奥武蔵・熊倉山 斎藤

Thu, 8 Jul 1999 23:16:17


隠れた奥武蔵の山 熊倉山 齋藤修最後の奥武蔵のピークハント

 久しぶりの平日山行。梅雨の晴れ間の天候は,予想しにくいものがある。今日はど
うにか天気が持ちそうである。そうなるとどういう訳か,起こされずとも目が覚める
ものである。始発電車でと思ったが,妻が起きるのを待つと2番電車になってしまっ
た(これが今日一日ひびくことになる)。

 行き先も決めずに奥多摩・奥武蔵方面と漠然と考えていたが,奥多摩の地図が見あ
たらない。しょうがないので,奥武蔵・熊倉山にする。この山は確かに奥武蔵方面で
いったことがない最後の山になってしまった。ただし,2月のザゼンソウ・秋の紅葉
の時期が良いとされているのでそのころを考えていた。

 大宮駅で川越線を確認すると40分の待ち合わせ,このロスは短気な私には我慢でき
ない。すかさず新宿行きに乗り換え奥多摩へ行くことにした。だが決断がゆるむ。車
中で熊谷まで行けば,秩父鉄道に乗れたことを急に思い出す。負けん気が働き,赤羽
から高崎線へ乗り換え北上する。難というつまらないロスであろう。

 熊谷駅では,15分ほどの待ち時間,通学電車と化した秩父線で,武州日野駅を目指
す。冷房が利いていないのに,涼しい。大量の高校生が降りると,車内は閑散とし
ローカル線の雰囲気が漂う。お花畑から多少の人が乗ってきたが,後は数名である。
平日はこのようなときに良いと確信する。

 無人駅(秩父鉄道はほとんどほとんどに無人になっている)武州日野で降りたのは,
私一人である。ここからは林道をしばらく歩けば,登山口になるはずである。駅を出
てから踏切をわたると,登山口に至る車道の案内が出ているので見落とさないように
する(道沿いにまっすぐ行くと行き止まりのようである)。のどかな家並みを歩くと,
整備された林道と合流するので道沿いに進む。少し下ると清潔に維持された公衆便所
がある。後は道沿いに進めばよい。何せ駅前の案内板意外これと言った登山道に関す
る標識が一切ない。多少心細くなるが地図を頼りに進んでいく。

  民家もなくなる頃から林道歩きとなる。橋があり,それを渡ると『山翠荘』と言わ
れる鉱泉宿。2月頃は保存しているザゼンソウがかなり咲いているらしいが,今日は
その雰囲気は感じられない。平日のせいか,あまりに閑散とし,人の気配すらない。
あるガイドブックに,このまま進んでも日野コースの沢道に行けるようになっていた
ので進む。ところが沢に突き当たったあたりでそれらしい道はない。しょうがないの
で植林帯に着いている僅かな踏み跡を利用して,登山道まで藪こぎをする。かなり上
の方に登山道があり,どうにかたどり着く。こうだから最近不謹慎に文章をかく(私
も含めて)ガイドは当てにならない(山と渓谷)。またすぐにトラブル,伐採の倒木為
に登山道がふさがれている。地主の『迂回路へ』の丁寧な標識もあるが,迂回路がこ
れ以上に不安定なので私はそのまま倒木を乗り越え進んむことにした。やっと安心し
て歩けるような道になる。ここからやっと沢通しの安定した道になる。

 しかし,なかなか鬱陶しい感じがする道である。苔も生えうっかりすると滑りそう
な場所も多い。慎重な歩行が必要である。所々鹿・猿の新しい糞などもあり,一人歩
きの身には多少心細くなるところである。天候の回復も遅れているようで,霧が立ち
こめおまけに眼鏡までが曇る。しかし,このあたりからやっと熊倉山への標識がでて
来る(入り口以降標識がない)。このコース以前国体で使ったというのでどのような
コースかと思っていたが,今のところあまり快適ではない。4回ほど丸太橋を渡ると
道は右におれ,本流から離れ右俣へ入る。本流からそれるが,梅雨時のせいか水量は
十分にある。しばらく沢音を聞きながらの登りが続く。

 しばらくして2俣になったところで,植林帯の道になる。また鬱陶しく単調な登山
道となる。どうも機械的(植林帯の道は植林を第一に設定される)に付けられた道はな
じめない。尾根に近づいては離れるという,もったいぶった登路が続く。下草がきれ
いに刈られているので,一層単調感が増す。どうにか抜け出たいと思っていると,
『官舎跡』と言う標識がある。地図で確認すると営林署の管理小屋があったらしい
が,今は見る姿もなく朽ち果てている。

 次は水場と言う案内もあり,やや傾斜が緩くなりながら登りつめる。再び沢沿いの
登路となる。晴れていれば気持ちの良いところと思われるが,前記したとおり,靄が
立ちこめているので鬱陶しい。その後,斜面をトラバースするようになり,しばらく
行くと水音が聞こえてくる。登山道までが伏流で,すぐ下に水場が出ている所があ
る。かなりの水量で滾々と湧き出ている。せっかくの水だが,遠慮して先を急ぐ。

 少し行くとまた小沢の横を登るようになる。沢沿いにパイプで水をとらえた水場が
あり,どうやら国体の時にでもも設けられたもらしい。もうすぐ『笹平』である。国
体の時は幕営地になったというので,広い場所を想定していた(全国から代表で来る
ので50張り以上は必要である)が,さほどでもなくどのように使用したのか興味が沸
いた。笹平から城山コースの鞍部に行く道があるというので,気にとめていたが,発
見できないまま進む。

 そのまま山肌を巻く道に導かれる。植林帯についているので歩きやすいが,ただ歩
かされるだけで楽しい道ではない。笹平から30分弱となっているが,結構長い。その
上歩いてもまだ上に稜線がある。しばらく我慢している間に,数回のアップダウンを
させられている。飽きてきた。右に折れ傾斜を加えながら登るようなると,城山コー
スと合流する。

 上部を覗くと,まだ先がある。地図でもほんの少しだが,なかなか奧が深い。この
山は,ガイドブックも地図も十分踏破しないで記載されているようでならない。急勾
配の最終登路を頑張る。最近の不摂生がたたっているようでどうも調子が悪い。どう
いう訳か汗も出る(私はあまり汗をかく方ではなかった)。10分弱の頑張りで集結し
た。意外と広い頂上と思いきや,先に標識がある。わざとでも置かれたような岩場に
山頂の独特(鉄板を特殊加工したもののようだが,だいぶ錆びてしまい往時の姿を想
像できない)な標識がある。

 先に祠があるというので見に行くが,確かにかわいい祠が岩の上に置かれていた。
山全体がそうであるが,天候ばかりでなく眺望もない。山頂も意外ではなく相変わら
ず鬱陶しい。文句ばかり言っていてもしょうがないので,ただ一人の山に感謝し乾杯
をする。あわててきたので,食料はサンドイッチしかない。最近山を楽しむ会で豪華
な昼食にありついているので,何か物足りない。時より,日が射すが展望を生む気配
はない。服が乾いてきたので,下山を開始する。

 山頂に以前は歩かれていた『地獄谷コース』が崩壊して通行不能の標識がある。し
かし,城山コースの記載がないので,間違えそうである。この手の指示は的確に付け
るべきである。展望も無いので『林道(林道でもないのにどうしてこの名称なのか未
確認)コース』を降りようと思うが,日野コース(登ってきた道)と雰囲気が地形上似
ているので,僅かな期待を胸に城山コースを選択する。なかなかの急勾配。登る方が
快適なようである。上部は岩場になっているところも多く,下りの場合,特に注意が
必要である。少し行くと鞍部に,笹平と書かれた分岐がある。やっぱり道はあったの
だ。

 やや開けた岩場に出ると開けている。眺めがよさそう,しかしぼんやりとしてしか
見えない。ふと足元を見ると,2M程のヘビが蜷局を巻いている。視線があったの
で,軽く会釈しお別れすることにした(私,野外活動に興味はあるが,このての蛇・
蛙類は大の苦手,自宅の庭で見かけても悲鳴をあげて逃げ出すほどである−この姿を
見た子供たちから,それ以来,父親の権威がうしなわれている)。その後今回ただ一
人の登山者と会うが,蛇のことは,自分で判断してもらおうと挨拶だけにしておい
た。

 何度かアップダウンを繰り返すと,稜線から植林帯の道になる。また単調な歩きと
なる。結構勾配がある。膝にかなりの負担がかかる。慎重に降りる必要がある。新し
く植林されている箇所は足元が不安定だが,それ以外はやや細いがしっかりしてい
る。このあたりで,秩父側の展望がうまれ,うっすらながら遠方を確認できた。撮影
しているとガサガサという音,猿が走って逃げていく。なかなか楽しいエンディン
グ。林道をめがけ高度を下げると,城山コースの登り口に出られた。バイク・車が各
1台停まっていたが,途中ですれ違ったのは1人。どこかにいるのであろう。

 後は白久駅に向けて下ればよい。城山には往復20分程度の記載のあるガイドがある
が,登り口は見あたらない。登る気もないので下降を開始する。蛇行した林道を降り
るのは何か無駄をしているようで,嫌になる(どうも今日は愚痴が多い)。途中にある
『鹿ノ湯温泉』は冬期休業となっているが,どうも営業している雰囲気が感じられな
い。バブルの時の産物であろうか,各種のミニ別荘が道沿いに建てられている。大半
は手入れ不足で,醜い姿に変貌していた。

 白久温泉『谷津川館』はなかなの建物,整備された内風呂があると言うが,今日は
割愛する。駅まで道すがら後方を確認すると,晴れ始めた空に熊倉山の全容が確認で
きた。歩いて実感しただけでなく,見た目も奥行きがある。あなどってはいなったと
反省しながら,駅でビールの栓を抜き,帰路に着く。


平成11年7月7日(水)  齋藤 修

熊谷7:58−寄居−秩父−9:30武州日野9:40−10:00日野コース−笹平−11:45熊倉山
12:20
−(城山コース)−13:20登山口−林道コース出会い−14:00白久14:16−秩父−15:45熊
谷15:51−16:10羽生16:16−16:42久喜16:52−16:56東鷲宮
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