月山・鳥海山、スキー山行

大森 武志('02/04/29)・鈴木 善三('02/05/04) Photo by S.Zenzo



 鳥 海 山

「リポート1:大森武志
2002年4月27〜28日
メンバー : 鈴木善三、大森武志
鳥海山は大平(おおだいら)口から登ることに決め、地図を眺めていると、登山口に国民
宿舎大平山荘というのがある。連休中だしダメモトで電話してみると、空き室があるとい
うではないか。思わず、予約してしまった。善さんには、事後承諾ということにしよう。
となると、初日は夕食までに宿に着けばいい。行きがけの駄賃に月山をやることにした。

4月27日(土)
 午前5:00、善さんをピックアップ。寝不足なのですぐに運転を代わってもらい、目が覚
めたら郡山だった。9:30、姥沢駐車場。朝食をとり、ゆっくり支度してリフト乗り場へ。
10:30,リフトを降りて歩きはじめる。大森はシールを着け、善さんはザックに板を着けて
ツボ足。以後、登りはほとんどこのスタイルだった。
 姥ガ岳の東斜面をトラバースしつつ高度を稼ぎ、柴灯森(さいとうもり)で稜線へ。こ
こから、湯殿山に続く尾根が分かれている。鍛冶小屋直下で雪が切れたので板をデポし、
頂上到着12:30。快晴、微風。遠くに朝日連峰。振り返れば鳥海山。
 善さんのザックからビールが出てきた。しかも「モルツ」。気遣いがうれしい。13:00,
滑降開始。最大限ターンを繰り返しても、あっという間にリフトの降り場だ。あとはロー
プトウで3本ほどゲレンデを楽しみ(善さんは姥ガ岳直登)、14:00,駐車場。鳥海山に向か
う。
 途中、酒田で高速を下り、善さん約30年ぶりという山居倉庫に立ち寄る。吹浦で夕食前
宴会用の酒・ツマミを仕入れ、鳥海ブルーラインを経て大平山荘へ。眼下の日本海に、夕
日が傾いている。

4月28日(日)
 7:30、宿を出る。きょうもスッポリ、移動性高気圧におおわれている。天気の心配はま ったくなし。きのう夏道の大平口を偵察しておいたのだが、時間も早いし、鉾立方面を覗 いてみることにした。これがよかった。大平と鉾立のほぼ中間あたり(昭文社の地図では かすかに点線のルートがある)に、大きく開けた雪面が現れた。すでに、相当数の車も集 まっている。 早速、身支度を整え、8:00出発。最初は、かなりの斜度である。大森も、板を背負うこと にした。あえぐこと約1時間、巨大な電波反射板が立っている地点で、ようやく急登が終 わる(9:00)。ここからはシールを着け、広大で緩やかな雪原を軽快に進む。やがて鉾 立からのルートと合流し、10:20御浜神社に着いた。予想以上に順調だ。しばし休憩。 続く扇子森には、雪がない。ぎりぎりまで雪面をトラバースしてみたが、すぐに夏道をた どることに。扇子森の下りは再び板を履いて、一気に鞍部へ。ここで、大きな落とし穴に 落ちてしまった。この鞍部(2万5000図で1692m地点)こそ、頂上に突き上げる千蛇谷への ほとんど唯一の下降点だったのだ(事前にそれらしい情報は得ていた)。ところが2人は 何のためらいもなく、先行パーティに従って尾根道に取り付いてしまったのである。 結局、下降を試みたのは、それから相当登った七五三掛けと呼ばれるあたり。誰かの踏み 跡は残っているものの、斜度は45度以上ありそうに見える。吹き上げる風も、冷たく強い。 おっかなびっくり進んではみたが、表面がクラストしていて板の山側半分ぐらいしか雪面 に載ってくれない。しかも右手右足が山側にあって、きわめて安定が悪い。「下まで落ち てもいいじゃない」と、背後から善さんの声が聞こえるが、そうはいかない。回れ右、ギ ブアップだ。アイゼンがあれば、何とかなっただろうが……。 善さんも大森に付き合ってくれて千蛇谷をあきらめ、外輪山を行けるところまで行くこと になった。結果的には文殊岳間近で雪がなくなり、行動停止(12:00)。大休止の後,12:40 滑降を開始した。急斜面を、快調に飛ばす。扇子森を登り返すと、待ちに待ったビールタ イムだ。鳥海湖(もちろん雪に覆われている)を見下ろしながら、のんびりトカゲを決め こむ。 14:00御浜神社通過。「日本海に飛び込むような」と形容される斜面を、しかし、舐める ようにじっくり時間をかけて滑り降りる。駐車場着、14:40。 本命の千蛇谷滑降は果たしえなかったが、来年の課題ができた(と言っておこう)。

「リポート2:鈴木善三」
4月27日
 朝、柏インターを5:30に乗って、月山の駐車場に着いたのが9:30頃だった。
さっそく腹ごしらえと身支度をしてリフトに乗る。大森さんの話では、昔はもっと短かな
リフトだったとのことである。リフトを降りて歩き出したのが10:40。
 天気は快晴だが空気が冷たい。月山といっても直ぐ上のピークと思い込んでいたが、大
森さんがこのピークではないよ、この奥にあるピークで、あの右に見えるピークではない
かなあ、とのことである。直ぐ上のピークはあとで判ったことだが姥ヶ岳だった。
 月山の下のピークは頂上に行っているトレースと下を巻いているトレースが付いている。
その間を行けば一番良いのではないかと思ったが、やはりそんな甘くはなかった一本沢が
入り込んでいてだめだった。それで山頂を通るコースを行く。このピークからは湯殿山の
あの大きな赤い鳥居が眺められた。月山の山頂に着いたのは12:25。ザックに偲ばせてい
たビールでまずは乾杯。
 13:00山頂を出発。雪は重くて何時ものことながらも思うようには滑れない。そして姥
ガ岳のTバーに滑り込み、姥ガ岳に登り返して(この短い登りが苦しかった)姥ガ岳から駐
車場に滑り込んだのが14:00。
 月山の駐車場を出て、山県方面にずっと戻ってから国道122号線を湯殿山インター迄行っ
て山県自動車道に乗って鳥海山に向かう。山県自動車道を走って鶴岡の町に向かう途中に
鳥海山が前方に‥‥。
 裾野の方は、周りと一体になって霞んでいるが、雪を戴いた中腹から上の部分が中空に
聳えたっているのだ。後の話になるが、鳥海山から視た月山も、標高は1700メートル
そこそこしかないのに、其の姿は、周りの山を従えるように悠然とした雄大なすばらしい
姿だった。この二つの山は何か神々しさをも感じるのだった。荘内に住む人達は、いつも
いつもこの山々を眺めて暮らしている。月山、鳥海山に特別な思いをもっているように感
じられるのだが、その思いが理解できる様な気がする。
 酒田の町に入る前に、大森さんが「今日の宿は、あるんだ!!善さんには言わなくて悪
かったが登山口の大平山荘に予約をしておいた」とのことだ。もう寝る所を捜さなくても
食事のことを心配する必要もない。時間もあるしと、酒田の山居倉庫を見てから登山口を
確認して大平山荘に17:30頃入った。

4月28日
 大森さんが部屋の窓を開けると真っ青な透き通った空に白い小さい雲が二つ三つ浮かん
でいる。快晴だ!。宿の食事が7:00,これを待つように食事を済まして登山口に行く。登
山口の手前で、ことによったら鉾立てからの方が近いかも知れないとのことで急遽鉾立て
に向かう。ところが少し行った所で沢山の車が止まっていて山登りの支度をしている人達
がいる、これをやり過ごしたが、案内にあった登り口とは此処の所だと思いUターンして
我々も此処から登ることに決めた。
 歩き出したのが8:05,すぐに傾斜は急になる、周りではシールで歩き始めた人もいるが、
大森さんも板をザックに括り付けた。1時間も歩くと反射板があり、其処からは、なだら
かな登りが御浜小屋迄続いていた。
 御浜小屋の所では十数人が休んでいた、我々も一休みする。此処迄は順調に来た、この
先も板を担いだ人達が歩いているのが見える。一山越した先は結構急な登りだ。我々も何
の疑いもなく其のルートを目指して歩く。ところが沢筋に降りなければならないのにその
ような所は何処にも見つからない。先を歩いている人達は何となく板をもっている人が少
なくなっているような気がする。そして沢筋を歩いている人も大勢いるのだ。あの人達は
鉾立てから来たのだと勝手に思い込んでいた。
 やっとトラバースできそうな所?を見つけた。斜度は相当にある、落ちたら‥‥。それ
でも百メートルくらい下では止まるのではないかな?‥‥。上から滑り降りてきたルート
が1本、つぼ足の踏み後が一つ。そして下山してきた人が一人慎重にトラバースしている。
 我々も此処でトラバースすることに決めて少し踏み出したが思ったより雪もクラスとし
ている。靴を蹴り込んでもほとんど食込まない、危険を感じて撤退する。まだこの上にト
ラバースできる所があるのではないかと思い次のピーク迄行くと、もう滑れるような雪は
無い。板を担いで行っても滑っておりることは出来ない。そして左は切れ落ちていて雪も
付いていない。
 大森さんに「善さんは頂上を踏んでいないのだから行ってきたら」と言われたが、滑っ
て降りられないのなら行っても仕方ないし、またスキー靴で岩場を歩くのはホント歩き辛
いので頂上を目の前?(まだ小一時間かかりそう)にして下ることに決する。
 下ってから他人の話を聞くと、どうも御浜小屋の所から左の方に行って沢筋に降りるの
が正解らしい?。帰りに御浜小屋の上の御田ヶ原の所を廻り込んで見に行ってきたがこの
辺りからも降りられそうな気がした。
 メーンである山頂からの滑降を逃し心残りはあるものの2度と恵まれないような天気の
中を七五三掛の上、文殊岳の手前辺りからの滑降を存分に楽しんだ。山頂で乾杯する予定
が御浜小屋の上の岩場での乾杯に変わったけれど鳥海山という山を充分に楽しめた山行だ
った。
 吹浦の町の十六羅漢岩と松尾芭蕉の句(あつみ山や 吹浦かけて 夕すずみ)を見て西浜
のあぽん温泉で汗を流し再度乾杯して一眠り。
7:00頃発って柏インターに0時頃帰った。
(注)温海山から吹浦へかけて眺望をほしいままにしながら、自分は夕涼みをしている、
  ・・・熱いものを吹いて涼しくするとひっかけた盛夏の句

 月山から朝日連峰方面

 月山から鳥海山方面

 鳥海山滑降 引返し点

 本来なら滑る沢

 芭蕉の碑
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