飯豊・宿願のコース

大森 武志    '02/08/24



  チングルマ近景
飯豊・宿願のコース

日程:2002年8月7〜10日
メンバー:橋元、中村、大森

 飯豊は過去2回、縦走しているが、気になっている課題が3つあった。石転び沢、
大日岳、そして大ー(だいぐら)尾根である。大日岳(2128m)は主稜線から外れて
いるとはいえ飯豊連峰の最高峰であり、また石転び沢は雪渓の、大ー尾根は岩稜のバ
リエーションルートといっていいだろう。小国町から入って天狗平に車を置き、これ
ら3つの課題をつなげていけば格好の周遊コースになる。梓の掲示板にその計画を載
せたら、橋元(OJ)、中村(チャウ)の両氏から参加の意思表示があった。
 いくつか記録を見ると初日が梅皮花(かいらぎ)小屋泊、2日目が飯豊本山小屋泊
で、翌日大ー尾根を下る2泊3日が一般的のようだが、昭文社の「山と高原地図」
(2000年版)によれば総行程が約19時間。前日に登山口に泊まって早発ちすれば、中
1泊で下りてこられるのではないか。下山したら飯豊山荘に泊まり、温泉でゆっくり
疲れを癒やすのも悪くはない。
 かくして8月7日、12時に東川口駅に集合し、東北道を福島飯坂ICへ。米沢、南
陽市(赤湯)、小国町を経て、18時前に天狗平の駐車場に着いた。早速テントを張り、
前夜祭の支度にかかる。食当はチャウ。枝豆、鶏カラ、鮭すし等々、朝から準備した
という調理済みの品々が並ぶ。酒は新政、ビールもしっかり冷えている。
 8月8日、晴れ。4:30起床、5:30出発。温身平(ぬくみだいら)からは、梅皮花沢
の左岸につけられた夏道をたどる。雪渓は、なかなか現れない。8:30石転び沢出合い
(860m)に到着。ようやく、本格的な雪渓だ。しかし2時間ほど登った北股沢出合い
(1470m)で雪は途絶え、あとは稜線まで草地の急登をあえぐ。11:20梅皮花小屋。
雪が少なかったせいもあるが、期待したほどのスケールではなかった。
 風が強いので、小屋に入ってしばし休息。水を補給し、マツムシソウの群落に見送
られるように烏帽子岳(2018m)を目指す。烏帽子を下って稜線歩きになると、チャ
ウのペースが落ちてきた。顔色もよくない。一方、OJはいつものとおり意気盛んで、
雪田の雪をポリ袋に入れ、ビールを冷やしながら歩くという。なんとザックの中から
は、ロング缶が5本も出てきた。天狗岳のピークを越えると、今日の幕営地、御西小
屋が見えてくる。御西小屋到着16:10。なにはともあれ乾杯。ビールはギンギンに冷
えている。
 今夜のメインディッシュは、梓名物「茹で牛」。味噌漬けにした牛肉のブロックを
丸ごと茹で(茹で汁は味噌汁に)、ほどほどの加減で取り出して切り分けるだけの一
品だが、これがうまい。しかも今日の肉は、100g1400円をOJが900円に値切ったと
いう霜降りの上物だ。なのにチャウは、バファリンを飲んでテントにこもったきり出
てこない。
 8月9日、今日も晴れ。4:30起床、OJと2人で5:00にテントを出て、大日岳に向
かう。最初は緩やかな下りで、このあたりの斜面には遅くまで雪が残っていたのか、
チングルマやハクサンイチゲが今を盛りと咲き競っている。
やがて道は急な登りになり、6:00頂上到着。頂上は馬の背ならぬ牛の背中のような形
状で、いちおう標識はあるものの、どこが本当の最高点なのか判然としない。360度の
展望を楽しんだ後、もと来た道を引き返し、7:10キャンプサイトに戻った。振り返れ
ば、飯豊の盟主にふさわしい堂々たる山容が朝日に輝いている。

ミヤマリンドウ 梅花皮小屋そばの花畑で

 ハクサンシャジン(全縦走路に見られる)
 朝食後、テントを撤収し9:00出発。御西岳を巻いて飯豊本山(2105m)が眼前に迫
るあたりで、ついに見つけた。ミヤマリンドウとも、タテヤマリンドウとも違う。こ
れこそ、飯豊特産のイイデリンドウではないか(イイデリンドウはミヤマリンドウに
比べ「やや花が大きく花冠の副裂片が直立する」とか)。
早速デジカメで撮りまくったが、後でPCに取り込んでみると何たることか、接写に
失敗し、ことごとくピントが合っていない。マクロ・モードだけでなく、ノーマル・
モードでもシャッターを切っておくべきだった。嗚呼!

飯豊特産のイイデリンドウ
飯豊本山への登りで、明らかにこれまでのミヤマリンドウやタテヤマリンドウと形の異な るリンドウを大森氏が発見した。
持参した図鑑に写真はないが、ここ特産のイイデリンド ウに間違いなかろう。
ミヤマやタテヤマと違って、花弁が丸みを帯びている。後で調べる と、飯豊のなかでも本山周辺にしかないらしいので、非常に運がよかった。見つかったの もこの株だけだった。        橋元
 飯豊本山10:15。いよいよ、大ー尾根の下りである。2ピッチばかり進んで気がつ
いたが、地図のルート時間を「正味で」かなりオーバーしている。「休み時間を入れ
ても地図のルート時間でこなせる」と考えていたが、どうやらとんだ誤算らしい。改
めてチャウの最新版の地図と比べてみると、1時間が1時間30分、1時間40分が2時間
40分といった具合。この違いの意味に気づくのが、少し遅かったようだ。昨晩のうち
に気づいていれば、大日岳をカットして早朝に出発していたものを・・・・・・。
 宝珠山を過ぎるころには風もやんで炎熱地獄となり、しかも道は、どこまでも続く
鋸尾根の起伏を忠実にたどっていく。心待ちにしていたヒメサユリがようやく姿を現
したが、某記録にあったように「豊富」というほどではない。時期が、少し遅いのだ
ろうか。

今縱走ではじめて見たハクサンイチゲ

ニッコウキスゲ
休場の峰(1321m)に着いて、やれやれこれで登りは終わりと思ったらとんでもない。
本物は、まだ40分も先にあった(15:00到着)。飲むだけでなく、ときどき頭にもか
けていたせいで、水筒の水が底をついてきた。水場はさらに高度300mも下らなければ
ならないが、果たしてそこに水があるのだろうか。あたりは瘠せ尾根といってもいい
地形だけに、安心はできない。
 水は、登山道からロープを頼りに3分ほど降りたところに、岩の間から湧き出てい
た。水量はチョロチョロ程度で、木の葉を敷いて流れをつくる。それをコップに受け
て頭からかぶり、また心ゆくまで喉を潤す。生き返った。
 水場から玉川にかかる吊り橋まで約1時間。最後の力をふりしぼる。あとはフィナ
ーレの林道歩きと言いたいところだが、虻の攻撃がすごかった。20〜30匹が、絶え間
なく襲ってくる。タオルで振り払っても、ほとんど効果がない。顔はおろか、首筋や、
手の指の間にまでもぐりこんでくる。ところが、後続のチャウには被害が及んでいな
いらしい。OJの説によれば、攻撃は先頭の獲物に集中するというのだが……。
 18:00飯豊山荘到着。何はともあれ温泉だ。洗い場も水の蛇口があるだけの簡素な
つくりだが、湯量は豊富。少し赤茶けた感じがするが、タオルが染まるほどではない。
ジャンジャン水をそそいで湯の温度を下げ、ゆっくりと浸かる。
湯から上がれば、当然ビールだ。ところが食卓について早速注文すると、「申し訳あ
りませんが本日ビールは……」ときた。一瞬、全身の力が抜けそうになる。「……生
が終わって瓶しかありません」。ああ、よかった。この際、ビールであればなんでも
いい。アサヒ・スーパードライだって、文句は言わない。

ミヤマタネツケバナ
 

ウラシマツツジの珍しい病変(この時期、
紅葉には早すぎ、花には遅すぎる)
 8月10日。今日も雨の気配なし。起き抜けに、まず温泉。かなりハードな山だった
が、これで一つ宿願を果たし、気分は爽快である。朝食前に車の中を整理し、そのあ
とで素泊まり用の施設(旧館)を見てきた。客は1組だけで、ガランとしている。
2食付でも6050円(税込)しかしないのだから、無理もない。
帰路は新潟経由も考えたが、かなり遠回りになるような気がして、往路をそのまま戻
ることにした。昼食は、福島市・信夫山公園にある蕎麦屋に寄る。そば粉十割の「生
粉打ち」を標榜しているが、チョットひっかかる。この時期、香りや味が落ちていて
も仕方ないのだが……。
(記:大森)

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