奥多摩御岳山・大岳山

―― 正月の低山歩き 齋藤 修

1998年1月3日


   リーダー:大森
   参加者:高橋・鈴木・齋藤一家(修・英彦・瑞貴)

  新年より、大森さんから山行の連絡をいただき、躊躇せずお受けすることにした。
  向かう山域は奥多摩御岳山方面、これは我が家のデーブ兄妹も同行させられると思い
  願い出た。こころ良くお受けいただき山行の運びとなる。
 御岳山・大岳山はいつか行ってみようと思っていた山(なんだか最近このような山が
  多いが)だったので、良いチャンスであった。また年末のテレビでも放映されて興味もあ
  った。立川駅8時集合となり、自宅を6時に出る。ホリディパスを購入し乗車する。
  まだ薄暗いが山に行けるとなると気は軽くなる。子供達は前日の夜更かしが多少こた
  えているのか、まだ生気を取り戻していない。明るくなった頃、大宮を過ぎ赤羽で乗
  り換え新宿経由で立川に着く。快速電車が増えたのでとても早く着ける。まして、青
  梅線のホームたるものや変貌している。私のイメージとしては、立川駅の端に茶色い
  電車が到着する、そこへ多少歩くと言う感じだったが、電光掲示まであり10両以上の
  電車が2ホームも止められるようになっている。そんなバカな感傷に浸っていると東
  葛支部の3名が現れた。すると直通電車があると言うことで急遽下車したホームへ戻
  ることになった。この電車は青梅線に入っても快速運転され、拝島・青梅に止まるだ
  けで御嵩駅まで行ってしまう。何という時の流れの早さ(それほど電車ではこの山域
  に最近来ていない)。
 御岳駅ではおおくの人間が下車し、吸い込まれるように臨時バスに乗り込む。しかし、
  詰め込めるだけつめて出発させる方式のようである。ケーブル駅までは、寒いので歩
  いて登ろうという雰囲気が多かったが、人並みに押されていくと里心がつき、券を求
  めていた(我が家の子供達は上機嫌)。このケーブルなかなかの勾配があり、6分で一
  気に高度を稼いでくれる。歩けば1時間というが、なかなかの優れもの。初詣の観光
  客と一緒に御岳神社で参拝する。ここまでの階段登りもケーブルで気を抜いてしまっ
  た体にはなかなかこたえる。
 登りつめた階段を折り返すと、登山道への入り口である。調子が良さそうな高橋・鈴
  木両氏が待っていてくれる。このコース以前来ているのは高橋さんだけなのであてに
  する。整備された道を等高線沿いに御岳神社の山肌を歩き始めると、程なく茶店のあ
  る展望台入り口に出る。ここの広場は、なかなか整備されており、宴会には絶好のロ
  ケーションである。左に見送り先を急ぐと、今度は東葛支部の面々が相談している。
  どうやら、ピークを越えるルートと等高線づたいに逃げる巻き道のどちらを選択する
  かで相談しているらしい。しかし、鈴木さんの足はすでに山頂を目指している。齋藤
  家も追随する。大森・高橋両氏も『多勢に無勢』と観念し、あとを追ってくる。
 先頭が鈴木さんに変わり、異常にペースが速い。我が家のチビも頑張るがアゴを出し
  始めている。そのころ大森氏から『早過ぎるぞ』の雄叫び、一同心を入れ直し、大森
  さんを先頭に出す。やっと普通の登りのペースに戻り、会話も生まれてきた。
 このルートなかなか登りごたえもある。高度を稼ぐがなかなかピークに着けない。ま
  して、昨日降ったのだろうか雪の姿も見られ、足元が滑りやすくなってきている。奥
  の院・鍋割山へと続くが奥の院が見あたらない。疲労感も出てきたが、社があったの
  で休息をとる。よく見ると山頂への標識に「奥の院」の名がある。やはりピークにある
  ようだ。5分ほど登りつめると山頂に石でできた小さな祠があり、1077M峰に着けた。
  休息していると登山者とは明らかに違う人が登って来て、祠にロウソクを灯し、塩を
  積み正座をしだす。見ていると、お経を唱え始める。信者の方だろうが、我々には気
  を止めず整然と進め、終えると降りていった。登山道は、祠の横に着いているが、横
  を通り過ぎる雰囲気ではなかったので、時間調整をする。信者も降りたので、休息を
  やめ先を急ぐ。
 このあたりから、前方に大岳山が豪快に見渡される。結構先は長そうである。大森さ
  んは2時間かかると読んだが、私は1時間と見た。急な下りを終えると地図にはない
  分岐がある。また丁寧に鍋割山の巻き道が用意されている。先程の失敗を繰り返すま
  いと、大森さんの足はすでに巻き道に入っている。我が家の娘も大森さんにぴったり
  とくっついている。どういう訳か、このてのことはすぐ理解するらしい。
 デーブ英も足は向いたが、私の視線に気づいたらしく鈴木さんに促され山頂の道を選
  ぶ。残り4名が鍋割山を踏破し先を進む、合流地点ではさほど差がなく会えた。ここ
  から大岳山の登りまで多少のアップダウンがあり、小ピークをいくつか越す。左から
  整備された巻き道(最初のトラバース)が合流し、快適な道になる。最後の登りを前に
  小休止をとり、大森・高橋両氏提供のミカンをいただく。おいしい。
  大岳山の登りは、急登を覚悟していたが、岩稜の道を多少の勾配で山肌を巻いている。
  足元は凍っていたりしており不安定だが、なかなか高度をかせげない。そうこうして
  いるうちに、前方にドームを屋根に持つモダンな建物が急に出現した。どうやら大岳
  山荘のようである。誰がこんな所に泊まるのであろうかと疑問を持ちつつ見つめる。
  朽ちかけた大岳神社の社務所を横に立つこのデラックスな山荘の思想は何か不思議である。
  ここも良い展望場となっており、体は向かおうとするが山頂を目指して登る。
 北東斜面になっているせいであろうか、道が凍ったりぬかるんでいたりしていて登り
  にくい。しかし、途中ですれ違った夫婦の奥さんが「山頂まで行くと来て良かったと
  思いますよ」と励ましの言葉をかけてくれる。それに続くうだつの上がらないような
  親父が「まだまだ先があって辛いですよ」と戦意を奪うような暴言を浴びせる。きっと
  この夫婦仲も長くは続かないだろうと勝手に判断させていただき登りを続ける。
  分岐から15分ほどで、山頂に着けた。予想通り360度の展望が得られるが、特に富士
  山の眺めが雄大ですばらしい。山頂は広く気持ちがよいが、凍結のためぬかるんでお
  り、良い場所が確保できない。やむなく多少下った所の落ち葉の上を占領する。早速
  宴会である(基本的にそう思っていたのは私だけのようであったが)。シートを広げお
  酒・ビール・ワインを出し、つまみの用意をする。天気はよいが、気温が上がってい
  ないのでビールも飲み頃のようである。合わせるとビール9本・日本酒1g・ワイン
  1本になっていた。やはり宴会になっていく。今回は私が作った豚肉の温薫製を持参
  したが、快く食べていただき、喜んだ。気温が低いので、酒を燗にし飲み出す。こう
  なると高橋さんが、生き生きとしてくる。みなさん持参のものを出し合い、コンロで
  暖めたり、焼いたりすると結構豪華な宴席となった。酒も飲まないデーブ兄妹が宴席
  の中央を陣取り、つまみを物色しているのが不気味である。しかし、この2人お腹が
  満たされてくると、近辺の雪で遊び始めたので広々となる。酔いと共に下山路が心配
  になり、相談するがなかなかまとまらない。大岳山の登りもそうであるが、地図を熟
  知していればなんともないことが、動物的感と経験のみに頼る姿勢が一層問題を複雑
  にしている。私の「つづら岩を見てみたい」の一言で、最短距離でもあり一件落着と
  なる。
 日本酒がなくなるとともに、下山の準備が始まる。やや雲もでてきて、展望にも陰り
  が出始めている。登ってきた道は滑りやすいとの大森さんの判断で鋸山方面に迂回す
  るルートをとる。最適の判断で、急ではあるが乾いている。我が家のメンバーにはあ
  りがたい。しかし、かなり下らないと分岐がない。こういう場合も、全く地図を見な
  い鈴木さんが分岐を通り越したと主張する。高橋さんも私も勝手なことを言うが大森
  さんは一向に動じない。10分ほど降りると分岐があり、曲がり返すようななだらかな
  道になる。ここからは快適な勾配が確保された道を降りるようになる。再び10分程で、
  大岳神社からの道と合流する。このあたりで大岳山の登山道の全容が理解できる。
 そのまま富士見台をめざし下山する。なだらかな道が続きなかなか気持ちがよい。こ
  の山域は、富士山が見られなお一層歩きやすい。白倉への道を見送り先へ進む、さら
  に行くと大岳鍾乳洞方面へ降りる道を見送り、程なく右前方に富士山が見渡せる(あ
  まり快適とはいえない)富士見台につく。ここから少し降りたところのベンチの方が
  ゆったりと眺められる(このベンチ、コの字状にできており宴会には最適である−ど
  うも最近すぐ宴会場に結びつけてしまう発想が多い)。
 稜線づたいに進むとすぐに「つづら岩」の岩稜がでて来る。ここまで来るまで私は、来
  たことがないような気がしていたが、どうも岩肌に覚えがある。取り付き付近を、登
  山道が巻いており、千石への分岐点で休息をとる。たいして歩いていないように思え
  るが、年末年始の不摂生であろうか、皆ある程度は疲れているようである。子供達は
  ペースをつかみ始めたろうのだろうか、快適な顔をしている。
 この一帯は「関東ふれあいの道」に指定されているせいもあり、整備された下山路が
  準備されている。しかし、天狗の瀧上部で地図にない道が分岐しており多少戸惑う感
  がある。どちらを選んでもさほど差はないようである。天狗の瀧は、水量は少ないな
  がら20数M落ちており美しい。このあたりで岩登りをしていた頃テントを張っていた
  ようだが、何となく思い出してきた。とにかく物忘れが多くなってきているのを実感
  する年齢になってきている。
 沢沿いの道が開けると林道になり、程なく千足につく。曲がり角に酒屋があれば・・・
  と思い曲がるとやっぱりあった。やはり、以前何度か来ている。完全に、思い出して
  きた。今回は、自分の軌跡が発見できたような喜びも味わえたようだ。
 正月の山も考えてみれば、スキーを優先し、最近していなかったような気がする。こ
  の晴天に恵まれた気持ちよい山行を、今年の実り多き山登りの出発にしたいと思い帰
  路に就いた。

東鷲宮6:09−7:00新宿7:16−7:50立川8:11−御嵩9:00−9:15滝本9:25−9:31御岳平9:40
−御岳神社10:10−展望台入口10:20−11:00奥の院11:15−鍋割山−12:00大岳山荘
−12:15大岳山13:30−13:45分岐−14:20富士見台−14:40つづら岩14:55
−16:15千石16:26−(バス)−16:50五日市17:09−17:29拝島17:40−18:31川越18:34
−大宮−19:15

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