笛吹川鶏冠沢右股

―― 手ごろな美しい滝の連続 橋元武雄

96年7月19日


96年07月19日(金) 晴れ。
大森氏が予定通り到着。今日は彼の車で出発。東京駅で善さん、チャウと合流。広瀬ダ
ム着は午後10時半。夕立があったらしく、涼しい。今日は大森氏の仕入れたカツオ、
スズキ、タイなどでゆっくり宴会。11時半頃には就寝。

96年07月20日(土) 晴れ。夕立。
朝食は大森氏のカニおじや。あまり食欲はないが、あとの行動のことを考えてつめこむ。
7時すぎにテントを撤収して出発。
鶏冠沢は、東沢に入ってすぐのところが出会い。やや薄暗い感じだったが、それは入り
口だけで花崗岩の白さの目立つ明るい沢である。途中一本で右俣出会い。狭く暗い沢の
奥に20mの大きな滝がかかっている。これは、苦労して右岸から高巻く。そのあとしば
らくは、右俣を選んだのを後悔するような暗くて、腐朽した倒木の多い陰鬱な沢となる。
しかし、30mの滑滝を過ぎたあたりから雰囲気を盛り返し、手ごろな美しい沢が応接に
暇ない。途中一本入れ、わらじも擦り切れ、もうそろそろいいやというあたりで、最後
の大滝に出会う。屈曲した沢の奥だったので見えなかったが、先頭を行っていた善さん
がザックをほうり投げたのですぐ分かった。じつに頃合いのよい沢である。木の間隠れ
に大滝を見ながら、行動食を寄せ集めて乾杯。何も持ってこなかったぼくとしては、た
だおこぼれにあずかるだけだったが、これもまた楽しい(このときの遡行で、親指の付
け根に軽い痛みを憶えた。岩に親指をかけたとき捻挫でもしたかと思っていたが、あと
で思えばこれが痛風のはしりだった)。あまり人は入っていないらしく、シヤクナゲの
藪こぎで少し苦労したが、無事戸渡り尾根に出る。数年前に新しくできたという登山道
を下る。なかなかよい道だった。

車にたどり着くと、それを待っていたかのように急に雨が激しくなる。途中、山県館と
いう旅館で風呂に入ろうかと立ち寄ったが、入浴料1500円はないというので止める。少
し下ったところに三富村村営の温泉があるのを善さんが目ざとくみつけ入浴。さっぱり
とした気分で、残すは夕食のみとなる。それも塩山バイパスに『奥藤』(おくとお)と
いう、そば、ウナギの店を見つけて解決。質はまあまあ、量は多すぎるくらいある。て
んぷらとトンカツで一杯やり、大森氏は大盛りそば、残りはかま揚げうどんを頼む。う
どんはさほどのものではなかったが、そばは平均以上のようだった。昼のビールと直後
の藪こぎの激しい運動と、高度二千メートルという条件が重なって、体調を崩したチャ
ウはあまり元気がないが、いつものことなのであまり心配はないだろう。奥藤は、デー
タブックに登録しておくことにしよう。あとは台風崩れの驟雨の中、終始大森氏の運転
で、残りのメンバーはもっぱら寝こけているうちに東京駅に着いた。チャウを東京駅で
下ろし、鳩ヶ谷まで送ってもらう。協同装備が担ぎきれないほどあるので、仕方ないと
はいえかたじけなし。

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