平標山山行 ―― 親しい梓の仲間を求めて 齋藤 修

1997年8月9日−10日


   参加者
  齋藤 修・齋藤 英彦・齋藤 瑞貴
  梓の夏期合宿が変更となり、週末を利用した「平標山山行」のニュースが流れたので、
  便乗させていただくことにした。土曜日が都合がつかなかったが、予定が空いたので
  子連れで飛び入り参加することにした。台風等の接近で心配した天候が快方しそうな
  事と、我が家の気まぐれ子なども達の体調が良い方に向かったので、決行することに
  した。
 どうせ行くなら、天幕場で驚かしてあげようと思い、齋藤家だけ別行動をとることに
  した。6時30分に自宅をでて快調に国道を走り、本庄児玉から高速道路に乗った。こ
  の辺りから我が愛車の車内が、冷えなくなってきた。冷房の故障である。この極暑の
  中、暖房車となり窓を開けながらの100km走行になる。サービスエリアで見てもらう
  が、修理できないという(何のためのドライブエリアなのだろうか)。
 しかたなく月夜野までがんばり、下りるが、一層修理が可能なようなガソリンスタン
  ドなどない(4店ほど立ち寄るが、給油のみしかできない)。運良く新治村で整備工場
  を発見し、直してもらう。ヒューズが切れているということで、取り替えると冷えは
  じめた。気持ちを取り直して、三国への坂を上ると10分ほどでまた利かなくなる、こ
  こから戻るのも面倒くさいので、続行することにした(なにやらいやな予感がしてき
  た)。
 いろいろ立ち寄っていたので、三国峠の出発が10時になってしまった。久しぶりに重
  い荷物を背負い、三国峠へ登りはじめる。英彦はある程度担げるが、瑞貴はシュラフ
  と着替えしか入っていないザックを持て余している。先が思いやられる。峠までの道
  は蛇行して沢沿いに作られており、歩きやすい。枝沢が入っていて、水も補給できる。
  峠には三国権現があり、休憩所を兼ねている。
 天気は良いが、程良い涼しい風が吹いており、ほっとする。稜線をわけて、視界が広
  がっているので気持ちがよいが、思いのほか急である。照りつける暑さと急登で、瑞
  貴は完全に音をあげはじめている。どうにかなだめながら、登らせる。彼女ながら梓
  の方々との再会を楽しみにしているようである(後で聞いたのだが、テントでの生活
  では、大森さんがおいしい刺身を必ず持ってくるものだと信じていたようだ「きちん
  と間違いは、英彦とともに否定しておいた」)。
 日帰りで、三国山まで来るハイカーが多いらしく、多くの人と行き交う。山頂には、
  10数名のグループと2家族がいた。場所を見つけ、疲れを癒しながら昼食をとる。落
  ち着いてのんびりしていると、南方以外が展望できたので、山の名前を子供たちに教
  えていた。どういう訳か、周りに人が集まってきていっしょに聞いている。しまいに
  は、何人かの人が質問まで投げかけてくる。たしか野外活動の講師はやめたつもりで
  あるが、ここでもいらぬ指導をしてしまった。花の名前でなくて良かったと思いつつ
  多少うれしい気にもなった。しかし、我が家の子供は全く興味がないらしい。
 三国山から大源太山までは、「多少の起伏を繰り返し2時間程度」と地図にあるので、
  気楽な気持ちで望む。進路が分かるところまで来ると、なかなかなの凹凸が確認でき
  る。なにやら気が重くなる。また、12時を過ぎた頃から、暑さが増し背後から熱射が
  照りつける。子供たちは暑さとアップダウンの消耗で、水を飲み早くも持参した水と
  飲み物が底をつき始めている。私も、安心して飲んだビールがこたえてきたのか、足
  取りが重くなりパワーがでない。所々の日陰を見つけ30分ペースでの休憩をとりなが
  ら、どうやら大源太山への分岐までたどり着く。いきたいのは、山々(やまや)だが、
  3人とも結構ばて気味で、相談するまでもなく通過する。
 樹林部をすぎると、小屋のある鞍部が確認できる。しかし、まだ多少の登りが残って
  いる。完全に瑞貴は、戦意を失いつつある。梓の人たちに負けてはなるまいと、英彦
  を先行させる。小屋が間近に見え始めると瑞貴の足が速まり、大森さんに似ている人
  が天幕の近くにいるという。躊躇せず声をかけるが、人違い。がっかりするや安心
  (どうにか先行できた)するやで複雑な気分。水を心配したが、小屋の裏側で水道から
  滾々とわき出ている。なんたる幸せ。合流までビールを我慢し、冷たい水を飲む。今
  回は、子供達も水のありがたさがわかったようである。
 驚かしついでに、差し入れとして、保冷材を入れ完全に保温状態にしたビール8本・
  赤ワイン1本・焼き豚・チャーシューを持参している。私が、冷やした状態のビール
  を完全に持ち上げるなどというのは初めてのことである。多少は会員としての自覚が
  でてきているようである。
 元橋からの登路を見ているが、15時になってもこない。道路の渋滞も考えられ、16時
  までは来るだろうと思い標識の下で待つ。何度か地図を確認し、トラブルか計画の変
  更だと思い、17時なったのであきらめる。冷やしてきたビールをあけてみるとまだ激
  冷や状態。差し上げられなかったことを残念に思いながら、どうやって明日までこの
  ビールを飲むか考え始める。
 天候は、なかなかよい方に向かったようで、全山が快適に見渡せている。しかたなく、
  瑞貴の好物のウインナーソーセージをつまみながら家族水入らずの夕食となる。時間
  があるので、子供達に野菜類を切らせるが、なかなか上達してきている。親バカなが
  ら、元気に作業している子供達を楽しく見ながらこの日2本目(あと6本)のビールに
  手がのびる。まだまだ冷えている。 18時になってもまだ明るい。具だくさんの「焼
  きうどん」をつくり食べる。暗くなる前に、眠たくなったというので天幕の中へはい
  る。満腹になったせいか、子供たちは寝相は悪いがすぐに寝始める。明日の天気を気
  にして、外を見ると満天の星空である。安心したついでに、ビールをもう一本飲む。
  やかましくなってきたなあと思い目を覚ますと、子供たちが天体観察に励んでいる。
  ひと寝入りして、遊びはじめたらしい。だが楽しそうである。その後、とんでもない
  寝方をする子供たちにたびたび起こされながら、4時頃目が覚める。
 久しぶりの、山の上での朝である。谷川岳に邪魔されご来光は拝めないが、快晴の中
  明るくなる山々は美しい。この天場は、仙ノ倉山・平標山に囲まれ気持ちの良い緑が
  見られ、水も確保できなかなかである。天候に感謝する。
 夜遊びのせいか子供たちが起きたのは、7時少し前である。朝食の準備は、できてい
  るので、チャンポンめんを急いで作り食べる。早々に準備をし、大森氏の計画通り仙
  ノ倉山を目指し出発する。なかなかの急登に瑞貴があの手この手で抵抗するが、だま
  しながら進む。植物は多少遅いのが、あまり咲いていない。途中からいやに整備され
  た登山道となり、急な木製階段の連続となる。歩きにくいが自然保護のためにはこの
  方がよいのだろうか。ひと登りして終わりかと思うと、まだ先に登りがある。もうひ
  とがんばりである。9時に山頂に着くが、なかなかの展望である。これ以上の進路は、
  お供のレディがいうことを聞きそうもないので、あきらめのんびりと山頂で過ごす。
  またビール1本を飲む。早朝の行動をとる人が多く、山頂は比較的静かである。トン
  ボ取りに励む二人を見ながら、360度の展望を楽しむ。あれだけくたびれた顔をして
  いた瑞貴が、下りは走って下りている。なかなかの芸人のようだ。時々木製階段で寄
  り添いながら座り、眺めを楽しんでいる。程なく、天幕場に戻る。
 撤収を急ぎ、下山をはじめたのは10時を少し過ぎた頃である。なにやら団体の老人た
  ちが次々と登ってくる。騒がしくなってきたのでちょうど良い頃であった。しかしこ
  の団体、途中にも何人かおり、すれ違う。かなりの年齢のひと・疲れている人が混じ
  っていた。将来の「梓」の姿であろうか。いやそうはなるまい。酒を飲んでいる人は
  いなかった。この下り、ガイドの通り展望はないが、なかなかの自然林の中を歩かし
  てくれる。下っているせいもあるのだが、結構気持ちがよい。林道に出ると、自動車
  が2台止まっていた。どこにも、勝手なものがいるものだ(確か去年からゲートは元
  橋まで下がっているはずだが)。
 ひとまず安心して林道歩きを始める。案の定単調な歩きが嫌いなお嬢様が、文句を言
  い始めた。このルートを登りに使わなくて良かったと改めて感じるときである。旧ゲ
  ートの近くで休息をとる。さらに、少し進むと支流が流れ込み水が飲めるようになっ
  ていた。ここが水がとりやすく整備されてあり、登りの際もこの場所がよいようであ
  る。程なく、豪華な建て売り別荘が建ち並ぶ所を過ぎ、元橋へ着いた。私たちはバス
  を利用する関係で、三国小学校前のバス停で待つことにしたが、バスは50分ほど後し
  かこない。車社会が、バスの便まで減らしているのを実感する。タクシーの電話番号
  が、バス停に書いてあるので苗場の営業所へ電話するが、夏の期間中は、タクシーは
  1台もない(?)という理由で(湯沢からの料金でよいのなら手配する−当然ばかば
  かしいのでやめる)断られる。
 炎天下の中、冷たい目で3人を見ていくマイカーを後目にバスを待つ。バスが来たの
  で乗り込み浅貝まで行く(しっかり荷物料までとる徹底ぶりには感心させられた)。浅
  貝からは、車をとるために歩きとなる。さっきまではいっしょに歩くとうれしいこと
  を言っていた子供たちは、店舗を見ると急に里心が着き、「荷物を見ているから急い
  でいって来て」という。しょうがなく、とぼとぼと歩き出す。30分程度で駐車場に着
  き、暖房車を浅貝まで走らせ合流する。
 天候に恵まれ、無事に済むことができた。天候に感謝したい。帰路は、新治村の村営
  施設の温泉に寄り、冷房の利かない車の窓を開けがんばる。この温泉入浴料が500円
  と安い割には、露天風呂・サウナ・休憩室まで完備しており、なかなか利用価値があ
  りそうである。なにはともあれ、汗を落としすっきりして、帰路につくことができた。
 高速道路は渋滞していたが、一般道も駆使して2時間30分で幸手に着くことができた。

8月9日(土)
  幸手市6:40−本庄児玉8:00−三国峠10:00−11:20三国山12:00−大源太山分岐13:40
  −平標山山の家14:40 幕営・宿泊
8月10日(日)
  山の家8:00−平標山8:55  9:15−(テント撤収荷造り)山の家10:00−林道分岐11:15
  −元橋12:25 13:28−(バス)−13:45浅貝(三国峠車を取りに)14:30
  −15:00新治村温泉15:40−新治村16:00−幸手18:30
追伸
  どうもうちの子供たちは、「橋元」と「元橋」を混同しているらしい。

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