つゆ間近・晴間の上州路 赤城山 齋藤

Fri, 4 Jun 1999 09:52:17


つゆ間近・晴間の上州路 赤城山山遊 ツツジが咲き始めた静かな山
駒ヶ岳・黒檜岳・地蔵岳・長七郎山

 横浜には開港記念日というものがある。今日はそれで仕事が休みとなる。まして,
明日からみだれそうであるが,天気は上々。車を走らせ赤城山を目指す。実はこの2
月登ろうと思い訪れたのだが,赤城温泉から先が土砂崩れで通行止めになり,断念し
ている。今日は「赤城道路」を北上し頂上を目指すことにする。赤城山は国道17号を
北
上していると,目の前に美しい姿を見せてくれる。以前より,行こうと思いつつ機会
を失っていた身近な存在だけに楽しみである。

 時間と共に雲が出始め薄曇りとなってきたが,まだ近辺の展望は確保されいてい
る。高度共にツツジの花が美しく咲いている。この山域,ツツジが多いことでも知ら
れているので,時期的にも期待ができそうである。赤城道路は有料道路とばかり思い
敬遠していたが,料金所がない。いつの間にか一般道になっていたようである。なか
なか走りやすく,快適に大沼まで導かれた。観光シーズンには多くの人手があるもの
と思われるが,今日は新緑の平日,実に静かである。

 国民宿舎(緑風荘)の横にある無料駐車場に車を停める。県営のようだが,なかなか
立派な建物が建っている。ほかに駐車している車は1台,やはりハイカーらしい壮年
の男性が出発の準備を整えていた。ここから少し登ったところに,駒ヶ岳を経由して
いく登山道が付けられている。今日は湿度が低いので気持ちがよい。自然林のなかに
整備された道が付けられている。新緑で展望はないが,さほど茂っていないので,鬱
陶しくない。なかなか快適な登路である。

 ガイドブックに鉄梯子と書いてあるので,とんでもない岩稜があるものかと想像し
ていたのだが、急斜面に安全のため丁寧につけらているだけであった。5メートル程
の梯子が,8〜10個付けられていた。歩幅には問題はあるが,歩きやすいものであっ
た。急斜面はこのようにした方が,荒れず良いのかもしれない。所々種類・花の色が
異なるツツジが新緑の中に咲き乱れ,眼を和ませてくれる。先ほどの男性を追い抜
き,少し登ると稜線に出られた。眼下には,覚満淵が確認できる。小沼を挟んで,長
七郎山・地蔵岳も姿を見せ出す。地蔵岳は通信系のアンテナ群の頂になっている。そ
の上,廃止になったロープウェイの軌道と共に何か痛々しい観すらする。

 稜線に出ると,熊笹の中の道となる。展望も確保され,なかなか開放感がある。ガ
スが多少でてきているので,遠方の山は残念ながら確認できないが,近辺の山並みを
鑑賞しながら高度を稼げる。駒ヶ岳まで緩やかな登りが付けられている。低木と熊笹
のハーモニーを楽しみながら歩く。野鳥のさえずりはすがすがしく聞こえる。

 通りすぎようと思うような場所に,中年の男女4名が立っていた。よく見ると駒ヶ
岳のピークらしい。登り返すように標識を確認しに行く。人が10もいれば一杯になる
ような小さなピークである。先行の方々は,国民宿舎に宿泊し朝方出てきたものらし
い。別々のグループのようだが,宿に残してきた荷物や10時まで戻れば,無料で入浴
できる等妙に細かな相談をしていた。

  多少下降すると鞍部があり,残されたのは黒檜岳への登りである。午前中このコー
スをとると、背中から太陽が照りつける。夏場はかなり堪えるものと思われる。所々
の山肌にツツジが咲いている。道は整備されているが、次第に傾斜が加わってくる。
しかし、遠目に見るよりもだいぶ楽に登れる。時々獣の糞や臭いが漂うところがあ
る。赤城といってもやはり山,自然が息づいている。心情的にはだいぶ不安を感じて
いるが,単独行ゆえの試練として受け止めながら進む。

 20分程度の登りを我慢すると,尾根に出られる。大間々(花見ヶ原森林公園)方面か
らの道が右から加わる。すぐに鳥居が見えてくる。その横には石碑が鎮座している。
所以のある代物であろうが,南峰といわれるピーク上に設置されている。標識・地図
上でもまだ先が黒檜岳の山頂なので,非常に穏やかな尾根道をすすむ。一息で,山頂
に着くことができる。どういう訳か休憩のチャンスをうし,ノンストップでここまで
来てしまった。証拠写真を撮れば,冷えた麦酒が待っている。

 汗を引かせながらの頂上散策は楽しいものである。まして今日はあまり他の登山者
もいない。気楽なものである。単独行だとどうしても何かしていないと持て余す。最
近はデジカメのおかげで数分は維持できるが,その後は読図となる。意外と頭で抱い
ている景観と,山名に食い違いがあるものだ。まして今日のように多少ガスがかかり
はじめていると尚更である。一通り儀式を終えた頃,単独行のやはり壮年男性が登っ
てきた。ラジオをつけながら来たので,嫌なのが・・と思ったが,なかなかわかって
おり山頂に達すると共にスイッチを切った。ひとしきりおとなしくしていたが,カメ
ラを構えて私の方を見ている。どうやら山頂でのスナップ写真を撮って欲しいらし
い。それなら言葉で言えばよいのにと思いながら,愛想良く対応する。それがいけな
かったのか話しかけてくる。人並み以上ににつきあった上に,先ほど確認しておいた
知識(展望の山)を披露してしまった。新潟に住んでいる人のようだが,地元では雪が
まだあるので,このあたりまで毎週のように出向いているのだそうだ。いろいろな人
がいるものである。

 赤城神社への下降を開始する。地盤がしっかりしているせいか,木製の梯子などで
登山道を補強などしていない。自然のままの地形と木の根・岩を利用している。その
せいか,登山道が自由に踏まれ広がりはじめているのが,気にかかる。このあたりで
コースを明快にしておかないと,植生が乱れ取り返しのつかぬようになる場合もあ
る。簡単なことだが,身近に接することが出来るこの自然林を守っておきたい。浮き
石に気をつけながら降りる(多少酔っているのか、2度ほど転がった)。自動車音が
はっきりしてくると赤城道路に出られる。ここから道路に沿って歩けば,15分ほどで
駐車場に着くことができる。

 駐車場は、朝方の静けさはなく観光バスが数台止まっている。次の行動を考えなが
ら,乗り込む。間近の交差点にビジターセンターがあったので,立ち寄ってみるが,
昨今の小学生も興味を示さないだろうと思われる内容の展示があった。せっかくだか
らトイレを拝借して,覚満淵の見られる「鳥居峠」に向かう。駒ヶ岳への登路からの
眺めとは違って,大沼を背景としたなかなかの景色があった。ここで帰るのも山屋の
端くれとして情けないので,地蔵岳・長七郎山に向けて行動を開始すべく移動する。

 蛇行した道を登り切ると八丁峠である。大駐車場もあるが,やや上手の小スペース
に停める。地蔵岳の登りは,立派に築づかれた木製階段が待ちかまえていた。我慢し
ながら(どうも既製の階段の歩幅と合わない)頑張る。上方にはアンテナだらけの,山
頂がある。しかし油断した後の登りはだいぶ気が抜けている。20分程度の登りが長く
感じる。しかし,小沼の湖面が登る角度の変化に対応し美しく見えることだけが幸い
している。山頂は,ロープウェイ・アンテナ工事などで荒れ果てた姿を呈している。
自然は戻りにくい物だが,観光開発と国名を受けた通信設備の設置に関しては,環境
を十分に考えてもらいたい。

  しかしここでも誘惑に負け,もう一缶空ける。展望台の日陰で大沼周辺の眺望を楽
しみながら一時を過ごす。先ほど登った山が間近に確認できる。下から林間学校の集
団が登ってきたので,残念ながら重い腰を上げる。後は峠まで戻り,小沼沿いに長七
郎山への登路を行けばよい。同じ道を戻るのも芸がないので,私の持つ地図に示され
てる下山路を探すが見あたらない。しょうがないので同じ道を降りる。

 小沼沿いには,自然歩道が付けられている。関東ふれあいの道にも指定されている
ようである。湖の端から,長七郎山への登路が付いているように私の地図はなってい
るが,やや林道を登ったあたりに非常に素朴な標識があり,右折していく。緩やかな
登りが続く。このあたりの山域の方が、ツツジが咲いている。上方には幼稚園児のに
ぎやかな声。着いてみると幼稚園の遠足らしい,全ママ連と保母さんが一生懸命登ら
していた。我が山楽の小川・小野・松倉女史もこのようなご苦労を日常しているもの
と思うと,頭が下がってしまった。

 やや、踏み跡が心細くなる道を下ると林道状の小道となり,小沼の駐車場・八丁峠
へと導かれる。下山後の温泉は,富士見村の「ふれあい館」に半ばきめていたのだ
が,
ここまで来ていると赤城温泉方面へ行きたくなってしまった(2月の屈辱戦)。大胡赤
城線「俗名−スカイボルトライン」は,やはり道は狭くかなり蛇行している。まして
平
日なのに結構登ってくる。すれ違いには注意が必要である。かなり下ると見覚えのあ
るゲートがあった(前回ここが閉まっていた)。浮気心が生じ,右折して赤城温泉とも
思ったが,最近話題になっている忠治温泉に向かった。

 建物は,民家の移築した材料を使っているようでなかなか風情のあるたたずまいを
している。温泉だと言うが義務づけられている効能書きの掲示がない。内風呂は5人
も入れば一杯になりそうな浴槽。多少外部を見られるが,魅力的な庭園ではない。そ
の上どういう訳か露天風呂には一度着替えないといけない。裸で廊下をかけていこう
(他に誰も客はいない)とも思ったが理性を取り戻し,衣服を身につけ20メートルほど
の移動をする。脱衣室しか無い、簡単な東屋があり着替え入浴する。浴槽はさほど広
くないが,川が眼下にあり程良い滝を見ながら入浴することが出来る。天気も良い上
「貸し切り」状態なので,一応満足して入浴する。しかし,風呂以外なにもない(水
栓
・シャワー類もない)のが素朴といえば素朴だが,旅館としてはいかがであろうか。

 あとは,一路一般道を帰るだけ,湯上がりに多少のどを潤したのが災いし,非常に
眠たい。最後の試練を乗り越え無事帰宅できた。


平成11年6月2日(水)      齋藤 修
幸手5:15−熊谷−伊勢崎−大胡−(赤城道路)−7:35大沼駐車場7:50−駒ヶ岳−8:55黒
桧山8:20−大沼湖畔8:50−駐車場,車移動,小沼駐車場9:15−9:50黒岳10:10−小沼
10:30−長七郎岳10:50−小沼11:10,12:10忠治温泉「忠治館」12:50−赤城神社−桐
生
−足利−館林−幸手14:40。

齋藤 修  

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