梓山行。十二ヶ岳・鬼ヶ岳。

1999年6月5日 土曜日

晴れ。

朝からラッキョの仕込み。10キロあるので、予定の11時を過ぎても終わらず、大森車が到着。大森氏が荷物の積み替えや整理をしているあいだに、善さんとカメちゃんにラッキョの薄皮剥きを手伝って貰う。小一時間遅れて出発。安行から都心を経由して中央道へ向かう。途中箱崎手前で少々渋滞した程度で予想外に空いてた。談合坂で軽い昼食をとって、予定の合流点、谷村サービスエリアへ。ほとんど数分の違いで、田中車(後藤さん同乗)に合流できた。ラッキョで遅刻の言い訳をしなくてはと思っていたが、余計な心配だった。

 

河口湖インターを出てすぐのダイエイ系スーパーのセイフーで買い物。

 

西湖のほとり、十二ヶ岳を対岸に望むテント場で幕営する。一人800円なり。小じんまりしたサイトだが、シーズオフのことで空いていて環境は悪くない。4時前には宴会が始まる。宴会の詳細は、通例のごとし。ただし今回は日本酒が進んで、相当早い時刻に、近頃評判をあげている『霧の塔 本醸造』と、定番『八海山 吟醸』が空いてしまった。そのためか、苗場へ冨山さんが持参して以来各地を転々としてきたグレンフィデックにようよう出番が回ってきた。どうも大森氏が一番気に入ったらしく、しきりに“こまでは俺が飲んだ”と気炎をあげていた。最近、酒量も大分回復してきてめでたい限りである。

 

1999年6月6日 日曜日

晴れ。

会社の試験勉強のために宴会だけ参加して帰宅する田中氏と、善さんに、デリカを下山口まで回してもらい、8時過ぎに河口湖側から登高を開始する。小振りの山は意外な急登、急下降が多いものだが、ここもその例外ではない。善さんは、近頃凝っているデジカメで目立つ花があるとしきりに撮影している。まだ元気な後藤さんが、子供の謎々のような問題を出して、腰痛を病んでいるカメちゃんを悩ましている。それに触発されて、頓知で解ける等比級数の問題をぼくが出したりして、松林を縫う急登1時間あまりをやりすごす。樹林帯が終わって斜度が落ち、景観が開けるとやがて毛無山である。名前も気にくわないし、先行パーティーが占拠していることもあり、もう一足のばして景色の良い岩場で一本立てる。

 

毛無しの先は、一ヶ岳から順に十二ヶ岳まで順番にピークを踏むわけだが、どうも語呂合わせのようで、とてもピークとは呼べないような場所が、…ヶ岳となっていたりする。われわれと、女性2人のパーティ以外は多人数のパーティが多く、なかには足下もおぼつかないひとも散見される。梯子場やロープをフィックスしてある個所で、この手のパーティと一緒になるのはたまらない。だいぶくたびれてきたといはいえ山屋のはしくれ、一定のペースでルートを消化し、これらのパーティーをうっちゃる。

 

このコースのハイライトは、十二ヶ岳の手前のキレットである。八ヶ岳の先からロープを頼りの急下降で2ピッチほど降りると、キレットの底部をまたぐ吊橋がある。それを渡って、今度は十二ヶ岳への登りとなる。露岩の多い急登で、北アなどと違って少々ほこりっぽいのが玉に瑕だが、結構楽しい。十二ヶ岳は、緑に覆われた穏やかな山容なので、そのなかに、こんな険阻な場所のある意外性が面白い。

 

十二ヶ岳の山頂は、森林に覆われて視界はなく、錆だらけになった鉄製の社がかたわらにぼろクズのように放置されている。狭くて蒸し暑く、羽虫も多いので、ちょっと戻ったところの林中の広場で後藤さんと善さんを待つ。その間に、続々と後続パーティが到着し、ほとんどピクニック広場風になってきた。

 

ここまでが目的で三々五々、弁当を広げているパーティを後目に出発。金山から節刀ヶ岳を目指す。節刀ヶ岳はツツジの名所だそうで、遠景にも山肌が赤みを帯びて期待をいだかせたが、もはや最盛期は過ぎているようであった。節刀ヶ岳は、コースから盲腸状に外れているので、狭いが人影のない山頂でゆっくりと宴会を楽しむことができた。防熱材でくるんで氷2袋を添えて持参した缶ビールは、冷えすぎるほどに冷えていて、ほてった体に浸み渡った。

 

ほろ酔い加減で最後のピーク、鬼ヶ岳を目指す。鬼の角のような岩があることが山名の由来らしいが、確かに角状の岩が1つ(可愛い形をしているので、“チンポコ岩”と名付けた。勝手にそのように命名した岩は、苗場の奥の三国スキー場近くにもある)のほかには、さほどめぼしい岩はない。ここで、少々酔いをさましをして、鍵掛峠をめざす。“鍵掛”という面白い名称に、“ここから先は、不用心だから荷物に鍵を掛ける”とか、“昔は関所があって、門に鍵が掛かっていた”とか、いや“鈎を掛ける”の転訛だとか、意味不明の会話を交わしながらわいわいがやがやと下る。大森氏が、昔は街道だったのだから道は整備されているはずとの予言通りに、非常に歩きやすい道だった。

 

縱走中は、ガスに隠れて見えなかった富士山が、最後の林道でついに姿を現し、無事善さんのカメラに収まることになった。

 

今年は連休の八甲田がなかったので、久々の山。結構、よれよれになりました。

 

帰途、後藤さんお薦めの、富士吉田の有名なうどん屋(といっても、何の変哲もないしもた屋風)によったが、3時で店じまいだそうだ(それでも遅くまで開けているほうだというから、この辺りのうどん屋は昼までらしい)。そこで、その店がうどんを卸しているという、河口湖駅の近くの食堂へ行く。駅前の急な下り坂の二股の中央に位置する、これも何の変哲もない食堂である。入ると左側に調理場、中央にテーブル席があって、右側が一段高くなって座れるようになっている。われわれは、その板の間の奥に陣取った。この食堂には一昔し前ののんびりした風情がある。客は時間の早いせいもあって、われわれしかいないが、寂れた風ではない。店の人間は、主人とおぼしき六十年輩の男とオバサン三名、それに若い女の子が一人。ところが、このオバサンたち、歳には似合わない花があるのだ。大森氏曰く、元芸者。それともまだ現役か。それに、女の子も近頃の若い子にはない、自然な対応がある。食い物は、とりたてて言うことのものはないが、ここの風情、すっかり気に入ってしまった。

 

後は、善さんの運転で、こちらは夢心地。中央高速の国立で降りて、後藤さんを南武線の谷保駅まで送る。また高速へ戻って、そのままらくだ坂に到着。久々の山で、心地よい疲れが後に残った。

 

植物誌

●フタリシズカ

●ギンラン

    小型の白い花のラン

●ツルキンバイ

    キジムシロ、ミツバツチグリ、ヘビイチゴなど似たバラ科の仲間が多いが、

善さんの送ってくれた写真で確認できた。葉の細かい切れ込み方が特徴。

●ヒメイワカガミ

    カメちゃんがしきりに葉の鋸歯を気にしていたが、

何種類かあるイワカガミのなかでこの鋸歯の具合がぴったり。

●アマドコロ

後藤さん、ナルコユリではなくアマドコロだと思います。

ナルコは、花がもっと沢山つき、葉の外観がくっきりしています。

アマは、茎に角がある、ナルコは丸いなどの区別があります。

大森さん、毒なのはホウチャクソウでした。

以上3つと、タケシマラン、ユキザサがよく似ています。

●メギ

    葉の形はツゲに似て全縁だがツゲの方が厚く光沢がある。

こちらには、鋭く長い針がある。

仲間のヘビノボラズは、針はあるが、葉に微細な鋸歯がある。

●アヤメ

    ヒオウギアヤメは湿地、こちらは乾燥草原に生える。

●ミヤマハンショウヅル

    ハンショウヅルの花が半鐘形とすると、こちらの花弁は丸みを帯て開く。

●トリガタハンショウズル

    花の形はハンショウヅルに似て、色が黄緑。

●トダイウスユキソウ

    沢山あったウスユキソウの仲間。いままで気付かなかったが、どうもこれらしい。

    南アの戸台からか。

●クロウスゴ

    節刀山山頂

●サラサドウダン

    節刀山山頂

    どうも自信が持てないが、“更紗”の由来の赤い縦縞がない黄緑のドウダン。

    シロドウダンというのもあるが、形が違うような気がする。

サラサ〜の咲き始めは筋がないのか。

 

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