連休:真教寺尾根から赤岳

高橋尚介     '84/04/28〜30


 連休には涸沢に入る計画をずいぶん前から立てていた。今年は雪が多かったせいもあって、上高地までバスが入るようになるのは5月に入ってからだとの情報で、穂高行きはアキラメることにした。4月28日の午前が亀さんの都合で午後発となる。いろいろ障害が出る。今回もまた行く先未定のまま集まることになった次第。

4月28日
 午後一番でとりあえず恒例の丸ビル前に集合し、大森さんの愛車でとりあえず中央高速にのる。車中で行き先について検討。八ツか北アか南アかずいぶん迷った末に、談合坂S.A.で休息中に、真教寺尾根から赤岳に登ることにようやく落ち着いた。大森さんに乗せられた感が強い。清里から若いギャル達を横目に美しの森に車をむける。たかね荘ロッジの駐車場に車を置いて、ロッジ裏手の小径をたどると開けた湿原に出る。羽衣池だ。池畔にテントを張る。夕焼けに染まる、赤岳、横岳、硫黄岳の稜線が美しいシルエットをつくり出している。首を転じれば、奥秩父の山並が夕日を浴びて輝いている。少し離れた清里のケバケバしさとは対照的な静かさである。牛首の後方に奇怪なシルエットを見せている岩稜は天狗尾根で、大天狗、小天狗の奇峰が圧倒する。大森さんのホルモン焼き、焼き肉料理に舌鼓を打っての酒宴となる。酒を制限している大森さんも計算どおりの量では納まらない。例によって亀さんのコックリがはじまり、キツネウドンも夢の
中。亀さんをそのままにシュラフにもぐり込む。

4月29日
 4時起床。快晴。荷物を減らして、残った荷物を大森さんに預けて、6時15分大森さんと別れをつげる。ゆっくりとしたペースで牛首にむかう。下部の残雪は少なく、歩きやすい。途中から残雪がしだいに多くなり、トレースを踏みはずすと潜るようになる。やがて牛首山の山頂につく。テントを張っている2人連れ、単独行者とにぎやかになる。牛首から先は、トレースも明確ではなくなり、ラッセルとなる。わずかに残るトレースを追って登るが、すぐにはずれてしまう。尾根の北側が雪が締まっていて比較的歩きやすいが、南側はもぐってしまってどうにもならなくなる。途中、2人パーティーと単独行に抜かれる。樹林帯の中の急登がすぎるとクサリ場。半分雪に埋もれている。相当高度をかせいだ。クサリ場から左手に急斜面のトラバースをするが、雪がくさっていて不安定。トラバースを終わるとインゼルにとりつくが、クレバスが悪い。くさった雪と氷の混ざったクレバスをまたいで、ガレたインゼルからハイマツ帯にとりつく。ここで後方の亀さんに直登ルートを探すように指示したが、ルートが見つからず同じルートを登ってきてしまったとか。急斜面の上に雪がクサって不安定なので、気が抜けない。稜線近くまで登り切ってしまう。亀さんは少々バテ気味で遅れる。先行していた単独行者は、これからどうするの
-1-



か迷っている。2人パティーはだいぶ下のほうでどうするのか迷って引き返してしまった。これまでの雪の状態から見て、下ったほうが苦労するので、行者に下る方が時間も早いと話し合う。赤岳から権現に向かう縦走路がすぐ上に見える。岩稜から雪に埋もれたクサリ場を越えて稜線に出る。そこから頂上まで約15分。14時35分頂上到着。頂上小屋前の広場でブルックボンドをわかす。ビールを飲まなかったのは、まだ行動する意志があった証拠である。天気はまだ良い。行者小屋まで下るか迷ったが、雪の状態が悪いと聞いて結局小屋泊りとする。テントを担いで、小屋泊まりはもったいない気もしたが‥‥
 小屋の風下で山菜ウドン。陽が落ちると一気に冷え込む。早々にウイスキーを抱えて部屋にあがる。お湯割りで一杯と思っていたが、あたたかい部屋に入って、アルコールが体内をかけめぐり、湯がわく前に寝入ってしまった。
4月30日
 5時起床。晴。亀さんは外に出て御来光を見ている。小生は、窓からですます。残り少なくなったガスコンロでぬるい紅茶とウドンスープでパンをかじる。6時15分赤岳から行者までのくだりは早朝のため雪が締まって快調にとばしてくだる。7時行者小屋着。美濃戸山荘に8時10分、美濃戸口に9時10分着。タクシーの相乗りで茅野駅まで飛ばす。

パーティー:
亀村、高橋、(大森 取りつきまで)
コースタイム:
4月29日
羽衣池 6:15、牛首山頂 8:30
〜8:45、赤岳山頂 14:35
4月30日
小屋発 6:15、行者小屋 7:00
〜7:10、美濃戸山荘 8:10
〜8:30、美濃戸口 9:10
-2-
次の作品へ ↓
目次へ ↑

inserted by FC2 system