子持山

--梓東葛支部平成10年度最終山行 ・斎藤 修

1998年12月30日




 会員のほとんどは,年末のスキーに照準を合わせ行動を調整している折,東葛支部は
30日に抜け駆け的に「子持山」に向かった。とはいっても大森リーダーの元、高橋・
齋藤がお供するという次第である。年末山行の計画は,恒例の餅つきの際も話題にあげ
たのだか,あまり好意的な返事がいただけなかったので,今回の運びとなった。

私は,この山域に以前より興味をもっており,大森氏に声をかけていたのだが,冬晴れ
の気持ちの良い日に実行できることになった。谷川・武尊・赤城・榛名の山々に囲まれ,
高速道では新潟方面へ行く際目立つ山並みなのだが,登高意欲を掻き立てるほど魅力的
な山には見えない。しかし最近はガイドブックなどにもたびたび名前があがるようにな
り,武州「子持山」の次は行こうと思っていた山である。

地形図で明瞭に読みとれる地形が,高速道で藤岡を過ぎたあたりから前方に目立つよう
になってくる。最近昭文社では「赤城・皇海・筑波」と題して普段取り上げない山域を
総合版的に編集した地図を出したが,その中にも紹介されている。本来だと赤城ICで
降りるのが近いようであるが,道もすいているので渋川・伊香保ICでおり,昼食でも
購入しながら行こうということになった。ところが一般道に出ると最近できたバイパス
に入ってしまい,そのまま子持村へ導かれてしまった。目標の「子持神社」も標識が整
っており,迷うことはない。だんだん道幅が狭くなるものの,舗装されてはいる。
意外と奥まったところに神社はあった。

 さらに進むと,3号橋(どういう訳かこの山域、橋の名前に下から順番に番号が振ら
れている)を過ぎ,どんどん高度を稼ぐ。しばらくすると、下山地となる5号橋に到着。
駐車場に車が2台止まっているが,十分スペースは余っている。10時前後と思っていた
が、まだ9時をまわったばかり,幸手から2時間強で着けた。案内板もついており,な
かなか整備されているようである。

3分ほど歩くと6号橋,10分ほどで7号橋を通過。この辺りには神社の別社もあり、信
仰の山であることが確認できる。駐車場からも見えていた「屏風岩」が,巨大な姿で前
方をふさいでいる。この根元を巻くように、沢沿いに稜線へ出る登山道がつけられてい
る。少し歩くと,屏風岩の基部に「子持神社奥宮」があった。一礼した後、先を急ぐ。
地域の小学生のハイキングのためにでもつけたのだろうと思われる標識を頼りに,沢沿
いの道を進む。小沢ではあるが水が出ており,かなり上部まで湧き出ている。

 1時間弱で,稜線を6号橋から登る道と合流する。今つけられたのではないかと思わ
れるほど新しい標識(この行程全てにこの初々しい標識が立つ――行政が立てたとばか
り思っていたが,地元の工業高校が作って立てた物らしい,我が身を多少反省する)が
立てられている。すぐに,展望が利く稜線に出る。ちょうど良いので,1本とる。広葉
樹林帯で葉が落ちているので展望が利くが、春からはかなりうっとうしい状況であろう
ことが想像できる。沢沿いから道のない所を,単独行の男性が登ってくる。声をかけた
が愛想がない。

 すぐ上が「獅子岩」なので,ひと頑張りする。標識どおりに進むと巻いてしまうので,
途中から進路を変える。程なく岩稜帯に着く。戻るように高度を稼ぐと、大きな岩の根
元に出た。足元がえぐられるようになっているが,リッヂ状の所に鉄の階段が付けられ
ており,難なく岩峰に立てる。獅子岩からの眺めは,最高である。360度の展望があり,
多少雲が出始めている谷川方面を除き絶景である。ここを宴席にしたいが,先があるの
で遠慮する。高橋さんが岩の上に進み出て眺めを楽しんでいるが、かなり怖いという,
確かめるべく我々も登ってみると,完全にかぶっている。じっくり覗くとボルトなども
打たれており,ルートを模索した後がある。降りて確かめると,数本のルートが
開かれているようだ。そういえば,途中の分岐で「ロックガーデン方向」となっている
道があったが,この一帯が地元ではトレーニングの場になっているのであろう。

 後は,稜線を双耳峰となっているピークまで目指せばよい。30分強の道のりであるが
アップダウンがあり,なかなか手強い。途中,下山路となる分岐点を見送り進路を急ぐ。
ほとんど登山者とすれ違うことはなかったが,山頂には先程の無愛想な男性と夫婦づれ
らしい壮年2人,ラジオを鳴らしている単独行の老人の4名がいた。記録撮影の後,先
程の分岐まで戻ろうと思ったが,山頂での「宴」も捨てがたい。相談すると、やはり
「山頂の儀」で意見が一致する。すぐに風のない場所を物色し,支度を始める。
運転手を努めた大森氏は、ここまで朝食も食べずに頑張っている(途中で食料を買い損
なった)。ようやく食事にありつけると思ったのか、大森氏の顔にも安堵の色が感じら
れる。

 今回,私が調理した豚肉の薫製を持参したが,高く評価していただいた(黒斑山で橋
元氏から酷評されて以来、研究を重ねたおかげである)。ビールも、汗をかいた体には
心地よくしみ込んでいく。余興で持参した豚汁も,雪が舞っている気温には好評であっ
た。なんと嬉しい方々であろう。汗が引くと,高橋氏持参の美酒と私持参の「安酒」を
堪能し,ワインまでには手が伸びぬまま身体が凍えてきたので,最後に温麺を作って腹
に入れ、下山の準備を急いで出発する。

どういう訳か下山は,高橋氏が先頭。5分ほど下った岩稜帯で,大森氏の悲鳴(私は初
めて聞いた)。気がつくと,ガサガサという音と共に高橋氏に大森さんが覆いかぶさっ
ている。どうやら滑落したらしい。本人は目がクラクラしたと言うが,やはり飲みすぎ
のようである(山頂ではだいぶ早いピッチで酒を所望していた)。理由はともあれ、両氏
とも怪我はないようである。このまま下山する。分岐点の祠で下山を祈り,浅間山と名
づけられたピークを目指し下る。

切れ落ちたように急な下降路を慎重に下ると,左に獅子岩がまさしく獅子の顔のように
見えてくる。展望はなくなるが,自然林に囲まれた道は気持ちがよい。落ち葉のクッシ
ョンを楽しみながら下山する。途中,珍しい家形の石物などもあり、目を楽しませてく
れる。1時間弱で浅間山の頂上に出るが,榛名方面の展望しかなく、あまり魅力は感じ
られない。体力を回復(酔いを冷ま)すべく,休憩をとる。

ここから傾斜はなだらかになり、「炭釜」と言われる地点から左に進路をとって5号橋
へ向かう。要所要所で獅子岩の変化する表情を確認しながら,快適に下降を楽しむ。
コースタイムでは1時間となっているが,30分強で橋に出ることができた。

 帰路では「子持村温泉センター」に立ち寄り,汗を流す。露天風呂はないが300円と
格安な上に,持ち込み可・カラオケ無しの休憩室があるのが嬉しい。考え方によっては、
梓向きではないでしょうか。
 多少の渋滞に巻き込まれるが,一般道を疲れた体に鞭を打ちながら頑張る大森氏に運
転を一任し,ヨッパイライ2名が同乗する。

平成10年12月30日

リーダー:大森・高橋・齋藤
幸手7:00−9:10 5号橋9:20−10:15獅子岩10:40−11:25子持山12:55
−13:45浅間山13:59−5号橋14:40−15:30小持山温泉センター16:10−18:15幸手


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