初雪を踏みしめて歩く

−−赤城・鈴が岳 斎藤 修

Fri, 10 Dec 1999


 運良く,月曜日が休めることになった。空は雲がのびているが,天候は回復気味。
多少の期待を持ち,上州方面に向かう。このまま天気が悪いようであれば,桐生の
「鳴神山」も良いと思い車を走らす。しかし,立ちこめていた霧が切れ始め,やや展
望がでてきた。こうなれば,当初の予定「鈴が岳」へ向かう以外にはない。

 以前より,遠方から赤城を眺めると主峰の黒檜山の前で,邪魔している美しい山が
気になっていた。円錐状の美しい形をしているので,いっそう気になる。このての山
は,初冬の枯れ枝の時期が雰囲気がよい。特に今回は,前線の影響で雪も期待できる
はず。後は予報より,回復が早くなれば仕上がりである。
 登り口の「新坂峠」に到着する。平日の早朝なので,誰も人はいない。時より自動
車の往来はあるが,実に静かである。残念なのは,霧が出始め視界が無くなってきてい
る事である。ここまで来れば,登るしかない。登り口には予期していたように雪も見
えている。身支度を整え,歩き始める。

  新坂峠登山口 
 峠のせいか当初は5p程度の雪がある。まだ柔らかいので多少めり込む。予測して
いた割には私の足元は踝までの運動靴,多少心許ない。少し登り始めると道に着いて
いる程度の量になり,心配は消えていく。鹿よけのバラ線づたいに登山道がつけられ
ている。あまり良い感じではない。植林帯ではないことだけが気休めとなる。ほとん
どが広葉樹なので枝だけが残っており,圧迫感がない道が続く。地図では,読みとれ
ないアップダウンが数回ある。途中峠とは思えない「姥子峠」を過ぎると多少登りが
急になる。天候のせいで視界もないせいか,単調な道を進む。

 しばらく我慢すると,鍬柄峠(特に特徴のない場所だが)を経て,鍬柄山につく。本
来だと展望があるのであろうが,雲に覆われてしまい願いがかなわない。心なしか空
が明るくなってきているのが,楽しみではある。多少急な下りが待っている。足元に
は雪がクラストしている。慎重に下りる。暖かく感じるが,意外と冷え込んでいるよ
うである。霜柱も5p程度まで成長している。

  しかし,ここまでツツジの木が非常に多い。場所によっては,トンネル状になって
いるところもある。春には,十分な花を付けて楽しませてくれるに違いない。大ダオ
と言われる鞍部までは2つほどの小ピークを超えていく。この辺りから,ミズナラ・
ダケカンバ・シラカバ等の自然林の宝庫になる。木々の肌が変化をもたらしてくれる。
足元は美しい笹で覆われる様なり,木々と調和している。「鈴が岳自然環境保全地区」
の標識もあり,動物がかなり生息しているようである。

 穏やかな鞍部の大ダオは,赤城村からの登山道がループ状に交差している。穏やか
な鞍部を過ぎれば,鈴が岳への登路となる。山容に反して岩稜帯になっている。登る
につれ岩肌が多くなってくる。ところどころ3点確保も必要なところもあるが,危険
なところはない。ツツジの枝を利用しのんびり登っていけば,鈴が岳山頂に着く。想
像していた山頂は柔らかく広い展望の利く場所であるが,狭くゴツゴツとしていて狭
いものであった。

 すぐに目に付くのは,「鈴獄山神社」「赤城山大社」「愛宕山大神」の石碑である。
どういう訳か同じ石に仲良く連座している。信仰の山というのは理解できるが,三社
の関連は不明である。そのほかにも,数体石碑がある。ひとしきりの観察の後は,山
頂の儀である。本日は,妻がお弁当を作ってくれている。それをつまみにロング缶を
開ける。やはり缶詰・コンビニ食よりは数段美味しい。あまり汗をかいてはいないが,
ビールが美味しい。加えて,気圧の隙間が通過する。一瞬青空が展開する。黒檜山方
面の展望が開け,大沼も見られる様なる。残念ながら,榛名・子持・武尊山方面まで
はかなわぬが,本日の状況としては十分である。日差しも出始め,朝露で濡れた足元
も乾かしてくれている。ついつい長居をしてしまう。

  鍬柄山・山頂と大沼,黒檜岳
 今日は急いで出たおかげで,時計を忘れてしまっている。加えて携帯も忘れている。
行動中の時計が無い。感を頼りに時を把握ている(後でデジタルカメラの記録から時間
を掌握した)。慎重に岩稜帯を下りれば,大ダワである。振り向くと登りで見えなかっ
た山頂が枝だ越しに見られる。今回は,新坂峠まで同じルートを戻る。赤城村に向かう
穏やかな斜面も見え始めている。

 登路でなにも見えなかった「鍬柄山」からは,霞んではいるものの大沼方面の眺望
がある。一息つける。特に鍬柄山は,両側から見る山容が全く異なるおもしろい山で
ある。鹿除けの柵の向こうは牧場になっているらしい。新坂峠にあるエネルギー館の
建物や地蔵岳も間近に迫っている。穏やかなアップダウンを数回過ごせば,登り口の
新坂峠である。また一瞬晴れ間になり,展望が開けていた。

  新坂峠から鍬柄山
 昼前に下山できたので赤城ふるさと館で一浴と思いむかうと,休館日。外観を観察
したにとどまり家路を急ぐ。途中,農産物の直売所で新鮮な野菜を購入し土産とする。
付け加えて言うと,県道393号線は赤城山の山肌を大間々に向かいついている。市
街地を通らないルートとして利用されている。要所要所にきれいなトイレを要した,
施設があるので利用できる。

平成11年12月6日(月)

[見晴らしの湯−ふれあいの館]
赤城道路から少しずれたところにある。沼田方面からの抜け道として利用される山麓
道路(県道393号)沿いにある。平成9年に解説した新しい施設。内湯もサウナ・打
たせ湯・ボディーシャワーなど充実しており,榛名方面を一望できる露天風呂もある。
食堂・大広間も完備しており利用できる。500円/3時間と比較的やすい。
ナトリウム・カルシウム塩化物温泉(淡い褐色・塩分が含まれているので保温効果あり)
月曜・年末年始休館。027-230-5555

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