会津「田代山・帝釈山」

―― 静かな会津の湿原・温泉 齋藤 修

96年7月27日


平成8年7月27日(土)
  参加者:大森(リーダー)・齋藤
 7月の終わりに、会津の山を登る機会を与えられた。今まで交通の便が悪く、登る機
  会がなかなかなかった山である。しかし、最近の梓のオート登山にあやかり、深山の
  「湿原」へ踏み込むことができた。
  そのうえ、ありがたいことに、リーダーの大森氏から電話が入り、7時に自宅に待っ
  ていればよいという伝言を頂いた。快くお受けすることにした。しかしながら、誰が
  参加で我が家までくるのかわかかぬまま、朝を迎える。前日は仕事上の打ち上げがあ
  り、夜中まで飲み続けた。こういう(仕事に行かない)時は、早朝でも目が覚める。
  オリンピックをみながら、出発の準備をする。7時少し前、我が家の前に大森氏の車
  が停車した。再び「社長の登山」の始まりである。(今回で2度目になるが本当に申
  し訳なく思う。しかしうれしい)
 加須インターチェンジから、東北道をひた走り、1時間ほどで今市インターを降りる。
  ここから鬼怒川温泉を抜け川治から栗山を経て、田代山林道を南方から登るルートを
  とり、登山口へ向かう。途中の鬼怒川のバイパスは整備されたが走っていると何か様
  子が違う。なんと、道路上に料金所がある。250円払えというので払うが、どこへ
  でるのかと思うと、以前のバイパスの途中にトンネルで結ばれているだけである。何
  かだまされたような気がする。入り込まない方が無難である。  
 田代山林道は、悪路と表示されているほど悪くはなく、大森氏の車では難なく進める。
  モトクロスのバイクがこわごわ抜いていく程度で、なかなか静かな山道である。しか
  し奥が深い、運転をしている大森氏は、飽きてきていたようである。
 まわりの山が開け、稜線がみえはじめた。じき峠である。ここから登山かと思い、気
  を引き締めると、下りになった。そして、10分ほど行くと、車と看板が認められる。
  ここが、「猿倉登山口」である。車の隙間を見つけ、停車することにした。2人とも
  峠からの登行になると思っていたので、何か意外な感じである。
 10時になるので、身支度を整え登り始める。天候は、回復へ向かっていると読んでい
  たが、なかなかその気配がない。高度と共に雲が追いつき、視界が開けない。樹林帯
  を40分程度行くと、やや低い木が生い茂り(森林限界)、前方の山頂を見せてくれる。
  昨日のアルコールを抜くべく、汗を積極的にかく(大森氏の話では車内がだいぶ臭か
  ったようである)。間もなく、小田代と言われる小さな湿原にでる。急ぐ旅ではない
  ので、小休止をとる。花は多少咲いているがワタスゲ以外は、さほど見るものもない。
  とにかくこの2人で来ると、「花」の名前は解決できない。その上、図鑑を持ってくる
  ようなタイプではないので、より始末に負えない。大森氏が、私に花名を教える次第
  である。私も花の名前は覚えたいと、かねがね思っているが、山を始めた頃の失態で
  全く覚えられなくなってしまった(前途ある青年の将来を変えてしまった花及び先輩
  が憎い)。
 15分程度で、田代山山頂の湿原にたどり着く。ここはかなり広大である。しかし、湿
  原にしては池塘もすくなく加えて花の数も少なく、何か物足りない。多少、期待し過
  ぎていたのかもしれない。ニッコウキスゲ・ワタスゲ・チングルマの類は確認できる
  が、いずれも多少遅かったようである。6月頃は、よい状態なのかもしれない(特に
  チングルマは、群落しており見応えがありそうだ)。さらに先へ歩を進めると、なか
  なか整備された避難小屋がある。小綺麗にされており、利用価値はある。別棟に便所
  もあり、小屋の中には神棚もまつられ、気持ちの良い小屋である。
 ここから帝釈山を目指すが、道は小屋横を巻くようにできている。うっかりすると見
  逃してしまう。やはり、田代山までで降りる人が多いのだろう。静かな山道の下降が
  続く、水場の表示がある小沢をすぎる。水は出ていたが、飲むような雰囲気(泥が沈
  殿)ではない。山頂のビールに期待し、足を進める。この間は秩父の山のような登り
  を繰り返し、低木帯になり程なく山頂に着く。しかし何か変なものが頂より突き出て
  いる。アマチュア無線のアンテナがしっかりと敷設され、おじさんが大声で交信中で
  ある。最近は、携帯電話も市民権を得るために規制されている時代である。山での
  「無線」も考えてもらいたい。しばらく騒音に不快感を覚えたが、ご本人は得意げに交
  信を継続していた。たぶん「梓の宴会テント」の横に張った人も同様の思いをしている
  のだろうと多少シミュレーションする。
  その後も天気は回復するばかりか、大粒の雨が降り出した。程なく止むが続いてきそ
  うである。記録撮影(視界がないので、看板と人物のみ)をし、身支度を整える。こ
  の雨でアンテナが撤去され山頂は静かになったが、長居は無用のようなので田代山に
  来た道を戻る。田代山の登りは、下りの印象ほど思いのほかきつくなく、避難小屋に
  つけた。
  田代山で「花」の撮影を期待していた大森氏が、撮影の準備に取りかかる。乏しいアン
  グルを探し、湿原を歩いている間、わたしはビールを地塘に冷やし、ワインを飲みな
  がら出発を待つ。午後になるというのに登ってくる人もいる。どうやら避難小屋をあ
  てにした登山者のようである。思ったような写真の撮れない大森氏が戻り、多少冷え
  たビールを飲み下山に取りかかる。
  このころからいっそう雲行きが怪しくなり、雨が降り出した。樹林帯まで逃げ込めば
  と高をくくり、歩いていると、信じられないほどの豪雨になり、大木の下に避難する。
  止む気配もないので、2人とも嫌いな雨具をつけ、下山を決意する。
  靴は濡れ、体が湿りながら駐車場までくると雨があがった。一時的な嫌がらせのよう
  な雨である。濡れた服を着替え、下山の用意をする。
 ここからは、田代山林道を北側に下り湯ノ花温泉を経由して帰る。湯ノ花温泉には、
  新装した共同浴場もあるが、今日は、塩原温泉の露天風呂に入る行程にする。北側の
  林道は、非常に整備されており乗用車でも問題はない。その上、温泉から下は舗装さ
  れており、なお快適である。普通は、田島側から入山した方がよさそうである。また、
  木賊温泉へ抜ける林道が快適な舗装道になっており、田代山からの下山に寂れた木賊
  温泉に立ち寄るのも便利になっている。(確認したわけではないが、標識が示してい
  る)道路は、混雑しておらず快適に塩原温泉へ着いた。大森氏の希望で、気軽に入れ
  る公衆浴場巡りをしながら、福渡温泉の「岩の湯」「不動の湯」に向かった。塩原温
  泉は、我が家は来やすいので子供と共によく来るが、入ったことがなかった、不動ノ
  湯に案内する。ここは、沢沿いに設けられたヒョウタン型の浴槽があり、湯量が豊富
  である。大森氏も満足してくださったようである。夕方だったのと夕立前だったため
  に、6時には暗くなってしまった。その上、カミナリと共に大粒の雨が降り出し、大慌て
  で車に戻った。雨量が余りにもすごいため運転もままならない状態であったが、どう
  にか高速道にたどり着いた。
 塩原インターからは、50キロ規制がでていたが、雨も少なく普通の状態で走行できた。
  加須付近で事故のため多少の渋滞に巻き込まれたが、8時過ぎに幸手に到着した。
  別れの挨拶もそこそこに、大森氏は柏に向かっていった。私どもの山行は、交通状態
  ・日程等は全く問題はないが、なにやら天気に恵まれないようである。相性なのだろ
  う、いずれは確かめる必要があるようだ。次回は、メンバーを増やしたい。

参考(山行)タイム
  幸手市7:00−今市8:00−川治8:30−川俣8:45−田代山林道出会9:05
  −猿倉登山口10:00−小田代10:45 10:55−田代山11:20 11:35
  −避難小屋11:45−帝釈山12:45 13:20−田代山14:15 14:50−猿倉登山口15:35
 15:55−湯ノ花温泉16:25−塩原温泉17:35 18:25−塩原インターチェンジ18:55
  −幸手市20:20 

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