丹沢「三峰山」 齋藤

Wed, 2 Jun 1999 18:24:35


初夏の丹沢・低山はやはり展望がない 辺室山・三峰山 歩けばつらいアップダウン

 久しぶりの「週間山行の再開」を、考えていた。ところがなかなか現実にならない。
その上週末がつぶれることも多くなる。そんなとき朝5時に珍しく起きられた、目が
覚めぬ間しばらく過ごすが、外を見ると晴れそうである。天気予報を見てもまあまあ
である。これを逃したのでは、今後行かなくなってしまう。我慢し決行する。道具は
いつも準備しているザックを背負うだけでよい。

  通勤電車にザックを持ち込むのは気が引ける。しかし、まだラッシュ前どうにか迷
惑をかけず新宿をすり抜け、小田急線に飛び込む。こんな計画だから電車に乗るまで
どこに行くかも決めていない。我が家から東京に出るまで考える。新宿を起点とすれ
ばどこにでも行ける。今日はこの後仕事に行かなければならないので、陣馬方面か丹
沢にするかで考える。

 最低限の条件として、帰り温泉に浸かりさっぱりとした気持ちで勤務に出たいと思
い、丹沢「三峰山」に決定する。丹沢で残された最後のピークである。どういう訳かこ
の山には、今まで行く機会に恵まれなかった。本来落葉の静かな季節がよいのだろう
が、手頃な山としてはここしか思い浮かばなかった。

 本厚木駅で下車、なかなかの人が降りる。学生や社会人で一杯。「○×大学」のス
クールバスなど長蛇の列である。ここ数年で本当に様変わりしてしまった。バスター
ミナルに急ぐと「宮が瀬」行きは、ここからでないという。仕方なく駅前に戻る。なん
と駅前のバス停が宮が瀬行きの発着場所になっていた。そこには、例のごとく5・6
人の壮年グループ(どういう訳か決まって男女の集団)がベンチに腰掛け発車を待って
いる。前方があまりにも空いているのでバス停近辺を陣取り私も待つ。
すると「横はいり」をしてでもいるようなややきつい視線をそのグループから浴びる。
案の定、バスがくると私をおしのけるように、にらみつけて乗車していく。すいてい
るのになんと心が狭い集団。

 手には「三峰山」の案内があるコピーをたづさえている。このあたりで、このグルー
プと同一ルートを行くのが嫌になり、「辺室山」を加えたコースに軌道修正する。バス
は、市街地を抜けると飯山温泉を通っていく。広沢寺は経由しないらしい。三峰山の
登り口「煤が谷」で前記のグループが下車すると、車内は閑散としてきた。土山峠まで
行くのは、私だけではないようである。4人ほどの壮年グループも下車した。辺室山
へ行くものかと思って見いていると、迷わず多少後戻りしている。話し声を聞いてい
ると、仏果山へ行くものらしい。ここから直登出来るルートがつけらたらしい。最新
情報は、常に入手する必要がある。

  埼玉からだと結構入山までかかる、すでに3時間は経過している。峠からは植林帯
に整備された道が付いている。心配していた標識も十分である。ところがなかなかの
急登、汗をかかせてくれる。特に、このところ不摂生の続くからだには堪える。下草
が刈られているので、まわりは見渡せるが、山に囲まれているので、特に良い眺めは
ない。強いて言えば、眼下に宮が瀬湖(ダムの南端)が迫っている。水量は多いよう
だ。

 この先全般にそうなのだか、急登・緩斜面の繰り返しである。一見楽そうだが、繰
り返しの試練を与えられているようでつらい。その上、展望は皆無なので単調な登り
を楽しむしかない。新緑と小鳥の囀りが僅かな、支えとなる。1時間ほどで頂上に立
てるが、なだらかなピークに標識が立つのみである。今日初めてお会いした登山者の
ご夫婦連れが、「新聞で紹介されていたので来たが、つまらないので帰る」といってい
たほど、ここまでは鬱陶しい。やはり落葉の時期の低山である。

 少し下った、多少眺めがあるところで休息をとる。当然、最初の麦酒を空ける。今
日は、あわてて出てきたので冷やしていない。山同様美味しくない。丹沢山から竜が
馬場方面の稜線を眺めながら、汗をひかせる。湿度の成果、日差しは強く無いが結構
蒸し暑い。ここから物見峠間では、下りのみと思っていたが、なかなか登りもある。
それも急登である。さっき飲んだ麦酒が体から抜け出る。加えて酔いがまわって、一
層つらい。このあたりで、ツツジが多少咲いているが、鑑賞するほどの枝振りのもの
はない。

  程なく、物見峠に着く。私の古い地図だと、煤が谷方面へいったん戻り登り返すよ
うになっていたが、運良くバイパス道が付けられている。簡単なテーブルもあるの
で、小休止とする。年輩の男性が空身で三峰山方面からヌーと出て来たが、何かブツ
ブツ言ってすぐ消えていった。分岐上に細い道が西側からついており、それを登って
きた人らしい。私が、三峰方面へ行くとすぐにそのご夫婦に追いついた。この辺には
慣れているようであるが、体力的に奥様はだいぶ辛そうである。「1時間ほどでいけ
るか?」と聞かれたので「頑張れば」と答えておいた。それにしても新緑は見事である
が、眺めは実に与えてくれない。この調子だと山頂までこの雰囲気が続きそうであ
る。

 三峰山、@山頂付近が3峰になっている山A山域に三つの頂がある山域、この二つ
が私の「三峰山」の定義とするものだが、いずこやで「三方から峰が来ている山」といっ
ていた人がいるので、今後定説を探ってみたい。若干千メートルに足らないこの三峰
山は、いかなるゆえん所以であろうか。

 山頂直下の鎖場(鎖は付いているがどうしても必要という傾斜ではない)を進むと山
頂である。しかし、なかなか着かない。途中山頂まで0.6qの表示があったが、かな
り登っているがまだ先がある。山頂に行くのに三つの峰を越える山なのかもしれな
い。

 どうにか山頂に着くと、年輩の男性2名が、テーブルを占有して歓談していた。邪
魔をしてもと思い、少し離れた日陰で休息をとる。時々山頂に記録の写真を撮影に出
るが、先ほどの御人方はのんびりしている。しばらくすると山談義(自慢話)が始まっ
たので、私のスタンスが正しかったことを確認できる。とにかく山中ではあまりいら
ぬ話はしたくない。当然ロング缶に手が伸びる。今朝仕入れた「サンドイッチ」が良い
つまみとなる。

 右向きに「不動尻」の標識が出ていたので従う。小ピークを数カ所越えた後、急激な
下降となる。沢どうしに蛇行しながら降りていく。歩きやすく整備されているので問
題はない。途中からは、沢の音を気にしながら高度の確認が出来る。時々階段状とな
る丹沢独特の箇所があるが、気になる度ではない。

 不動尻には、依然級友と大山から下降してきた記憶がある。「不動尻キャンプ場」は
利用したこともあり、私の専門分野建築でも取り上げられているほどの施設。建設さ
れて30年弱になるが、なかなか魅力的なフィールドである。キャンプは自然と共にす
るもの、それには飲める清水が流れている。これが私の考え方の原点である。私を育
ててくれた、道志の山はそんなところである。この不動尻も坂倉建築研究所の設計で
あるが、例に漏れない選択をしていた。

  近辺もだいぶ整備されているようで、自然歩道・森林の神奈川県の標識が何カ所で
見受けられた。整備するのはよいが、両者が来たくなるような設定が必要と思われ
る。山中まで来て、ただ歩くそして道案内通りに歩かされる。これでは日常生活と何
ら変わりがない。非日常を野外活動・登山としている私の定義には、整備され過ぎた
フィールドは必要ない。来た者が多少困り、色づけできる程度のエリアでよい。

 鐘が岳までトライしてみようと思っていたが、やはりここで頓挫してしまった。広
沢寺温泉で、汗を流すことにする。以前は、外来の入浴をさせていなかったが、最近
千円と高いが、入浴させるようになった。偶然にも今日は「露天風呂の日」であった。
しかし、非常に狭くガレージについているような透明な屋根が着いている代物であ
る。興ざめの観がある。その上ロビーらしい広々とした場所もないので、休憩もでき
ない。この温泉ブームで、入浴客は増えているだろうが、こんな宿に1万数千円も出
して宿泊する者がいるのかと思うと不思議である。

 どうにか自分の不摂生を反省する機会はもてた。これからは、年度当初のように週
間で行けるようになれることを期待するのみである。

単独行 : 齋藤 修

平成11年5月30日(月)
 本厚木8:40−9:10土山峠9:20−10:10辺室山−10:30物見峠10:40−11:35三峰山
11:55−12:30不動尻−13:00広沢寺温泉13:45−14:05本厚木14:50−海老名−横浜

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