苗場山

橋 元 武 雄    '94/07/16〜17


94年07月16日(土) 晴れ。
梓山行、苗場山。冨山、鈴木、大森、中村、亀村、斎藤父子、金谷、橋元 9時南浦和集合。酷暑から逃げ出すように苗場山へ向う。大森氏も車を出す。

和田小屋からリフト1本分下にあるレストランの近くに大きな駐車場があったので、そこで車を下り、軽く昼食をとって出発。午後の霧が立ち込めてくれたおかげで、視界こそないが直射日光は避けられた。スキーで滑ったことは数限りなくあっても、登るのは初めてのゲレンデを蒸暑さに堪えて登る。

和田小屋の建つ台地の下部に稲荷清水という水場があり、そこで水を補給する。ここの湧き水は、冷たくて旨い。登山コースは、和田小屋の前のゲレンデの左側の沢寄りのブナ林の中につけられている。スキーならあっというまの距離を重荷を背に汗して登る。英彦君は元気で、善さんといっしょにどんどん登ってゆく。とにかくゲレンデから脱出するのに、2時間近くかかってやっと中の芝という場所についた。すぐ眼下のシラビソ林のなかにリフトの終点が見えている。上、中、下とある“芝”と名のつく、3つの湿原のなかでここが一番広い。湿原といってもこの旱魃で、ぱさぱさに乾燥している。

中の芝に到着するや、最後尾にいたぼくにむかった英彦君が駆け降りてくる。なんと幕営予定の“雷清水は涸れている”というのだ。下山してくる人に聞いたとのこと。
その水場をあてにしていたので、水は用意していない。いかに対処すべきか鳩首合議する。といっても、結局“何とかなるさ”と、予定どおり目的地へ向う。
途中、稜線へ出る手前で小松原湿原への道を分ける。小松原湿原には、避難小屋があってなかなか良い場所らしい。いつか訪ねてみよう。

雷清水のテント場は、とてもテント場と呼べるようなものではない。斜面に2、3ヶ所裸の砂礫地があるだけで、ほとんど使った形跡がない。カメちゃんが役場に電話して、ここが幕営地に指定してあることは確認してあるから、別に悪いことをしているわけではないが、こんな場所は幕営禁止にして自然に戻すべきだろう。かといって、このさき苗場山頂の幕営地まで行く気力はない。なにしろ、ビールの酒のと、やたらに荷物が重いのだ。とにかく、水をなんとかしようと、手分けして水場を探す。結局、斎藤君がテン場から少し下った所に水場を発見した。沢の源頭の滴り程度で、清水とはいいがたいが、水なしに比べれば雲泥の差である。

幕営地としての条件の善し悪しは別として、ここには我々のテントしかない。どんな大声をあげても、誰の迷惑にもならない。そこで、『梓連絡』にも報告した大宴会となったのである。

94年07月17日(日)
 快晴、午後曇り。
快晴の明るさに目が覚めてテントを出る。
- 1 -



なんとおじさんが一番早く起きて、善さんが最後という前代未聞の起床順序になった。

昨日の重荷の疲れで、体が重い。途中、植物図鑑を忘れたのに気付きテントまで戻ったのに加えて、あれやこれやと路傍の花を調べているうちに、仲間は先にいってしまった。あまり遅れてはと急いだが、苗場の山頂直下は相当な急登で、息はゼイゼイするばかり。途中、下ってきた女性2人連れが道を譲ってくれたので、岩の頭を踏んで駆け上がると、“さすがに男の人は元気ね”と話し合っている。悪い気はしないが、息を殺すのに苦労する。すぐ下のテントから登って来たばかりだから、とは言えなかった。

苗場の山頂は広々とした湿原。あの急登のあとに、こんな大らかな平地があるとは、想像もできない。広い休憩所を見つけて、のんびり休憩する。日が差せば真夏の熱さになり、雲で陰れば肌寒いほどだ。別の方角から登ってきた登山者が、雪の塊を手にしているのを見つけ、近くに雪田が残っていることを知る。
その雪田まで英彦君と雪を取りに行く。とってきた雪で、金谷氏の家庭菜園のトマトを冷やして喰う。彼のザックの中にあったこととて、多少形は崩れて実も飛び出していたが、美味。しかし、いつのまにか蜘蛛の子のように団体が湧き出し、広い休憩所も騒がしくなったので、山上の楽園を去ることにした。

テントを撤収して、酷暑の下界へ向う。大森氏が、雪田で取ってきた雪を買物袋に詰めてワインとともに中の芝まで運ぶ。おかげて、冷たいワインで乾杯できた。和田小屋下の稲荷清水で、残りのソーメンを食べる。三俣大島部落のセキレイの湯で汗を流す。セキレイの湯では、冨山さんが衣類のロッカーの鍵を女性風呂との境に落としてしまうという事件があった。ここで英彦君が大活躍。まだどちらの風呂に入っても疑われない年齢の彼が、鍵を奪回した。

温泉の前庭に椅子とテーブルがあったので、そこで今回の清算を済ませる。“じゃー最後の宴会だ”とぼくがいったら、“また宴会かよ”と大森氏が悲鳴をあげたので、それは中止。おとなしく帰宅することにした。
- 2 -
次の作品へ ↓
目次へ ↑

inserted by FC2 system