静かな秋の山歩き

−−西上州 四つ又山・鹿岳  

27 Oct 1999 04:54:38


平成11年10月23日(土)
大森武志・齋藤修

 本来越後三山へ行く予定だった週末を,わたくしのわがままで中止してしまった。
その上,大森さんには日帰りの代案を受け入れていただき,実現の運びになった。ガ
イドを見ながら岩場も多く,一人ではと躊躇していた山だったので,安心して行くこ
とが出来た。

  西上州には,3〜6時間程度で登れる山が多い。地勢上岩山が多く,歩いていて結
構楽しめる。しかし,意外と整備されていない場所も多く慎重な行動を求められるこ
とも多い。鹿岳も例外ではなく,最後の下降がだいぶ荒れているらしい。今回は,手
前の四ツ又山を合わせて登ることにより,1日コースとした。

四つ又山より鹿岳
 早朝に我が家まで迎えに来ていただき出発する。土曜なのでさほど混雑していな
い。順調に進んで,登り口の大久保の集落に9時過ぎに到着する事が出来た。駐車ス
ペースがあまりなく心配したが,林道を少し登った辺りに数台停められる。ここから
登れば,帰りあまり林道を歩く必要もない。地元のガイドのみにある大天狗への登路
を選択する。最初沢沿いの気持ちの良い道を歩くことが出来る。植林帯のあと,開け
たところに出られ畑が山肌に作られている。踏み跡を頼りに四ツ又山への稜線へ進
む。

 途中から手入れされた植林帯を蛇行する道になる。以前は山林で栄えたのであろう
が最近は育つにまかせているようである。すぐに自然林の中を歩くようになる。やは
り薄日が差し込む自然林の中は気持ちがよい。今日は先行する大森さんが速度を保っ
てくれているので,のんびりいける。歩き始めて,30分程度で「大天狗」と言われる
鞍部に出られる。特になんというところではないが,どういう訳か標識が2つ同じ事
を示す物が付けられている。まして一つは,目新しく道標式のような物である。行政
区のなせる技であろうが無駄な事である。少し登ったところに「大天狗」と書かれた
小さな石仏があるのでそれが所以と思われる。

 ここからは,薄日の射す穏やかな稜線の登りとなる。登りはきついが,疲れを感じ
させない登路である。樹木の間から鹿岳の岩稜が時々見え隠れしている。何度かアッ
プダウンを繰り返しているうちに,前方に高い峰が見えはじまる。稜線まで植林帯が
登ってきているところで展望もあり,右に回り込むようにして四ツ又山の稜線に引き
込まれていく。すぐに分岐があるが,手製の紙で作られた簡単な標識しかない。どう
やら登った方が良さそうなので,ピークを目指す。

 5分ほどで一峰につく。見落としていれば,899.5mの四ツ又山のピークに着けな
かったわけである。ここにも道路標識様な立派な看板が山頂を示している。加えて,
個人で立てたものと思われる縦表示まである。信仰の山であろうか,なにやら所以が
ありそうな石仏もある。大森さんの話だと頭に牛を乗せているというのだか,真意は
解らない。南には稲包山,北には鹿岳が見事に見えている。雲がやや出てきている
が,十分な展望である。どうやら4峰に分かれているらしく近くに石仏のあるピーク
が確認できる。この辺りまで登るとやや紅葉が生まれてきている。木々は多少あるが
気持ちの良い山頂である。

 分岐まで戻ると,急降下になる。ロープ等もあり心配することはないが,また登り
返さなければならない。この一峰岩稜になっているらしく付け根を廻されるようにし
て道が付けられている。すぐに2峰に付くが,小さな祠と石仏一体があるだけの狭い
場所である。道標に沿って次に進む。3峰らしきところに着くが,小さな祠が道横に
あるだけで,石仏はない。どこかに転がっているのでは,という大森さんの指摘を受
け近辺を探す。気配はない。ここで右に大きく曲がり,ついぞ4峰らしいピークには
立たずに下降がはじまる。ともあれ,四ツ又山(三ツ又山)の山頂歩きは終了する。

 しかし,意外と手強い下りが待っていた。急勾配の上に,急に踏み跡が定かでなく
なる。赤布・テープを頼りにルートを見いだすが,的確な降路が見あたらない。しば
らく木を頼りの降下を試みる。どうにか赤テープを発見し,稜線づたいに戻る。ルー
トは間違っていないと思うが,疲労感を増す区間であった。こんもりとしたピーク
で,大きくなった鹿岳の岩峰が確認できる。意外と下りてしまっているようだ。峠ま
では,300m程度の高低差があるので,もう少し下ることになる。次第に踏み跡もしっ
かりしてくる。

 特に何もないマメガタ峠に着く。大久保からの登路から数名が登ってくる。今日初
めての登山者である。雑草に覆われている峠は,単なる通過点になってしまっている
ようである。以前は下郷(下仁田)側に下りる道が付いていたようであるが,今はまっ
たく判別できない。ここからは,植林帯の中をしばらく歩かされる。植林道を登山道
に変更したような道は,単調で飽きてくる。程なく自然林に変わり,ホットした歩き
を味わえる。

 途中のピークで先行した登山者をぬく。父親と中学生風の男の子2人の構成。最近
にしては,妙なパーティーである。会話もなく暗い感じすらする。登山道は稜線に移
り,時より後方に四ツ又山を確認しながら歩くことが出来る。結構な独立峰である。
道も次第に鹿岳の岩峰に引き寄せられていく。岩の固まりが間近に迫ってくる。岩登
りもするというのだが,結構モロそうである。遠くから見るとどうやって岩峰に取り
付くものかと思っていると,切り込んでいるところがあり,丁寧に道が付けられてい
る。多少足元は切れているが,整備されているので心配することはない。

南峰から見た本峰

鹿岳南峰での大森氏
 難なく分岐点のコルに着くことができる。地図上では十字路になっているが,下高
原からの道が,やや南峰(一の岳)よりに着いている。戻り返すように行くと,岩肌に
木製の梯子が付けられている。後は10分弱の岩稜を登ればよい。リンドウの花が咲い
ている。大森さんは,「こんなに花が開いているのは珍しい」というので記録に収め
る。この辺りにはだいぶ咲いている。山頂は,8畳ほどの広さに岩石が置かれている
様な状況である。意外と木も生えており,岩の上に立たないと完全な展望は得にくい。
比較して見ると本峰(二の岳)のほうが高く,展望もありそうな気がするので,先を急
ぐ(休憩してしまうと,本峰への登りが辛そう−ビール・酒を堪能したいだけ)。

 コルまで戻り新たな稜線を歩く。すぐに本峰への岩稜に取り付ける。こちらの方が
登りやすく,途中「あと5分の標識」を疑いながら進むと意外とすぐに山頂に立つこ
とが出来た。見た目よりは高度差がなかったらしい。20ほどで本日の最高峰(1015m)
に着く。先ほど抜いた男性3人衆が,展望もない山頂を占領していた。当然我々は眺
望の得られる快適な場所を模索する。岩稜を少し西に行ったところがテラスになって
いて,絶好の場所である。宴席に決定となる。先ほど登ってきた南峰が間近に迫り,
四ツ又山がきれいな形で,見えている。今週登った,稲含山も堂々とした山容を呈し
ている。
 何はともあれ,ビールに手が伸びる。保冷剤を入れクーラーボックスに入ったビー
ルは激冷え状態。大森さんよりお褒めをいただく。本日は,「鰯」「鮭」の薫製を持
参し
ている。おそるおそる差し出すと,一応の合格点。一安心。鰯は多少塩抜きに難があ
り,反省していたが,汗をかいた体には受け入れられる許容範囲らしい。自宅に保管
して置いた,「イカのポッホ焼き」も喜んでいただけたよう。快くご厚意に感謝する。
最初はビールだけで良いかと思っていた,昼食であるが,この気持ちよさについつい
日本酒に手が伸びる。薫製はこの時期,鮭が合う。大森さんも帰路の運転は一時忘れ
ているらしく,進む。最近私も自他共に酒量が増していることを確認しており,負け
じと飲む。

手前より,南峰・四ツ又山・稲含山
 これ以上居座ると,下山できそうもないので,後かたづけを開始する。これから北
に行くルートは,一般道となっていない。しかし,最近だいぶ整備されているという
情報は得ている。真っ直ぐ行くと,岩稜帯にぶつかり,ルートファインディングを楽
しめるらしい。大森山にルートは委せたが,やはりトライするらしい。特に標識もな
いルートを北側に進む。2つ目のピークに右にしか行けない標識が着いていたので,
従う。しかし,どうもこれが間違いだったらしい。岩峰(一本岩)が前方に見えてい
る。あの足元を確認したかったと大森さんがつぶやく。ここまで来ては,戻るのも気
力がない。諦めて下山を決め込む。

 穏やかな植林帯の歩きになると,木々岩峠からの道と合流する。まだ峠への標識は
着いている。本来だとこの道を下りていたのかもしれない。やや反省するが,結構降
りやすい道だったので私は納得している。大森さんは,間近に迫る「一本岩」を眺め
多
少残念そうではある。後は,道に沿い降りれば林道に出る。そこが下高原と名付けら
れた場所である。

  登り口には,標識が付いているが,際だった目印はない。ここからはひなびた山村
風景を楽しみながら降りていけば車に着くことができる。途中,桑畑・山間の畑仕事
をしている老人の姿が目に付く。紫式部と思われる美しい実がなっている事が特に印
象に残る。縮小はしたが,晩秋の山歩きとしてはなかなかのものと思われた。

幸手7:00−児玉IC−下仁田IC−9:20大久保(登山口)9:40−10:40四ツ又山10:50−マゲ
マタ峠11:20−鞍部−11:55一の岳12:05−鞍部−12:30二の岳13:30−15:10下高原−
15:30大久保15:40−下仁田IC−本庄児玉IC−幸手17:45

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