鳥海山スキー山行  

−−思わず声が上がる・ヒャッホー! 大森 武志


2000年6月9〜11日
メンバー:鈴木、大森、(富山)
秋田自動車道の錦秋湖サービスエリアに着いたのは10日(土)の午前0時半過ぎ。
9日19時に柏駅前で富山さんと落ち合い、我孫子で善さんを拾って柏インターに
入ったのが19時30分だったから、500km余りを5時間で走ってきたことにな
る。インターネットで情報を仕入れ、このSAなら幕営が可能と目星をつけてい
たのだが、着いてみると予想を上回る好環境だった。通常の駐車場のほかに「緑
陰パーキング」と称する林間の駐車スペースがあり、これが誰からも邪魔されな
い絶好のテントサイトなのだ。早速、設営をすませ、例によって就寝前の小宴会
となる。ちなみに、このSA内には温泉もあり、その気になれば朝湯もOKだ。
6時半、起床。秋田道を横手ICで降り、国道107号を西へ。本荘の手前で108号
に入って矢島町まで南下し、ここから鳥海山の中腹、祓川をめざす。曲がりくね
った山道のあちらこちらに車がとめられ、腰に籠をつけた人たちがブナの森に分
け入って行く。いま東北の山々は、山菜シーズン真っ盛りなのだ。
9時、祓川駐車場に到着。ここから鳥海が堂々たる山容を現すが、あいにく山頂
には雲がかかり、風は強く、日差しもない。今朝の予報は「午後から晴れ」だっ
たので、とりあえず今夜の宿舎「祓川ヒュッテ」まで荷物を運ぶことにした。ヒ
ュッテは駐車場からほんの数百メートル。2階建てで、70人は収容できる立派な
建物だ。
管理人は実に純朴な好青年で、手続きがすんだらすぐに部屋を使ってもいいと言
う。周辺を散策する予定の富山さんにとっては、願ってもない話だ。割り振られ
た201号室は気持ちのいい畳敷きで広さ7.5畳、鳥海を真正面に望む2階の角部屋
である。そのうえ台所のガス、コンロ、調理具、食器の使用は自由だというのだ
から、宿泊(素泊まり)料金1,370円はタダみたいなものだ。
部屋で着替えと朝食をすませ、10時45分、標高1,200mのヒュッテを出発。ミズ
バショウの咲く竜ガ原湿原を横切ると、すぐに雪の斜面が始まる。富山さんと別
れて1時間ほど登ると、避難小屋(標高1,500m)の屋根が見えてきた。尾根筋
に寄って、荷物を降ろす。ふと見ると、ショウジョウバカマの群落だ。雪が解け
て夏道が現れれば、登山者の目にはふれない場所なのだろう。
ここから上は、広大な雪原となる。風は依然として強く、ガスもまいてきた。と
ころどころに残る目印のポールを頼りに、ひたすら高度を稼ぐ。標高2,000m付
近から、急に傾斜がきつくなってきた。キックステップで足場を切りながらジグ
ザグに登っていくと、いつしか樹林帯を抜けたらしく、露岩の中に踏み跡が見え
る。最後の詰めは、夏道を使うことにした。
14時15分、頂上(七高山・2,230m)に到着。日本海から吹き付ける風はひとき
わ強く、濃いガスで何も見えない。記念撮影も忘れ、岩陰に避難した。なにはと
もあれ、ビールで乾杯。予報は「午後から晴れ」なんだから、もうそろそろ雲が
切れて海が見えるはずと、しばらく粘ってみることにする。ところが、寒い。ど
んどん体が冷えてくる。
もう我慢できない。15時15分、雪渓の最上端でスキーを履き、頂上直下から滑降
開始。視界がないので、しばしば立ち止まって互いの位置を確認しながら、小刻
みに降りていく。雪はザラメで凹凸もなく、雪面は最高のコンディションだ。大
雪原はすこぶる快適で、思わず声が上がる。ヒャッホー!
途中、ルートを間違えて少し登り返したが、あっという間に避難小屋まで降りて
きてしまった。一気に滑るのはもったいないので、しばらく休憩。眼下のヒュッ
テを眺めながら、あした早起きしてもう一度上まで登ろうという話も出る。クレ
バスを避け、ブッシュを縫うように降りていくと、散策中の富山さんと遭遇。16
時、連れ立って小屋に戻る。ようやく、雲の切れ間から薄日が差してきた。

祓川ヒュッテ10:45→避難小屋12:00→1,800m地点13:00→七高山14:15→
滑降開始15:15→ヒュッテ16:00

11日(日)。4時に起きたが、外は雨。朝食後には小降りになったが雲が厚く、
スキーは諦めて観光ツアーに変更する。象潟矢島線は除雪が終わっていないので
花立からいったん仁賀保に向かい、本荘由利広域農道を経て象潟へ。富山さんの
喫茶道の弟子が店を開いているという話だったが、あいにく本日休業。蚶満寺に、
芭蕉の足跡を訪ねる。雨は上がり、ねむの花も咲いてはいなかったが、
   「象潟や 雨に西施が ねぶの花」。
9時の開店を待って、道の駅「ねむの丘」に飛び込む。目当ては4Fにある展望温
泉「眺海の湯」だ。広く清潔な風呂場にサウナ、シャンプー付きで350円。遠く
日本海に浮かぶ飛島を眺めながらの朝湯は、言うことなし。酒田からの高速道を
庄内あさひで下り(今年中に庄内あさひ−湯殿山間が開通するらしい)、国道112
号(月山道路)を湯殿山神社へ。ご神体は、沢筋の岩を割って湧き出る温泉であ
る。なるほど、「日本は神の国」だ。月山頂上を占拠して500円を徴収する月山神
社同様、金儲け主義が鼻につくが……。
あとは蕎麦を食ってサクランボを買い、山形道→東北道→磐越道→常磐道を通って、
明るいうちに柏に着いた。               記・大森

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