秩父伊豆ヶ岳 ―― 久々の単独行 齋藤 修

1997年11月11日


平成9年11月11日(火)  単独行
 ここ数回の山は、子連れだったり・家族旅行だったりと一人で登っていなかったよう
  な気がする。このところの天候の良さに体がうずき、秩父の山域に入る決心をした。

  埼玉に引っ越してきたのも、気軽に秩父方面へいけるであろうと言う目論見があった
  のだが、5年を経た今日までなかなか実現できないでいた。
 我が家を6時過ぎに出発し、大宮で川越線に乗り継ぎ、川越から最近電化され便利に
  なった八高線乗り入れの電車に乗る。乗車時間は短いのだが、単線のため速度はでず、
  待ち合わせが多い。東飯能についたのは、8時近くになっていた。ここから西武秩父
  線に乗り継ぐ。車両もよく速度もあるが、西武独特の「特急優先」運行のため各駅で車
  両待ちを行う。そのため正丸駅に着いたのは、9時近くになっていた。

  身支度を整え、駅横の階段を下り、車道をしばらく登る。このあたりは静かな山村を
  成しており、非常にのどかな雰囲気を与えてくれる。大蔵山という名の集落のせいか
  各家が蔵を持ち家構えもしっかりとしている。道沿いに流れる小川も非常にきれいで
  快適な出発である。このまま登ると正丸峠まで続いている林道と分かれ、途中から「伊
  豆ヶ岳」の標識のある登山道を選び登山道に入る。この道は非常に整備され気楽に登れ
  る。『関東ふれあいの道』に指定されている為であろうか標識も多い。
 水の流れを左に見ながら、植林された中を登る。途中から、名栗少年自然の家へ向か
  う道を右に送ると、急登の道になる。樹林帯の中を分けるように登る。気づくと水の
  流れもなくなっている。高度を稼ぐと、やや左に折れる。このあたりから登ってきた
  正丸方面の山が確認でき、紅葉が美しい。やや土が露出した斜面を登りきると稜線に
  つける。ここからは、正丸峠も見渡せる。西武が観光の為につくったコテージが緑の
  中にひときわ目立っている。丁度紅葉も時期になっており美しい。
 再び快適な道になる。自然林が残され、紅葉の中を北側を眺めながら登れる。林業が
  盛んなせいか、各山頂近くまで、植林が施され自然林が、帽子のように着いている。
  山容が、緑に押されながら、頂上付近のみが紅葉している。まさに人工的につくられ
  てしまった観がある。植林帯を抜け20分ほど登ると正丸峠からの道と合流する。ここ
  には、ゲートボールができるような日当たりの良い広場があり大宴会ができそうであ
  る。
 少し降りると、伊豆ヶ岳名「男坂・(鎖場)」がでて来る。正丸駅には「落石が多いた
  め男坂は閉鎖」とあったが、特に制止する強い標識もないため。躊躇せず直登する事
  にした。100メートルほどの岩場だが、なかなかしっかりしている。その上りっぱな
  鎖がふんだんに付けられているので安心である(駅の標識は行政の責任回避であろう)。
  快適に登らせていただく。高度を一気に稼げる楽しみと遠望が開けてくるので楽しい
  場所である。ところが、終わりのところで思わずびっくりした。60前後のおじさんが
  顔を急に出してくる。思わず「アッ」と声をあげてしまった。そのうえ愛想のない親
  父で挨拶をしても何も返してこない。細かいことには気にせず、終了点での眺めを満
  喫し山頂をめざす。
 岩の中をよけながら歩く、少し下降し登り返すと頂上のような所に出るが違うらしい。
  また少し下ると女坂が右から入ってくる(この山は技術さえ有れば、「男坂」を登る方が
  数段魅力的である)。この登りを終えると頂上のようである。手前には開けた広場(こ
  こなど日だまり山行の宴席には最高である)があり、前方に岩がある頂上が見えた。
  2グループ5人ほどが休憩をとっていた。9時50分まだまだ始まったばかりだが、ロ
  ング缶の栓を開けている。子供の弁当の残りのおかずを妻が容器に入れてくれたので、
  つまみもある。360度の展望が得られる気持ちの良いところである。地図で周辺の山を
  確認しながら、小春日和の山頂を満喫した。
 ここから下降が中心と思っていたが、進路を見ると結構ゴツゴツしている。伊豆ヶ岳
  からは、急降となりしばらく降りる(世の常識で降りれば登る)。案の定、古御岳の登
  りは結構登りがいがある。酔っているからだにはこたえる。先程飲んだビールが汗と
  なってでて来る、もったいない。山頂はベンチなどもあるが、展望はない。この先も
  そうだが、この山稜は忠実にピークを踏むように付けられているようだ。
 下降は続くが、整備された道なのでスピードは稼げる。体調も戻ってきたようで、意
  外と良いペースで歩ける。15分ほどで、高畑山を越える。このあたりから、伊豆ヶ岳
  ・古御岳が眺められ山容が美しい。中ノ沢ノ頭は確認することができぬまま通過し、
  天目指峠に着く。林道が開発されたせいで、登山道はいったん下ろされ登り返すおき
  まりのパターンになっていた。休憩所などもあり、樹木はきれいなところである(無駄
  な行動をさせるハイカーへの配慮であろうか?整備されている)。
 舗装された林道を横断すると、再び登りが始まる。急ではないが、展望が右側(名栗側)
  にしか得られず単調な道になる。しかし、日差しを受けるので温かい(今日は暑いくら
  い)登りが楽しめる。片側が伐採された道を進むと植林帯に導かれる。一層展望の無く
  なった道を子の権現をめざして歩く。鐘の音が近づくと分岐があり、子の権現へ向うこ
  とができる。せっかく来たのだからお参り(見学)していくことにした。なかなかりっぱ
  な構えをしており、おおくの檀家を抱えているようである。聞くところによれば、足腰
  の神様のようである。境内には、草鞋がまつられており、その雰囲気は感じる。一応拝
  見したので、今きた道を戻り竹寺へ向かう。地図上でも、あまり特徴のない雰囲気は読
  めるが、多少の凸凹を繰り返し、植林された樹林帯を進む。踏み跡は細いが道は整備さ
  れており、歩きやすい。植林帯を巻くように道が付けられており、一層歩きやすい。伐
  採された箇所を通過し、しばらくすると道が分岐する。ここから竹寺方面への下降とな
  る。標識では5分となっていたが、結構かかる。
 竹寺は、山間に設けられているが地形にマッチして素朴な構えをしている。この地域で
  は精進料理のおいしい寺として一目置かれているらしい。駐車場ではバスの姿もある。
  ちょうど講堂では精進料理を食しているのか、坊さんの大きな解説の声が響いていた。
  規模もほどほどにあり、美しいところではある。休憩して名栗の方へ下ろうと思ったが、
  このしたの集落にも定期バスが来ていることに気づく。寺で時刻を確認すると、あと30
  分で出発時間。コースタイムでは40分、多少の不安はあるが、ジョギングでスタートす
  る。程良い傾斜があり、早さは稼げる。
 沢沿いの道を頑張って降りると、意外にも15分で「中沢」のバス停に着けた。待合い等も
  あり、整備されたところである。休憩そこそこに、持参のワインで喉を潤す。途中東飯
  能を経由するというので、東飯能で下車しおみやげに名物の「酒蒸し饅頭」を購入する。
  八高線でビールを飲みながらのこりのつまみをだし帰路に着く。
 何か非常に充実した気持ちにさせてくれた1日であった。

自宅6:19−6:45大宮6:54−7:18川越7:20−7:55東飯能8:12−正丸8:45−分岐9:00
−男坂9:40−9:50伊豆ヶ岳10:15−古御岳10:30−高畑山−天目指峠11:35
−子の権現11:50−竹寺12:30−12:45中沢13:00−(バス)東飯能13:35−13:45東飯能
−(JR)−高麗川−川越−大宮−東鷲宮15:00−自宅15:10

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