆U字型の見学路はぐ るっと一回りに登って下る、私は2日目から坐骨神経痛が起こり特に下りが辛いが、もう 一人下りに苦しむ人がいた。高橋さんは利尻山の登頂を果たしていたが久しぶりの山行で もあり、脚が痛い、重ねて夕べの焼酎をすこし過ごした報いもあって辛そうである。  レブンアツモリソウは国内では礼文島だけに生育する白いアツモリソウで、絶滅の恐れ があるため「種の保存法」による特定国内希少種および北海道の天然記念物に指定されて いる。花の図鑑や前回梓の花紀行のときの大森さんの写真でしか見たことがないので、こ ころ躍らせつつ観察する。昨日来、地元情報では今は花の最盛期で幸運ですよとのことで あったが、期待に違わず淡黄色かかった白い胸を膨らませた乙女と見まごうばかりの「レブ ンアツモリソウ」がそこここに競演を繰り広げていた。 この群生地にはほかの花々の姿も多く見られたが、やはり大振りで派手な姿のアツモリソ ウの一人舞台であった。カラフトアツモリソウも見られ母衣状の花弁の上に耳のように垂 れた部分が紫色で、解説では自生種か持ち込まれたものか、レブンアツモリソウとの雑種 とか諸説があるとか。


 スコトン岬方面(N)

 海面から霧が流れてきた(G)

舗装道路は更に島の西岸にむかい、だらだらと下ってゆくと視界にコバルト色の海が開け てきて鉄府というところに降りてゆく。車の通れる道は鉄府の部落にむかってずっと伸び、 海辺に着くとそこで180度折り返して戻ってきている。 大きくショートカットできる木製の階段が付けられているが、ロープでさえぎられて通行 禁止になっていた。梓の面々はためらうこともなくそれを降りてゆく。しっかりした作り でゆったリ2人は並んで歩ける階段であったが、降りきって振り返れば脚柱が倒れかけたド ミノ倒しのように傾いていて確かに危険ではある。登ろうとしていたグループは遠慮して いた。 ゆったりと伸びる渚は北に向かっている。左は海、右は緩やかな丘陵になっていて、はる かかなたには北端のスコトン岬付近のがけが海に張り出していた。だが、やがて海上に霧 が沸き、そして行く手を遮るかのようにそれは陸にかかってきたのだった。 右の斜面中腹には遠目にレブンアツモリソウの群落がそこそこに見ることができる。足元 のセンダイハギ、ハマエンドウ、ネムロシオガマ、ハマベンケイなどを橋元、中村さんな どに同定してもらう。 一息入れて休憩したが、そのとき渚を見に行った橋元さんが「びっくりした、アザラシ首 なし死体だ」と戻ってきた。頭の部分は魚などに食われてしまったらしい。


 チシマフウロ(G)

 イワベンケイ(G)

 センダイハギ(G)

 ハマエンドウ(G)

 ミヤマオダマキ(G)

 キジムシロ(G)

 ハクサンチドリ(G)

 ネムロシオガマ(G)

 海辺でイッポン(G)

 ゴロタ山頂視界ゼロ(O)

 やがて海沿いの道はゴロタ山に向かう木柵沿いの結構きつい登りにのびていて、すぐに 行程は霧の中、しかも強い風が左手海側から吹きつける。チシマフウロ、ヤマオダマキや カンゾウの花が咲いているが風に震えて写真撮影は無理だ。どうやらゴロタ山につくと少 し風も静かになるが「360度の素晴らしい展望」は全て霧に遮られている。記念写真を写す。 すこし道が東に下り西から吹きつける霧風が穏やかになった道端で大休止、昼食とするこ とになった。小さな沢水があったので、橋元さんがビールを冷やしに行く、あいかわらず の面倒見のよさに感謝。なんとロング缶を6本も忍ばせていたので、大森さんがすこし多す ぎるんじやないと茶化したが、多い目の方が安心できる。ワインは1日目に稚内で購入した ものだが赤玉ポート並みの甘口、それに後藤が持ち込んだオーストラリア赤ワインはすご く渋いやつ、これをブレンドしたらまあまあのお味になりました。中村さんは,まめまめ しくソーセージ、チーズ、キユウリを切ってくれたり、カンズメを空けて回してくれる。 香深の中島商店で買い込んだお菓子パンやおにぎりで腹を満たした。

 ここからスコトン岬方面を見るが霧の中なので岬はあきらめて船泊まで歩いて入浴をす るかということになったが、幸運にもすこし好転の兆しもあり予定のコースをたどること にした。  鮑古丹神社に着くとここからまた海辺の道となる。ここで高橋さんが丘の上の道を行く ことを主張するが、みな知らん顔。だがどうもそちらの道の途中からはスコトン岬の美し い風景が展開されていたようで、前回の紀行の写真を見るとまことに見事な構図である。 冨山さん、高橋さん、中村さんは先行して、大森さん、後藤は写真撮影に遅れる、更に遅 れたのが橋元さん。橋元さんはまた海の幸に興味を示して前回紀行文で「大森氏がウミニ ナ(ぼくはシッタカ)と呼んだ小さな貝を拾う」と書いた貝を拾っていた。これは同日夕 餐のつまみに好評であった。飽古丹部落の風除け板囲いの家の佇まいをいたく気に入った 大森さんは、きっと傑作写真をものしていることだろう。


 むこうの海辺でOJさん貝を拾う(G)

 なにもないスコトン岬です(G)

 短い夏は花いっぱい(N)

 かなたに「トド島」(N)

 疲れたわい、一休み(N)

 ココでもビールとワイン(G)

 スコトン岬に近い集落は寂しい風景である、大きな小学校もあるが廃墟と化していた。 人の住まぬ家も散見され冬の生活の厳しさを思いやられた。  駐車場の先にたった一軒の土産物屋、車道のドン詰まりには記念撮影用のイスが並べて あり、到着する観光バス客はガイドに導かれて撮影をすませてグルツと景色を眺めると、 そそくさと土産を物色に店の中へ入って行く。どこの観光地でも見られる景色である。 だが、岬から北に見える無人島のトド島はたしかに北の果てという表現にぴったりの、自 然の厳しさと哀愁を感じさせる景色であった。秋11月から早春3月までトドが集まるという。 今日の行程で初めて冨山画伯は腰を据えスケッチに余念がなかった。 中村さんがトドの缶詰を購ってきてこれをつまみに、のこりのビールとワインでしばし歓 談の時を過ごす。


 海に雲がたなびいて利尻岳が浮かぶ(N)

 静かに夜は更けて(G)
ここで「へんし−ん」挿話:



第2日目の散策も終わりに近づき、スコトン岬の野外テーブルで休んでいました。

そのそばの売店前で、かわいいバイトの娘がバスから降りてくる観光客に懸命に

声をかけながらその土産を勧めていました。

白いアザラシのぬいぐるみマスコットです。

頭の部分が頭巾のようになっていて紐を後ろに引くと、かわいいトド君に「変身」

します。何度も何度も「ヘンシーン」「ヘンシーン」を繰り返しながら熱心に勧

めるが、なかなか相手にされずに買ってもらえません。

心優しい大森さんはその娘とお嬢さんが重なったのでしょう、脇の野外テーブル

からやさしく声をかけ一つ買いました。

娘はうれしそうに「このように紐をひくとき、ヘンシーンと言って下さい」とい

いました。

メデタシ メデタシ

 白いアザラシくん(O)

 ヘンシ〜ン!(O)

 かわいいトド君(O)



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