西上州 御荷鉾山(西御荷鉾山・東御荷鉾山)

−−秩父の流れるような山並みが美しい  斎藤 修

99/11/24 (水) 23:07


 上信越道を走っていると,熊谷辺りから目立つ相似峰がある。際だったものではな
いが,円錐状の山の形をしている。柔らかくとがった山容が目立つ山である。いつも
どのような山だろうと思っていたが,先日稲含山を登った際,御荷鉾山であることが
理解できた。そうなると登ってみたくなってくる。丁度良いときに,梓の冨山さんか
ら日帰りの計画を立てて欲しいと要請があった。

 この山域は,御荷鉾スーパー林道の開通で便利になった反面,登山としての魅力が
半減してしまっている。今回は,日溜まりを兼ねた山歩き。行程は短いがピークハン
トと思えば気が楽である(本当は橋元さんの誕生日を祝う事にこじつけた山登り)。

 例により,南浦和で集合する。8時の約束に5分前に全員が到着する。珍しく早め
の出発となる。運転手を亀村さんがかって出る。快適に進み本庄児玉ICでおり,鬼
石を目指す。桜山の花見のせいか車がやや多くなってくる。神流湖のまわりは紅葉が
美しい。万場の町を抜けると,みかも荘の看板を頼りに北上する。なかなか急で細い
道になる。途中にゴルフ場があるというがとてもそのような雰囲気はない。しかし,
運転になれている亀村さんの運転は安定している。先日来の豪雨で痛めつけられたら
しい林道は,ところどころ崩れている。通行止めの標識もあるが,先に進む。

 途中,御荷鉾荘の近くで小休止する。この辺りまでくると道路も大丈夫なようであ
る。しかし,油断すると,道に大きな穴が空いている。このような場所には,特に何
の標識もない。気づき回避する。事無スーパー林道に出る。今度は明快な通行止め
の看板。しかし,車幅が空いている。行ってみることにする。特に難も無く,数分で
登山口に着く事が出来た。だいぶ前の標識がそのままにされているような気配があ
る。

 駐車スペースは,車幅が広がっており10数台が停められる。5台ほど停車していた
が,余裕が十分にある。簡易トイレ・簡易水道もあるので利用できる。身支度を整え
出発となる。山に飢えていた冨山さんがたまらず歩き出している。皆がそれに続く。
しかし,なかなかペースが速い。冨山さんを押さえるべく先頭に私が出る。歩きやす
く整備されているが,結構急である。登り口で借用した杖(登り口に箱に入り杖が常
備している)が役立っている人も多い。

 登山口で900mだった道しるべが,700・500mと急激に減っていくのもうれしい。
400mを過ぎたあたりで,南方の展望が開けてくる。武甲山から東側の山並みが確認で
きるようになる。私が,山名を案内すると,ギャラリーがうるさい。「見えない」「説
明が解らない」だのと言い出す。山を楽しむ会で歩いていると,だまって確認してく
れるのに,この一団は口うるさい。不思議にも,20年以上お付き合いさせていただい
ているせいであろうか,特には気にはならない。このての会話が楽しくも感じる場合
がある。

 山頂か近くなるにつれて,高橋・鈴木さんが前に出だす。バテショウの愛称のある
高橋さんもこの程度は大丈夫らしい。最後に50mの標識があるが,山頂直下である。
後藤さんが教祖(最近ひげを蓄え,蘊蓄も多く饒舌である)のように構えているので,
記録に収める。

 山頂は,信仰の山の面影を残し,石仏なども数点ある。広い山頂と言うことで楽し
みにしていたが,なかなかのものである。360度の展望は北側がやや小枝で隠されて
いるものの十分な眺めを与えてくれる。北は,荒船・浅間・妙義・榛名・赤城・尾瀬
の山並みが確認できる。谷川・苗場はやはり雪を抱いている。南の展望は,刈りはら
われた木々のおかげで,すっきりしている。外秩父は鐘撞堂山から始まり,大霧・伊
豆が岳・武甲山・大持山が一団になっている。その後ろに,奥多摩の山がシルエット
を見せている。南西方面からは,秩父の山がつながっていて何層にも見える。流れる
ような山並みが実に美しい。特
徴のある山は目立ち,「雲取山」「両神山」「双子山」は,その特徴がはっきりしている。
初心者のために,山頂に方位盤があっても良いような感がする。

 落ち着くまもなく,腰が据わっていく。今回の纏め役冨山さんから,山頂で鍋でも
と申し出たところ,『梓は山頂で宴会はせず,下山後の温泉もどん欲で無し』の解答
をいただいたが,なかなか途中のコンビニで仕入れてきている。この安易な行程,当
然日溜まり山行となっている。天候はやや雲は多いが,穏やかであり,展望も良い。
ビールからはじまり,ワイン・日本酒へと品を変えていく。あまりないと思われたつ
まみも,自家製醤油らっきょうが橋元さんから,牛タン・あげ蒲が冨山さんから,ホ
アグラが後藤さんから続々と出で来る。中村さんお手製の卵とブロッコリーのサラダ
まである。そのほか買い入れた食材が,ちくわ・ソーセージ・明太子などが加わりど
う見ても宴会である。

 議論の上,「宴会ではなく,『たしなみ』だということ」で一応決着する。定義のほ
どは定かではないが,楽しんでいることには違いない。結構・結構...。山頂では
山の確認,山談義が続く。アルコールを嗜んだ冨山さんは,スケッチを始められてい
る。その横では,後藤さんと高橋さんの日本酒の争奪戦が行われている。大半は,西
御荷鉾山のハイキングで終える事に腹を決めたようである。動く気配がない。

 お酒とつまみの切れ目が,出発の合図となる。2時間弱は山頂にいたことになる。
せめて居たことの証拠にと写真を撮る。山頂の看板の前に集まり,おさまる。どうに
か8人は揃っていた。午後になるとややガスも出始め,眺めも悪くなりつつある。し
かし,雨が降るというほどではない。長居した山頂を後にし,支度ので来た者から歩
き始める。最初から後藤・橋元さんが居ない。待っていてもしょうがないので,先を
急ぐ。
 少し降りると,東御荷鉾山が前方に魅力的に出現する。鈴木さんが急に「登ろう」と
言い出すや居なくなり,走っていく。下りに強い高橋さんも追随する。残された,中
村・冨山・亀村・齋藤はマイペースを保つが,中村さんは登りたそう。冨山・亀村さ
んは登らないだろうと思い,先を急ぐ。投石峠に着くと,先行した両名の姿はない。
コールしてみると前後から返ってくる鈴木さんは,東御荷鉾山にすでに登り始めてい
る。高橋さんは,車の方に戻り始めているようである。

 中村さんをともない,鈴木さんを追う。登り口を確認し,私だけが多少ペースをあ
げ追いかけてみる。すると,高橋さんが戻ってきて登り始める模様であり,その横に
は亀村さんの白い帽子がある。どうやら,東御荷鉾山は,5人が登る決心をしたよう
である。遅れてきている,橋元・後藤さんにコールでその旨を示し,5人の山頂バト
ルが始まる。

 独走の鈴木さんは,いつものように快調である。その後を私が追うが,一度登る決
意やめていた中村・亀村・高橋さんは,気持ちの切り替えに努力している模様であ
る。先ずは,亀村さんが馬(酒)力にものをいわせ,3番手となる。だいぶ遅れて,中
村・高橋さんが続く。説明すれば良かったのだが,峠から東御荷鉾山までは,結構長
い。近くにピークがあるように見えるが2峰ほどだぶっている。途中から皆気づき始
めたようだが,そこはもう戻るわけには行かない。こうなれば,山屋の意地(プライ
ド)でしかない。

  途中振り向くと,西御荷鉾山の美しい姿が確認できる。高度を上げると右肩に,浅
間山を抱くようになる。ややおそいが紅葉も残っていて美しい。落ち葉の絨毯も,サ
クサクと気持ちがよい。ダントツで鈴木さんが山頂に着き,すでに戻ってきている。
私が2番手で着くが,後が続かない。山頂は,西御荷鉾山同様石仏が数体あり,山頂
を演出している。加えて,直下に石灯籠も1対ある。展望は南方が開けているが,そ
のほかは木々がやや邪魔していて,西御荷鉾山ほどではない。
 少し下り,岩稜で待つと亀村さんが見えてきた。山頂まで同行し,記録に収める。
やや遅れて,中村・高橋さんがみえたので,同様に同行する。休みは取らないのかと
いう高橋さんの言葉に耳も貸さず,下山を促す。非常に寂しそうなお顔をしていたの
が印象に残る。
後は,急いで投石峠に戻るだけである。先行した亀村さんを追うような展開になる。
残留隊が,駐車場まで戻り峠までクルマを連れてきてくれるものと,この時点で決め
ている。峠には4名合流するように到着する。程なく鈴木さん運転のデリカが迎えに
来る。

 御荷鉾山スーパー林道は,東京よりからクルマが結構上がってくる。いけそうなの
で,下る。ダムの横にでることが出来た。道のりは長く所々狭いところもあるが,同
じ道をたどることなく帰路に就くことが出来た。

 その後,後藤さんのたっての希望で,トイレ休憩をとる。ガソリンスタンドのトイ
レは「公衆便所」なのだという後藤理論が展開されるが,コンビニで用を足していただ
く。もう一つのお願いの温泉は,賛同者少数のため却下される。残されたのは,帰り
の宴である。わざわざ児玉の市街地を抜けてみるが魅力的な店がない。国道沿いを行
くと,結構はやっていそうなそば屋がある。これを逃すと浦和までなさそうなので,
決着する。

 種々の酒は用意されているが,高い(冨山評)のが気に入らない。ちょうど8人が座
れる大テーブルに案内され,下山祝いを敢行する。肴は種々あるものの決定打がな
い,中村さんの裁量が光る。後藤氏も負けじと加わるが,ビールがモルツの生と言う
ことで息が上がらない。そばビールというものがあるので,味見かたがた試みるが
「チンタオビールのようなもの(橋元評)」でおいしいとは言えない。ひとしきり品定め
をしながら,酒量を増やす。ここで運転を代わろうと思っていると,鈴木さんがやら
れるという(私の運転に賛同する方もいない)。こうなれば飲めばよい。楽しい時間を
過ごす。

 高速道に乗ろうとするが,渋滞の連続表示。土地勘のある私に案内がゆだねられ
る。一般道を利用し,南下することになる。途中私の家の横を通るので,導こうとす
るが覚られ,却下される。17号・125号・17号と熊谷・行田・大宮バイパスを乗り継
ぎ2時間で浦和に着くことが出来た。運転手の鈴木さんに感謝しつつ,分かれる。

 久々の梓の山行,気を使うことなく楽しめるのがうれしい。余談であるが,御荷鉾
山往復(山頂での飲食・帰りの宴会・ガソリン・高速代込み)が,一人3500円で終わっ
てしまった。何という経済的な山登り,不参加のみなさま,今後は8人限定で山行す
ることになりました....?。

平成11年11月23日(祝・火)
冨山・後藤・鈴木・橋元・高橋・中村・亀村・齋藤

南浦和7:55−本庄児玉−鬼石−万場−10:45西御荷鉾山登山口11:00−11:25西御荷鉾
山13:45−14:10投石峠−14:40東御荷鉾山15:00(最終)−投石峠15:30−鬼石(桜山へ向
かうが渋滞のため断念)−児玉−16:20「下山の宴」18:00−本庄児玉−熊谷−鴻巣−大
宮−武蔵浦和−20:20南浦和

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