木曽御嶽山/山スキー行  

−−さえぎるもののない広大な雪原

(文と写真)大森武志

Sun, 30 Apr 2000



クラストした雪面と乗鞍岳

大森 武志
木曽御嶽スキー登山
2000年4月29日
メンバー:鈴木、大森

当初は29日午後発で現地幕営、30日に登山の予定だったが、「30日は午後か
ら雨模様」の予報が出たため予定を1日前倒しし、ついでに日帰りで決行す
ることにした。
何しろ大型連休の初日、渋滞に巻き込まれては身もふたもないので思い切っ
て早起きし、4時に善さんをピックアップ。5時すぎには八王子を通過して、
6時半に塩尻のインターを降りた。ラジオを聴くと、すでに高井戸周辺と相
模湖周辺で計20キロ以上の渋滞が始まっている。逃げ切り成功だ。
めし屋はどこも開いてないのでコンビニで食料を調達し、車の中で朝食。木
曽福島から高山・開田方面に右折し、8時半に御岳ロープウェーの駐車場に
着いた(前日夜に着いてテントを張るには絶好の場所だ)。ところが強風の
ためゴンドラの加重作業に時間がかかり、なかなか動き出さない。ロープウ
ェーを降りたら10時になっていた。
シラビソだかコメツガだかの針葉樹林の中に登り口を探すが、踏み跡が見当
たらない。左手に少し進んだ祠の前で善さんと意見が分かれ、彼はそのまま
直上、私は左にトラバースする方向に歩きはじめる(出発点まで滑り降りて
来てわかったことだが、ロープウェー終点からやや右方向に進み、尾根通し
にまっすぐ登るのが正解だったようだ)。
10分ほどで小屋が見えてきた。七合目行場山荘だ。ここから沢通しに詰めよ
うとしたが、これが間違いだった。沢筋は吹きだまりになるためか雪が緩く、
膝上まで潜って体力の消耗が著しい。右の尾根にとりついておよそ30分、真
新しい踏み跡に合流する。歩幅から見て、善さんのものにちがいない。踏み
跡をたどって樹林帯を抜け出ると、そこは八合目女人堂の直下だった。目に
しみるような青空の下、善さんは写真撮影に余念がない。中央アルプスの連
山や、少し雲をかぶった乗鞍岳が手に取るようだ。
八合目からは夏道通し。高度が上がるにつれ、息も上がる。屋根まで雪に埋
まった山小屋・覚明堂に着くころには風も収まり、雪面の照り返しで流れ出
る汗がサングラスにしたたり落ちる。ところが二の池を見下ろす稜線に出る
と、状況は一変。尾根はカリカリにクラストし、表面を細かなエビのシッポ
が覆い尽くしてキックステップもままならない。頂上・剣が峰からの滑降は
あきらめてスキーとザックをデポし、空身で頂上を目指す。
デポ地点に戻ってスキーを履き、いよいよ本日のハイライトだ。尾根筋をい
ったんコルまでたどり、そこから沢に滑り込む。覚明堂直下を左に回り込む
と、さえぎるもののない広大な雪原だ。とはいえ、快適な滑降を満喫できた
とは言いがたい。なにしろ今シーズン初めての山スキーだし、腐れ雪と表面
の凍ったモナカ状の雪面が入り交じり、板のコントロールがきかない。派手
な転倒のたびにわが身の未熟さを嘆きつつ、森林限界に到着。早速、ビール
とワインを雪に埋め、小宴の始まりだ。快晴、無風。御嶽の峰々をふり仰ぎ
ながらコップを傾けていると、時のたつのも忘れてしまう。
1時間ほどで雪上の宴を切り上げ、樹林帯に突入。けっこう植生が密なうえ
に多少の酔いも手伝い、悪戦苦闘の末にようやくロープウェー終点(スキー
場最上部)にたどりついた。小休止の後、ゲレンデの滑りをゆっくり楽しみ
ながら今日の行程を終了。窮屈なブーツを脱ぎ捨てたら、御嶽明神温泉(や
まゆり荘・600円)に向け出発だ。

ロープウェー終点10:00→八合目女人堂直下11:15→覚明堂上の稜線13:30
→デポ地点13:45→剣が峰14:00→滑降開始14:20→(小宴)→駐車場16:30

朝、贄川(にえかわ)の宿を通過中、善さんが巨大な古木を発見。傍らには、
なにやら説明を記した看板もある。気になったので、帰途、すでに暗くなって
いたが、懐中電灯を持って確かめに行った(好きだねぇ)。県天然記念物で幹
周り6mあまり、存在が確認されたものの中では本邦最大の栃の木だという
(……?)。                    記・大森


快調に高度を上げる


標本「エビのシッポ」


山頂の善さん

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