武尊山 ―― 行きそびれていたあこがれの山 齋藤 修

96年8月23日〜24日


            参加者: リーダー:大森 武志・後藤 文明
  以前より、行きそびれていた山に「武尊山」がある。大森氏に同伴を以前よりお願いし
  ていたが、電話があり実現の運びとなる。最近他力本願の要素の強い私の山行きであ
  り、願ってもない電話であった。
  当日朝まで、参加者を募集したが連絡があったのは、後藤氏のみだったようで3人の
  参加となる。しかし、天候がはっきりせず出発間際まで大森氏の判断を仰ぐことにす
  る。23日午後からは、関東平野は穏やかな薄曇りでありさほど崩れる様子が感じら
  れない。夜半過ぎに前線が通過翌日は回復と良い方に判断し、出発を決定する。
  コースはいろいろとれる山である、川場方面のルートに興味を持つが、大森氏と相談
  した結果、ルートがしっかりしており、周遊コースがとれ楽しめそうな武尊神社から
  の入山にした。
 19時半に南浦和に集合の予定なので、暇にまかせてのんびりと準備をしていると、わ
  が家のギャングが私が山に行くのに感づき、やにつきまとってくる。なにかいやな予
  感。自分も準備を始め着替えまで済ませいる、すっかりいっしょに行く気になってい
  る。まあ後藤氏も子供は嫌いではなさそうなので、迷惑を顧みず便乗させることにし
  た。ともあれよけいな荷物が増え早めの食事をした後、南浦和へ向かった。
  駅にはちょうどに着いたが、大森氏は到着しており待っていてくれた。程なく後藤氏
  が到着し、すぐにスタートすることができた。いつもの通りのみちをいつものように
  酒屋に立ち寄り、所沢から関越道に入った。高速道を快調に飛ばし、武尊神社の駐車
  場には、10時半には着いていた。今夜の雨に備え、テント場を物色するが、絶対的な
  候補地が見あたらない。舗装の上はダメだという長老の声を無視し、宴会としての平
  らな場を優先し駐車場内にテントを張る。昔なつかしい、ダンロップの小型テント2
  張りはるが、宴会には大人3人は窮屈であった(最近豪華な快適なテントになれてし
  まっている人には、どうも天井高がなく圧迫感がある)。大型のテントにしようかと
  出発間際まで迷っていただけに悔やまれる。
 しかしこのテント、設営は全く時間がかからず30分ですべての行動が終え宴席が始ま
  った。日帰りも簡単でよいが、なんと言ってもこの夜中のくつろぎが楽しい。まして、
  大森氏がいれば、おいしいネタの刺身が食べれ、後藤氏がいれば話題には事欠かない。
  さすが、豪快に切った刺身は実においしい。運転・調理とすべてをこなす大森氏の疲
  労とは裏腹に、我々は元気である。わが家のチビも起きており、ジュースで刺身をペ
  ロペロたべている。宴会の盛り上がりに反して雨が降りだした。次第に予測はしてい
  たものの強くなってきた。マット類が濡れ始めその下をアスファルトの路面を伝って
  雨が流れているのを感じられる。だからダメだと言ったと長老の雄叫びがある。
  しかし、酔っぱらっているので気にしていない。12時をすぎると、齋藤家のチビが寝
  るために別のテントに移ったので本格的にはじまるかと思いきや大森氏は準備・運転
  の疲れからうつろな状態、後藤氏もビールを飲む勢いが衰え始めた(雨で外に出て用
  を足すのが面倒くさいこともある)。まもなく、明日の行動を気にしながら寝床には
  いる。予報通り雨足は強まり、テントを打つ雨音は激しい。3時には通過するという
  予報を信じウトウトする。4時半頃目を覚ますとまだ強くふっている。なにか重い感
  じになる。わが家はシートのおかげで乾いた状態で寝れたが、大森・後藤氏は、だい
  ぶ湿っていたようである。
  朝起きると大森氏は、着替えるほど濡れていた。5時頃から小降りになり、6時には
  いったんあがっていたが、7時前後よりまた降り始めた。この辺で一同登る雰囲気が
  感じられなくなる。
 とりあえず「裏見(天候への怨み)の滝」の周遊コースを歩いて食事にしようと言う案
  にのり、散策とする。なかなか豪快な滝で遊歩道が階段状に整備されており、秋口に
  は紅葉で美しそうなロケーションである。  
  ゆっくりと朝食を作り、豪華なカニ雑炊を食べると、リーダーからこのルートは中止
  とし別ルート(田代湿原)からいけるところまで登り、温泉へ向かうという提案があ
  り、即時決定する。そうなると気楽なもの、後藤氏・齋藤は朝のビールを追加でのみ
  リラックスタイムとなる。わが家のチビのために配慮いただけたのかと思うと多少心
  苦しく感じたが、受け入れさせていただくことにした。何も知らないチビだけがいつ
  登るのかと準備をしている。今後のこともあるので補足しておくとこのチビ(齋藤瑞
  貴−齋藤家の長女)、皆様ご存じの“デーブ英”にくらべ身軽であり、なかなかのパ
  ワーを持っている。きげんをそこねなければ(何せお天気や)どんなところも快適に
  登るチビである。ついでに加えておくが、この娘母親に似て気が強く、チビと言われ
  るのが最も嫌なようである。
  撤収後湯の小屋温泉をへて、「奥利根ゆけむり街道(県道水上・沼田線)」を照葉峡
  と言われる渓谷を眺めながら、群馬県自然の森へ向かう。ここもテント場になってお
  り、自然の中で整備されなかなかの場である。昨夜の天候のせいもあるが、利用者が
  少ない。遊歩道も整備されており、我々は「森林浴の道」を湿原まで進むことにする。
  バカにしていると途中からかなりの急登となる。掲示板で確認すると多少ルートを間
  違ったようであり、「ささやきの道」に入っていたらしい。林道をまたぐと快適な森
  林浴を満喫できる遊歩道が湿原まで続いた。多くの樹木やきのこが生育しており、紅
  葉時にはすばらしい状態になることと思われる。田代湿原と言っても、あまり魅力を
  感じる湿原ではなく、もう盛りをすぎた人間のような半湿原の場となっている。樹林
  帯の中ベンチがおかれているのでほっとできる場である。ここで終わりにしようと言
  う後藤氏の申し出を、まだ歩き足らないと言う理由で却下した。避難小屋のある高山
  平(1758M)までがんばっておいしいビールにする方向で歩き出す。しかし、快適な
  道であるが同じような樹林帯の中を歩くにも息苦しさを感じていた。その頃、道が昨
  夜の雨であろうか池状になっているところがあり、越えにくい場所にさしかかる。先
  頭の大森氏も躊躇する。すかさず、逆戻りをする意見が採用され、12時に頂上という
  最近の梓のルールに従うことにした。時間調節のため、田代湿原の遊歩道を歩くが、
  ただ廻されるだけで湿原との接触はまったくなく、つまらない道である。
 ちょうど12時に先ほどのベンチに着いたので、ビールの宴となる。1人1本の冷えた
  ビールを大切に飲み干す。私と後藤氏は、ワインにも手を出し酔いが深まっている。
  つまみを準備する、大森氏がカマンベールを出すと異様な臭いが立ちこめる。昨日か
  ら車・テントでも感じた臭いである。持参者は、熟成していると言っているが、開封
  すると妙な液体も発生しており、異臭は最大限となった。それでも切り分けようとし、
  ビジョビジョのチーズを確認してついにドクター(後藤)ストップ。早々に処分し、
  異臭の元を絶つことにするが、手や接触した物からの臭いはしばらく消えそうもない。
  聞くところによると大森氏の家では、チーズという物は食せず、この手の物には鈍感
  なようである。そのほかのつまみで2人はワインを飲みすすめ、大森氏はわずかな晴
  れ間をねらいシャッターチャンスを探している。
  1時間ほど休憩したのち、「森林浴の道」を下降し元の駐車場へ戻る。なかなかの道
  ではあるが、せっかく整備してある標識を心ない者が破壊している箇所が目立ち不快
  感を感じた。しかし、我が娘にとっては最高の道であり、後藤氏とも打ち解け「プー
  チャン」と呼びながら下山している。どうも我が家の子供、親以外にはなつくらしい。
  湯ノ小屋温泉に入るべく行くが、近年の観光ブームのあおりであろうか入浴料がどこ
  も1,000円を越えており、断念した。 水上温泉まで我慢することにする。谷川温泉に
  改修した「湯テルメ谷川」で汗を流しほっとすることができた。私は新しくなっては
  じめて入ったが、なかな快適な露天風呂のうえ入浴料もリーズナブルであり、締めく
  くりには良い湯である。
  風呂の後は、「そば」という鉄則通り、街道沿いのそばやにはいる。いぜん大森氏は
  入ったことがあるというので安心していたが、客もいないのになにか雰囲気も悪い
 (注文を無愛想な婆が、レジに肘をかけながら急かすようにとり不親切・不愉快な女
  がいる)。親父が多少愛想を振りまくが相殺できぬほどの悪さである。無難な物を注
  文すべくてんぷらそばを頼むことにした。その間ビールを飲むが、この雰囲気に気勢
  があらずじまいであった。味は、ともあれ今後この夫婦が別れぬ限りさけた方がよい
  ようである。
  これからは、大森氏に頑張ってもらって武蔵浦和まで送っていただくことにした。運
  転者以外は、気楽な気持ちとなり帰路を進む。いつものことであるが、運転ありがと
  うございます。
 今回も、我が親子のために気をつかっていただいたようで頭の下がる思いである。ま
  た懲りずにお世話になるかもしれません。
  武尊山は、展望の良い山のイメージで初登を完了したいものと思っております。
  再度チャレンジ。

23日(金)
  19時30分南浦和−所沢−関越自動車道−水上−武尊橋−武尊神社10時20分 
  宴会後12時消灯
24日(土)
  6時起床−裏見の滝−朝食7時30分−出発9時−湯ノ小屋温泉−群馬自然の森10時
  −田代湿原11時 昼食12時 出発13時−自然の森駐車場14時−湯ノ小屋温泉−水上
  −谷川温泉15時30分 16時10分−そばや17時30分−水上−関越自動車道−所沢
  −武蔵浦和19時30分

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