大持山・小持山・武甲山

―― 少し欲張った奥武蔵山行 齋藤 修

1997年11月24日


  天気が良さそうなので、目が覚めた。外を見ると満点の星空、家族を起こさないよう
  に支度をし、始発電車で出かける。奥武蔵方面は、この時間がすべて乗り継ぎが、う
  まくいく。
 東飯能から、名郷行きの始発バスに乗る。なんと、爺婆で満席。1席みつけ座ったが、
  とんでもない爺の隣。またを広げ肩を怒らせ、2人掛けの椅子を2人で座る意識がな
  い。喧嘩してもしょうがないので、別な席が空くまで我慢し、移動した。半分ほどは、
 「棒ノ折山」に行くのだろう河又で降りた。終点の名郷には、1時間足らずで着けた。
  古いけど小綺麗なトイレがあったので、用を足し、身繕いをして出発した。
 林道を登るがきれいが渓流が右側を流れておりなかなか気持ちがよい。よく見ると、
  魚も泳いでいる。民宿の看板があるところが、武川山の分岐となり民家もなくなり、
  気持ちよく歩ける。しばらくすると川沿いに「大鳩園」となっているキャンプ場がある。
  民間にしては、快適そうなレイアウトをしている。妻坂峠への林道の分岐を過ぎると、
  渓流沿いの快適な道になる。こんな上流にもと思われる所に白岩キャンプ場がある。
  ここもなかなか気持ちよさそうである。この辺は自然との調和を考えているようだ。
  しだいに埃っぽくなってくると採石場が見え、いまいまでのイメージを覆す。登山者
  は、迂回路の狭い道を石灰岩の粉を浴びながら登らされる。子供の見学コースにはよ
  いと思うが、不快な道である。
 しばらく登ると、従業員の宿舎跡のような所を通る。無人の家(小屋)は何か不気味な
  感がする。ここで、先行するグループを数名追い抜く。ここから、右上方に採石場が
  見える。がれた岩場が痛々しい。ここから植林帯の中の登りとなっている。踏み跡は
  弱いが、歩きやすい勾配と、蛇行路がつくられている。ブルドーザーの音が鳥の声を
  殺しているが、山を巻くに連れて静かになる。昨日までの雨のせいか、小沢に水がわ
  きでている。1時間ほどで「鳥頭峠」に出る。
 秩父から妙義にかけての展望があり、日当たりもよく気持ちがよい。落葉の時期がよ
  いと思うが、春はクチナシの花が多いらしい。ここから1059Mのピークをめざし急登
  となるが、奧武蔵側の展望も開け気持ちがよい(しかし眼下ではブルトーザーが騒音
  を出している)。ピークは、立入禁止となっいる。ここも武甲山と同じような運命を
  たどるようだ。多少のアップダウンを繰り返していると、気持ちの良い稜線歩きが待
  っていた。落ち葉を踏みながら、枯れ枝越しに展望が得られる。どこでも休憩・宴会
  ができそうである。しばらく行くと平らなところがあり、ここが「ウノタワ」という
  湿原帯のようだが、草が生え面影はない。名郷に降りる道もあるが、踏み跡が不明瞭
  である。そういえばこのコース全域に渡り、標識が少ない。うっかりすると脇道に導
  かれる。
 ウノタワから伐採道を登ると横倉山への登りとなる。やや細くなった稜線になるが、
  高度が高くなったせいか、展望は得られる。やはり落葉の時期が良いと思う。夏場だ
  と緑の中を歩くようである。やや登山道に岩が多くなるが気持ちがよい。頂上付近に
  は、ブナ・どういう訳か白樺が2本はえている。少し下ると、右から細い道が入って
  くる。どうやら妻坂峠からの道のようである。快適に飛ばしたせいか、この山域はわ
  たしが先行していて誰とも会わない。
 稜線の状態が、細くなり岩混じりの登りとなる。分岐から10分ほどで大持山に着け
  る。ガイドブックには展望がないとなっているものが多いが、落葉のせいかなかなか
  の眺めが得られる。私の好きな「富士山」も奧秩父の山から体半分を出している。こ
  の山域で富士が見えるのは、ここだけのようだ。少しお腹が空いたので、腹ごしらえ
  をする。ビールにも手が触れたが、武甲山の登りが見えるので我慢した。貸し切りの
  頂上で10分ほど休み小持岳へ向かう。距離はないが、岩が混じる稜線を上下する。最
  後のピークがやや高くなっており、標識はないが、小持山のようである。妙義方面の
  展望がよい。先日登った両神山の姿が明快に確認できる。ここから見える武甲山は美
  しい。
 少し眺めたあと、武甲山に登るため下る。だだ単に下る道が続く。落ち葉が多くうっ
  かりすると木の根で滑る。途中、早朝立ちの武甲山経由の人たちであろうか何人かと
  すれ違う。時々まわりを見ると武川山越しに伊豆が岳も見えるし秩父の街も眺められ
  る。シラジクボという鞍部に出るが、分岐があるだけでなんとも無いところである。
  ここからいよいよ武甲山への登りが始まる。山容のためかそうきつくない登りである。
  20分ほどで、金明水という分岐に出る。なかなかこの辺も眺めが得られ、日当たりも
  よく快適である。5分ほどで御嵩神社の社につき、柵越しに武甲山山頂に行ける。う
  わさには聞いていたが、とんでもない山に変貌しつつある。とても山頂で休憩する雰
  囲気ではないので、先程の金明水付近まで下り、奥秩父・奥多摩の山を見ながらビー
  ルをあける。のんびりしているとでかい声を出しながらおばさん2人組が降りてきた。
  2人きりで来ているのに山中にとどろきわたっている。バカがつくほどでかい声。そ
  のうえ「展望が悪いから樹木を切った方が良い」などと吠え始める。わたしの近くで
  休憩しようとしたので、さすがにうるさいから下へ行けとアドバイスしてあげた。
 そのあと30人ほどの団体が、わたしの聖域を崩し始めたので下山することにした。裏
  参道になるのであろうか、秩父線裏山口駅をめざし降りる。途中爆破による避難小屋
  を何軒かみながら樹林帯を降りる(しかしこの小屋朽ち始めており避難した方があぶ
  なそうである)。途中なだらかな所があり、武甲山の採掘場が横に見える。このあた
  りが、長者屋敷ノ頭なのだろうが、標識もないので分からぬまま通過する。植林帯の
  急な下りに変わり、どんどん高度を下げていく。しだいに沢音が近づき、沢沿いの道
  に変わる。この道はなかなか快適で、清流の流れと共に快適に下れる。しばらくする
  と林道になるがここまで、車が入れるようだ。ここから歩きやすい道になるが、少し
  早ければ、紅葉が美しい所であろう。
 天候に恵まれたせいか13時前には、裏山口駅に着けた。帰り西武線に乗り換えたのが
  凶と出たか、八高線のひと駅のために53分待ち・高麗川で15分待ちと十分ローカル線
  の情緒(ホームの日当たりの良いところでつまみを食べワインを飲む)を楽しみながら
  の帰宅となった。

東鷲宮5:36−大宮6:05−川越6:29−6:55東飯能7:12−(バス)
−8:00名郷8:10−9:05鳥頭峠9:15−10:10大持山10:40
−小持山10:55−武甲山11:15−11:20分岐点11:45
−12:55裏登山口駅13:08−13:18お花畑・西武秩父13:27
−14:10東飯能(時間待ち55分)14:56−川越−大宮−東鷲宮16:30

次の作品へ ↓
目次へ ↑


inserted by FC2 system