北アルプス・餓鬼岳(その2)

斎 藤 修     '01/08/23



8月13日(月)  晴れのち曇り
今度こそ晴天だ。
 善さんは相変わらず朝が早い。それもそのはず今日は立派な理由がある。やっと晴れたのだ。日の出を撮影すべく小高いところまで行っていたようである。「綺麗な雲海の姿を納めた」と述べていた。本日の朝食は「おじや」。担当の善さんに聞くと、米はあるが具が全くない。残された食材を確かめると葱が1/2本だけ。調味料があるからどうにかな
ると善さんは主張する。しかし、具のないおじやはどうもいただけない。加えて、燃料も少ない。朝食は行動食の余りを食べることにする。
ほぼ360度の大展望・文句は言えない。
 このまま下山に向かうとと、餓鬼岳山頂の展望を見逃してしまう。北アルプスをほぼ見ることができる山頂は貴重である。今度は、中村・橋元さんも了承。空身で歩き出す。昨日の不摂生かすぐに息
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が上がる。どうしたものかと苦慮するものの歩くしかない。10分の行程が昨日より長く感じられる。
 山頂の展望は素晴らしかった。遅く山頂に立ったせいか誰もいない。4人だけでこの大展望を満喫している。早速、山名の確認がはじまる。例により、善さんが「独特の感」から概要を示す。それを橋元さんが訂正する。こういう問答がしばらく続く。20分ほどでどうやら確定する。でも何か変、地図も確認しない。確かに持参してもいないが、どうも私を除く3名はそろそろ読図が出来にくくなってきている(知識・能力ではない。目の問題)様である。そういえば、到着の時の地図も見ようとしていなかった(善さんはメガネをかけ頑張っていた)。いやはや、世代を感じずにはいられない。


剣ズリはなかなかの快適な道。
 下山後しばらくは北アルプスの稜線を歩いている実感を味わえた。岩稜を誇る道はところどころ険しいところもあり、
岩稜歩きを楽しめる。安全のためところどころに梯子が付けられているので安心



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ではある。野口五郎岳から烏帽子にのびる山稜と平行して付けられているので展望の変化も楽しめる。


 眼下に、高瀬ダムの湖面が見えてくれば、1584m峰の分岐である。這い松や白玉の木の実や花を楽しみながら歩くことができる。燕岳の稜線なので花崗岩の足元が適度のクッションも与えてくれる。
東沢岳もなかなか遠い。
 快調に進んでいるので、すでに東沢岳まで到達しているものと思っていると、まだ先がある。分岐からは、直角(10m程度)の梯子も着いている。そこから稜線に出るものと思えば、一気に谷側に導かれていく。どんどん下降する登山道は、原生林の暗い中に入っていく。しばらくは鬱陶しい道になる。折角得られた眺望もしばしお預けになる。
 50分ほど歩くとガレ場に出る。眺望が得られ明るいので、一本立てる。中村さんから例によりフルーツや甘味が支給される。実に美味しい。さきほど分岐で抜いた、壮年グループ(女性5名・男性1名のおもしろいグループ)が追いついてくる。先に行かすが、ザレ場の歩きはどうも不安定である。我々もそうであろうが、どういうグループなのが想像も着かない。
稜線に出るまでには、修行の連続。
 前方に見える小ピークが「東沢岳」だと思って、頑張って登る。かなりの急登である。先ほどのグループを追い抜いてしまう。雲が出始めているが餓鬼岳も見え隠れしている。しかし、それに注意を払えないほどの登りである。
 さすがに登りきったピークで休憩を取る。ここが東沢岳だと思っていると、まだ先がある。あとは諦めて歩くしかない。早朝から各休憩でビールを空けている。ここでは最後のビールを空ける。餓鬼岳で購入したビールが完売となる。
 ワンピッチ頑張ると、東沢岳の分岐に出られた。雲が多くなり天望が芳しくな
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いことが問題ではあるが、標識には示されていないがルートが描かれている。しかし、だれも登ろうとはしない。休息を取るのが精一杯である。
花の連続、変化のある下降路。
 東沢乗越まではさほどの下りではない。珍しい花も咲いており、なかなか貴重な場所であるようだ(私にはどれが珍しいのか定かではない)。比較的歩きやすい道を選んで降りる。どうしても花を見ると写真に収めたくなるのが善さん。撮影タイムとなっている。
 乗越は、これといった特徴は無い。鞍部になっていることは確かであるが、標識がなければ単なる小広場である。東沢に降りる道は、草が茂っている。早朝であれば、足元が濡れてしまいそうである。草の中の足場を探しながら降りる。


 程なく背の高い草の中に入る。そこは一面のお花畑、今盛りのトリカブトを筆頭に多くの花が咲いている。後ろ三名は「すごい・・・」「珍しい・・・」など
と言っているが、どうも高度な会話で私には理解しがたい所がある。200m程度の下降がすべて花の中である。なかなかの急勾配なので、花に見とれて油断していると危ない。それぞれ1度はヒヤッとしたはずである。
沢沿いの道は毎年整備しているのであろう。
 稜線づたいの道が終われば、本流(中房川)沿いの降路になる。最初の頃は、河原がそのまま登山路になっている。大きな流石に付けられた「○(赤)」を頼りに、ルートを判断する。安定した河原歩きをしばらくは楽しむ。何度か渡渉があるものの、下山後の楽しみに変えられる渡りである。
 休憩後、善さんが言っていた「高巻き道」(このメンバーある程度は山歩きに自信があるがほとんど事前調査をしていない)が現れる。最初は、堰堤を巻く程度であろうと思い登る。しかし、どんどん高度を上げていく。20分弱の登路になっている。見下げれば河原ははるか下方にある。もう息も絶え絶え。中村さんはすでに意欲をなくしている(おそらくそのまま快適な沢の降路を想定していたに違いない)。
 下降がはじまれば、恐ろしい急角度。危険を避けるための「高巻き」であろうが、やりすぎである。逆コースをを想定してもぞっとする。先行して前方を確認しながら進む。なかなか終わりそうもない。途中で餓鬼のテント場で見かけた単独行(一人で細々動き、4人用のテントを
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張っていた。どういう訳か土で汚れたような茶色いTシャツを着用)を沢沿いで抜く。


 沢沿いに出て堰堤が見えれば、このおお高巻きも終了である。すでに背後からは休憩を望む視線を感じている。広い場所があったので休息にする。
エンディングは、なかなか快適な森林浴。
 地図では一度、右岸にわたり左岸に渡り返すようになっていたが、渡り返すことなく中房温泉に導かれた。整備された橋を渡れば、道幅も徐々に広くなる。途
中、以前は風呂ではなかったかと思われる建物を見るようになると、すぐに中房温泉の建物が見えてくる。
 宿の裏に出る。川沿いに迂回するように登山道が付けられている。鉄製の階段を上れば「秘湯の宿・中房温泉」の玄関口に出る。以前は登山者を歓迎していた宿であるが、最近の秘湯ブームで「下山した登山者の入浴は可(700円)」になってしまった。しかも、コンクリートで出来た無味乾燥な内風呂のみ。この宿は8種類ほどのお湯船があるのだが・・。
 全員同一行動(本当は私が燕岳経由も検討)したので、登山口まで車を取りに行かなければならない。まして、着替えは全員車の中に置いてきている。自販機で激冷えのビール(350cc・500円、餓鬼岳と同じ。納得できない)を購入し、下山祝いを敢行。予約したタクシーで車を拾いに行く。


運転手の推薦する温泉で一浴。恒例のそば。
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 阿南タクシーであったが、実に良くしゃべる運転手。我々の質問に次々と的確に答える。しかも的が得ている。最初大町の温泉に戻ろうとしていた我々も、運転手の奨める「穂高町老人保養センター」に変更する。すぐ近くに「車や」という美味しいそば屋まであるという。途中その前まで案内されたので、帰路は大丈夫である。
 登山口手前の酒屋(ビールを飲みつつ待つため)で、3人をおろし齋藤だけが車を迎えに行く。夜間走ると非常に細く感じられた道も意外と広い。モトクロス場も整備されたキャンプ場になっている。早々に荷物を積み降りる。タクシーは休憩している。
 酒屋で3人と合流し温泉まで戻る。温泉は名の通り飾りはないが、安価でしかも清潔に保たれている。中房温泉の源泉がそのまま来ているという湯船に浸かれば気持ちも休まる。地元の人らしい入浴者しかいない。脱衣室に行くと、橋元さんの服が床に脱ぎ捨てられている。どこに行ったものか。私の籠から自動車の鍵
もない。善さんと検討し、ロビーで待っていると外から橋元さんが来る。どうやらそば屋を見に行ったらしい。そばが無くなり閉店してしまったという。それも重要であるが、「服はどうするのか」という問いにまったく感づかない。あわてて脱衣室に向かっていった。
 中村さんが戻ったので、これまた運転手に紹介された「広域農道(塩尻まで続いているらしい)」を南下する。すぐに小綺麗なそば屋があったので入る。
窓から安曇野が一望できる好位置に立地している。家族経営で開店してから日が浅い様であるが、誠意が感じられる店である。馬刺しを筆頭に、ほとんどのつまみのメニュー(6品ほどしかない)を食してみる。量は少ないがなかなか美味しいという評価が下る。最後に、石臼で挽いたという細めのそば食べて仕上げる。満腹。あとは豊科ICを経て帰るのみ。
 往路の借金があるので帰りは齋藤が運転する。東京駅までノンストップ。無事に到着。唐沢岳は次の楽しみ。餓鬼岳山行はリーダー善さんのもと、無事終了。
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[情報]
@白沢「餓鬼岳登山口」
・最終点に5台程度の駐車スペース。水場無し。
・手前に10台程度のスペース有り。天幕可(草地)。
・モトクロス場がキャンプ場を経営している。 
A餓鬼岳テント指定地
・4人用テントであれば,5張り程度が限度。
・水場はない。小屋で雨水を100円/リットル。
・ビール,500円/350cc。
B中房温泉
○「秘湯を守る会」中房温泉
・内風呂一箇所だけであるが入浴可(700円)。
・旅館に公衆電話,タクシーの手配が掲示。
○国民宿舎「中房温泉」
・露天風呂も入浴可能(600円)。
・下山口より徒歩10分(下降する)。
C穂高温泉郷
○穂高町立「老人保養センター」
・中房温泉より車で20分。穂高神社横。
・300円/人。シャンプー・石鹸各30円。
・中房温泉の源泉を直送。
○しゃくなげ荘・保養センター
・中房温泉より車で30分。広域農道沿い。
・500円/人。シャンプー・石鹸各30円。
・中房温泉の源泉を使用(循環している)。
・食事をする場所もある。
D松川町「すずらん荘」
・補助金で立てた豪華な近代施設。
・700円/人。シャンプー・石鹸有り。
・「いわさきちひろ美術館」横。
・宿泊も可能,9000円程度(1泊2食)。
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