中央沿線/高川山と岩殿山  

−−秀麗富士12景をたずねて 斎藤 修

Fri, 25 Feb 2000


平成12年2月23日(水) 晴れ後薄曇り
単独行:齋藤 修
(1)秀麗富士12景中でも見事、高川山 駅前登山の最適地


    高川山からの秀麗富士

 山に行くのに,バスやタクシーを出来るだけ使いたくない物である。その
おかげで,「駅前登山」なる本まででている昨今である。特に単独行のの場
合や時間に余裕が無い時などは,ありがたいものである。

 初狩駅を降り駅前の標識を頼りに,右に曲がる(直進すれば滝子山)。この
山域はトイレがないので,駅で済ませておいて欲しい。次第に下がっていく
道を歩いていくと,中央線をくぐるトンネルに導かれる。下部で丁字路にな
っているので左に進む。
後はしばらく民家の中を歩く。左に分かれる道のところに標識が着いている
ので,それに従う。大きな杉の木が右手にある。その先は,北側が開け滝子
山の姿が,見事に確認できる。後は道沿いに林道を進めばよい。

 高川山も石灰石の採石で山容が変わってしまった山の一つである。地元の
計らいで,山が無くなることは避けられたが,南斜面が切り落ちている。登
山道も以前ついていた尾根伝いの道が数カ所変更され,現在に至っている。
植林帯をゆったりと林道は延びている。途中ガイドなどにもある「椎茸養殖
場」がある。道沿いに何の塀もなく堂々と種木を寝かしている。おおらかな
ものである。5人ほどのグループ(やはり壮年)が休憩しているので会釈して
進む。初狩駅前の旅館の名で「高川山登山口」の標識がある。

 そのまま林道を行くと「沢下りのコース」と名付けられた標識を頼りに進
むことが出来る。実は尾根伝いの道を男坂を経て山頂に行く予定であったが,
先ほどの分岐点で標識を確認できず直進している。すぐに「卵岩」という標
識に出くわす。道でもあるものかと上方を見上げる。あるある卵が横になっ
たような大岩が斜面から飛び出ている。鑑賞するほどのものでもないので,
先を急ぐ。

 植林と堰堤工事のために作られた林道であろうか,かなり上部まで付けら
れている。途中町の飲用のための水であろうか,大きな貯水槽もある。林道
を最後まで行くと,高川山30分を示す標識と共に,登山道になる。枯葉が落
ちた広葉樹林の中を登る。高度がどんどん稼いでいるのを実感できる。私設
のものであろうか,個人名が入った標識が目だつ。特に迷うところもないの
で,道沿いに進めばよい。

 葉が落ちた枝越しに,気持ちの良い日射しを受けしばらく歩くことが出来
る。分岐がある。左が下降路になっているようだが,「500M先岩がもろく危
険」の掲示はあるもののどこに行くかは定かではない。右に高川山の指示が
あるので進む。下山に利用する場合は気をつけたい(直進しそうな程,踏み
跡はしっかりしている)。程なく3路になっている分岐に出る。道沿いに行
けば,「屏風岩」方面に行くようである。戻り返すようについている道を左
に選ぶ。再び,同じような道がしばらく続く。

 尾根からの道「男坂」と合流する。このあたりから富士山の大きな姿が,
確認できるようになり,楽しい。『もうすぐ山頂』の標識がある。前記した
採石の影響でいろいろの道が旧道になり,場合によっては不明快な場所もあ
るので注意しておきたい。すぐに明るい場所に出る。素人づくりのベンチが
置かれ,その先には富士山がそびえている。この時期だけの眺めであろうが,
不思議と調和している。傾斜が緩くなった道をのんびり進み途中の分岐(屏
風岩)を左へ行けば,高川山山頂に着くことができる。

    高川山山頂
 平日なので,誰もいないかと思うと1人いる。山頂の方位盤に座り見込み,
展望を確認している。まさしく360度の見事な展望である。山頂に出た時
間が早いので,まだ十分に眺望が確認できる(この時期遅くなると視界が悪
くなりはじまる)。遠くは真っ白に目立つ南アルプス間の岳,鳳凰三山から
甲斐駒ヶ岳が,笹子雁が摺山越しに見る。秩父の山並みも大菩薩から一望で
きている。こうやってみると,小金沢尾根・馬の背・笹尾根もはっきり確認
できる。奥には白くなった奥多摩の高峰・鷹巣山もそびえている。標高は百
蔵山・扇山の方が高いのに非常に低く見えるのが印象的である。当然,道志
山塊も手に取るように,間近に見ることが出来る。

 休憩する場所もいろいろ物色出来る。程良い岩があるのでベンチになる。
記録を取った後は,恒例の乾杯である。50分ほどで山頂まで来てしまったの
で,多少汗もかき美味しい。富士山がよく見える方向を選び,腰を据える。
先ほどの先人(50過ぎのおばさん)が山の名前が解らないので教えて欲しいと
いう。一通り教えると『お兄ちゃん・・・』といろいろ聞いてくる。ここは
飲み屋ではないと思いつつ,親切心が先立ち丁寧に解説する。終わると,北
アルプスの歩き方,伊豆の山の話の質問が出る。続けざまにいろいろしゃべ
り始める。ついに自分が行った山の説明が多くなったので,距離を置くべく
気付かれないよう退き,席に戻りビールを大切に飲みほす。
どっちへ降りるかと最後に聞くので,田之倉方面に行き「岩殿山にも登って
帰る予定だ」と答える。これが仇となる。

 続いて,3グループほど、7・8名が登ってきて,山頂が賑やかになる。
おばさんも降りていったので,再び展望を楽しみのんびり過ごし,下山にか
かる。山頂から少しの間急な下りがあるが,後は穏やかな稜線になる。狼煙
場という場所があるが立ち止まり見るほどもないものである。加えて標識も
壊れて痛々しい。

 すぐに手製の標識で「禾生駅,途中田之倉への分岐アリ」の指示があるが,
ここは直進し少し登る。登りきると,左側(稜線づたいの道)に踏み跡がつい
ているので,そこをおりる(直進する方にも踏み後がついているが廃道になっ
ている)。少しの間急な下りが続くので,慎重に降りる。一気に高度を下げる
と穏やかな尾根歩きになる。

 このあたりから標識らしいものが少なく,枝道も現れるので,踏み後のし
っかりとしたものを選んでいく様にする。しばらくすると植林帯の蛇行する
道になる。その先で植物を採取している中年女性2名がいたので,「何を取
っているのですか・・。」と脅かしてみる。すると自慢げに「いいでしょう
こんなに取ったの・・・。」。これ以上言うすべもなく先を急ぐ(自然保護
観察員の腕章をザックに入れているが出す気もなくなってしまった)。

 急にひらけ舗装された道に出れば,田之倉側の登り口である。あとは駅を
目指して民家の中を歩けばよい。中央道をくぐるところで,右に行けば「リ
ニアモーター資料館」の標識があるが今日は割愛する。きれいな用水路が道
沿いに流れる集落を過ぎ,桂川(相模川)を渡れば,5分ほどで寂れた駅(田
之倉−近所のおばさんが切符を売っていた)に着く。先ほどの女性もおり,
岩殿山へ行くようなことを待合室にいる人に言っている。なにか変な雰囲気
になってきた。

『旅荘八幡荘』、私も行ったわけではないが看板が出ていた。田野倉・禾生
方面にはない。逆コースを取ると,初狩駅前の旅館が入浴を受け入れてくれ
ている。看板では24時間のミネラルジェットバスとうたっているので,汗を
かいたときには気持ちがよいと思われる。
0554−215−6780。問い合わせてから訪れたい。

東鷲宮6:19−池袋−新宿−(京王線)−高尾8:46−9:32初狩9:40
−10:30高川山11:05−12:10田之倉駅−(富士急行線10分)−大月

(2)家族連れで楽しめる大月の岩山 岩殿山 一気に登る岩稜


    大月駅から岩殿山

 大月駅からそびえる岩壁は見応えがある。以前は、岩登りもしていたよう
であるが、現在はその気配はない。大月市が指定した「秀麗富士12景」に指
定されている。中央道河口湖線・富士急行線が走る平地がまっすぐのびてい
る。その先に富士があるのだから、申し分ない。午前中高川山に登っている
ので、今日は秀麗富士を2山極めることとになる。

 大月駅を降り、アーケードのかかる商店街(飲食街)を進むと、中央線の踏
切にでられる。振り向くと、先ほどのおばさんが追いかけてきている。やは
り岩殿山を登るらしい。なにかつけられている感じで気持ちが悪い。NTT・
合同庁舎を横切ると、桂川(相模川)を渡る大橋がかかっている。対岸からは
岩壁がつきででいる。幅のない歩道しかないので、大人数の場合は注意をは
らいたい。

 車道を右に登ると100mほどで、登山口がある。このあたりの名勝になって
いるせいか、整備された入り口である。階段状の道が始まる。整備されすぎ
たおかげで自然林等はなく、歩きながらでも富士の展望がよい。しかし、気
温が上がってきているせいで、ガスがかかり始めている。とにかく連続する
階段状の道を「桜山公園」と名付けられた場所まで、登らされる。ここまで
は幅もあり、歩きやすい。

 桜山公園には展望台がある。資料館なるものもあり、城に似せた小さな建
物が建っている。なんとプラネタニュームまであるというのだからすごい。
広場があり、春は一面の桜が咲くと聞いている。桜の花越しにみる秀麗富士
は格別のことと思う。トイレ・水場などもあるので利用しておきたい。ここ
からは登りが急になる。幅も狭く一気に高度を稼いでいく。

 地形を利用した「岩殿城」といわれる山城があったというだけに、険しい
山容を実感できる。息を切らせながら登りに精を出す。おばさんが遅れてき
ているのが幸いである。登り出たところに、あづま屋がある広場状の場所が
あり、展望がよい(山頂は木々が茂り特に富士山の眺めが悪い)。東屋に座り、
ゆっくりするのは絶好の場所である。

    百藏山・扇山  
 少し上ると山頂(605M)である。最近の山に多い、パラボラアンテナ・携帯
電話のアンテナ加えて、NHKの中継基地になっている。そのおかげで、風情は
全くない。下がるのも面倒くさいので、最も高いと思われる場所を占領し昼
食にする。ちょうどガスがかかり富士山もかすれている。神楽山・御前山の
山並みが前方に美しい。奥には九鬼岳(もしかすると牛首山)の山頂が見えて
いる。恒例の乾杯を挙行する。その後、おばさんがスーと前を通り越してい
く。今日は子供の弁当の余りがあったので、出がけに容器に詰め込んできた。
やはり生ものはおいしい。ラーメンを作り腹に納める。出発しようとしてい
ると、おばさん登場。下山路を確認にきたらしい。お教えして、別れを惜し
む(?)。

    岩殿山から神楽山・御前山  
 本来だと種々の巨石がある岩稜を歩き、大月に戻るか頑張って「真木温泉」
に向かうのがハイキングコースだが、今日は午後からの歩きなので、割愛し
猿橋方面へ向かうことにする。山頂から右折するように道がついており、最
初は足下も悪い急勾配である。木々を頼りに慎重に下山する。大月の市街に
一気に落ちそうな下りは200M程度で終わる。すぐに整備された階段状の下り
道になる。単調な下りを一気に降りれば、猿橋よりの登り口に出る。ここに
は、駐車スペースがあるので、数台停めることができそうである。

 猿橋に出るには、(葛野)川を渡る必要がある。このあたりは段丘が深く、
橋も余りかかっていない。猿橋方面に向かい高速道路横の橋を渡るほうが、
良さそうである。こうなれば、読図と感の勝負。最短の経路を模索して進む。
中央道は車線の増加工事のため路肩・橋梁工事が進む。程なく橋のたもとに
出る。川は二股になっており、左に行けば「温泉・湯立仙人」・名勝「猿橋」
がある。14時過ぎなので行けたが、里心がつき駅に足が向かう。

 桂川(相模川)の橋梁は、河床が高くなかなか美しい。吸い込まれそうな雰
囲気がある。渡り終え国道に出れば、駅はすぐ右側である。駅前に「日本3
大奇橋猿橋300m」の標識がある。駅にある案内をみると祭事も多く賑やかに
行われるようである。改札には人もいない駅で切符を購入し、電車に乗る。


温泉『湯立人鉱泉』塩素カルシウム泉。月・火曜休み。0554-22-0622。
百蔵山の麓にある目立たない民家風の鉱泉宿。利用者は少ないようであるが
料金が1000円と多少高い気がする。不規則に休む場合があるので、特に平日
は連絡を入れてから向かったほうが良い。(私もまだ入浴したことはない)
名勝『猿橋』日本三大奇橋(そのほかは,岩国の「錦帯橋」・四国祖谷渓谷
「蔓橋」)木造建造物としては巨大な橋である。框を前にせり出すように重
ねて持ち出されている姿が、美しい。百蔵山・岩殿山からの下山には利用で
きる。一風呂浴び、猿橋を見学し駅に向かうなどは最高のエンディングであ
る。国の名勝文化財。

大月12:35−12:55桜山公園12:57−13:15岩殿山13:40−登山口14:40
−14:26猿橋14:29−高尾−新宿−池袋−東鷲宮17:15

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