橋元武雄 2016年4月23日〜30日(後半27日〜30日)



27日 田茂萢岳南斜面、赤倉岳大斜面から硫黄岳コース  24日の赤倉の大斜面の滑りが気持ち良かったので再挑戦する。今日はチャウの腰の状態が思わしくなく 休養。メンバーは池田、亀村、橋元となる。平日でシャトルバスはないから箒場へは降りられない。赤倉 岳大斜面を滑ったあとは成りゆきにして、田茂萢岳の南斜面を滑り、そこから赤倉岳の南西面をトラバー スして大井戸沢のコルへ抜けるルートを取ることにした。このルートはシールを使う人が多くなってから よく使われるようになった。


 101人乗りのロープウェイ

 このコースはロープウェイ山頂駅のすぐ前から滑り出す。中央コースを行くつもりだったが、もうオオ シラビソが頭をもたげていたので、いったん雪の多いところまで滑り降り、そこから1324bピークへ登り 返すことにした。


 頂上駅から少し滑った地点 ここからちょっと登る
 田茂萢岳南面の滑降開始点 1324mピーク
 
 この先の斜面を滑り降りて、あそこまで登って休憩

 田茂萢の南斜面は下部が急傾斜になる。谷底まで降りると登りがきつくなる。今回は下まで降りてしま ったが、少し手前で左手へトラバースしたほうが楽だ。登高を開始してしばらくすると、宮様コースを横 切る。今日はシャトルがないから宮様コースでお茶を濁しているパーティーも多い。

 はい休憩地点まできました

 赤倉岳からの枝尾根で休憩し、次は大井戸沢のコルを目指す。この先また斜度が急になりルートの取り 方に注意がいる。さらに大井戸沢のコル近くはもうハイマツが出ているので、なるべく右から大回りしな いと藪漕ぎを強いられる。

 大井戸沢のコルは目前
 大井戸沢のコルから振り返る

 赤倉の大斜面は今日も快適だったが、斜面途中で急にガスが湧き起こり視界がなくなった。大斜面をぞ んぶんに滑り降りてから、仙人岱ヒュッテへ登り返す予定だったが、これ以上の滑りは諦めて直接、小屋 を目指すことにした。ちょっとしたガスでほんの一瞬視界が閉ざされただけだったが、弘前の車酔いが尾 を引いていたのか、ここでぼくは雪酔い状態に陥ってしまった。滑る気持ちも萎えて、ひたすらトラバー スして仙人岱ヒュッテを目指した。  仙人岱ヒュッテに近づくころは滑るのも億劫になって板を担いで歩いた。小屋につくなり、床の間に倒 れ込んだ。まさかこんなところで悪心が起きるとは思っていないから薬もなく、ひたすら気分の回復する のを待つしかない。そのうちガイドツアーもやってきて賑やかになる。このツアーのガイドも酸ヶ湯OBで、 池田さんがよく知っている人だった。  30分ほども横になっていただろうか、梓のスキーで定番だったブルザンのチーズをクラッカーに載せワ インで流し込めるくらいまでは回復。  午後は、26日と同じコースではつまらないので、硫黄岳コースを滑る。あちこちでオオシラビソが行く 手を塞ぎ、快適な滑降とはならなかった。この滑りでまた雪酔いが悪化。  地獄沢から先は26日と同じコースになる。

 地獄沢を越えて、また大休止 ぼくは最悪の状態でかろうじて撮影

 酸ヶ湯の南口にたどり着いても、しばらくは歩くこともできず階段に座り込む。池田さん、カメちゃん には先に行ってもらったが、あまりいつまでたっても部屋に戻らないので、チャウと池田さんが迎えに来 たほどだった。事実、最悪の状態だった。

 ただいま 酸ヶ湯玄関

酸ヶ湯遭難事件  酸ヶ湯で遭難なんてありそうにない。現地を知っているわれわれならそう思う。ところが湯坂で遭難事 件が起きたのだ。スキーに出なかったチャウが207号室で休んでいると、湯坂のあたりで急にヘリの爆音 がやかましくなったという。表へ出てチャウが撮った写真がこれだ。

 湯坂でヘリがホバリング
 湯坂の下に救急車待機
 湯坂を見上げる湯治客
 湯坂上部に3人見える
 ヘリが接近
 救助活動
 救助活動
 そしてヘリは飛び去っていった

 装備からすると湯坂の上部に見えた遭難者はスキーヤーではなく登山者のようだ。もっとも、スケート のようなスキーで滑るひともいるのでわからないが。それにしても、あの場所で酸ヶ湯まで降りられなく なるという状況が推測しにくい。怪我なら消防が来ているのだからヘリまで必要ないだろう。それとも何 か緊急性の高い病気で倒れたのだろうか。フロントで状況を確かめる気もなかったので、結局、正確な事 情はわからずじまいだった。


28日 十和田湖・十和田市散策  朝から雪がちらついている。われわれの行動基準ではとても滑る天気ではない。カメちゃんの車で十和 田湖へ行ってみることにした。車酔いの薬を飲んだことはいうまでもない。十和田湖は以前にも一度荒天 のときに足を伸ばしたことがある。そのときはJRのバスを使ったが、後部座席の補助席だったせいもあっ て車酔いにやられ、湖畔の食堂ではあまり食べ物が喉を通らなかった。気の毒がった大森氏が、車酔いに は酒酔いが効くとばかり、白ワインをご馳走してくれたことくらいしか記憶がない。

 蔦温泉あたりまでガスのなか

 子の口の駐車場で車を駐め歩き出すころには本格的に雨となった。間の悪いことに、ぼくひとり傘を持 参しなかった。通りすがりの土産物屋兼食堂に無料貸し傘があったので、拝借。しかし、これによって義 理堅いわれらとしては、自動的にここで昼を食べることになった。 まず十和田神社へ向かう。

 十和田神社へ  十和田神社参道

 観光地の神社で期待はなかったが、神域は結構広く、風情のある神社だった。

 十和田神社  

 神社の佇まいが好ましく、冨山さんの病気平癒を祈願した。祭神はヤマトタケル。そういえばヤマトタ ケルを祭神とする神社にはあまり出遭ったことがない。霊験のあらたかならんことを!

 愛嬌のある狛犬  

 十和田神社から乙女の像へ。

 あの有名な…………

 約束?通り、傘を返しがてら土産物屋兼食堂で昼食を摂る。義理で入った食堂だったが、従業員の対応 は明るく、料理も悪くはなかった。  チャウの発案で十和田市現代美術館を訪ねる。初っ端から巨大なオバサンに見下ろされてビックリ。

 美術館サイトより  屋外のアリの化け物を撮ったら撮影禁止と制止されたが

 屋内から外の芝生に展示してある作品を撮ると、撮影は止めるように制止された。しかし、外部では入 館料を払っていない観光客がこのアリの化けものを撮っている。われわれは料金払ったんだが?

 これもあれも…………  …………現代芸術作品である

 現代美術にもいろいろあるだろうが、まず「何がいいたいの?」と考えてしまうものが多い。あれこれ 思考操作をしてやっと作品の意味・意義らしいものにたどり着けても、「で、どうしたの?」でおしまい。 わたしには、現代美術に対する感性が欠けているようだ。


29日 酸ヶ湯にて  昔は連休でも降雪はよくあったがちかごろ珍しい。従業員に訊いても、この時期に2日つづけて雪は経 験がないという。カメちゃんの車はノーマルタイヤで来ている。昨日は雨交じりだったが今日は路面に積 雪がある。 今日は酸ヶ湯の湯治客に徹する。といっても汗もかいていないので、わたしは湯に入らなかったが。

 酸ヶ湯玄関  玄関前の駐車場
 207号室からの雪景色  

 たっぷり時間のあるときの定番メニュー、とろろ掛けご飯。おろした山芋にゴボウ風味の出汁を合わせ、 すり鉢で徹底的に摺る。いわば、ホイップする。それをご飯にかけてするすると食べるというか飲み込む というか。チャウの得意とする家庭料理だ。

 カメちゃんは、「今日は本当にくつろいだ気分です」という。さもありなん。今日はドライバというハ ンデからまったく解放されているのだ。

 スルスルといくらでも入りそう カメちゃんの笑顔を見よ!

 日がな一日、温泉三昧。

 男子脱衣所  
 湯治棟への廊下  207号前の廊下

 夜は静に更けてゆく。

   

30日 八甲田温泉コース/蔦温泉散策  今日も朝からガス。滑り足りない池田さんとカメちゃんは八甲田温泉コースへ、もう滑りは十分のチャ ウとぼくは蔦温泉の入浴へと分かれた。
八甲田温泉コース  上部はずーっとガスっていたらしい。この時期の新雪は真冬と違って、滑りやすいものではない。そう とう、苦労したようだ。


 だんだん天気回復
 八甲田温泉で昼食 泉源が枯渇して休業中とか

蔦温泉散策  睡蓮沼から猿倉岳、乗鞍岳、赤倉岳(南八甲田)を経て蔦温泉まで下るツアールートは何度も滑ったこ とがあるが、ついぞ温泉には入ったことがなかった。いつかは蔦温泉に入ってみたいと思っていたが、つ いに念願が叶う。

 蔦温泉へ JRのバスから

 酸ヶ湯はガスがかかっていたが、高度を下げるほどに天気は好転。しかし、風がやや強い。

 池の向かいが玄関 右手が風呂の施設
 風呂の施設 右の新しい建物が休憩室

 いつも賑やかな酸ヶ湯と違って、蔦温泉は全館がひっそりと静まりかえっている。 玄関を入っても普通の旅館のフロントとは雰囲気が違い、古い商家の帳場のような受付があるだけだ。そ こで、物腰のおだやかな若い従業員に入浴料800円を払い、浴場へ向かう。泉響の湯と久安の湯という、 大小2つの浴場があるようだが、ぼくは大きいほうの泉響の湯で長々と湯に浸かり、すっかり満足した。 泉響の湯は、広い浴槽の底板のあいだから無色透明の湯が滾々と湧きだしていて、あふれた湯は一段低い 湯船の枠を越え、広い小川のように流れ出ている。 浴室内も森閑として、だれも喋ることがない。あるものはどっぷりと湯に浸って瞑目し、あるものは静に 湯を浴びて立ち去る。広い室内にときたま湯を被る音と桶を置く音だけが響く。まるで禅寺で参禅してい るかのようだ。 だいたい風呂は苦手で、湯船に3分もいると我慢ができないほうだが、ここではわれながらあきれるほど 長い時間を浴室の中で過ごした。あがって休憩所へ向かうと、泉響の湯と久安の湯をハシゴしたチャウが 待ちくたびれたと呆れていた。 多分撮影は禁止なのだろうが、この宿には「あれするな、これはダメ」の禁制ビラがどこにもない。宿の 矜持でもあろうか。女湯にはほかにだれもいなかったので、撮影できたそうだ。

 浴場入口  浴槽 天井が高い

 入浴後は広大な休憩室で外の景色を楽しみながらほてった体をさます。一画に飲み物のサーバーがあっ て、リンゴ酢やミネラル水を無料で飲むことができる。この休憩室だけでもお勧め。

 広大な憩室

 休憩室の床の間

 大町桂月などの記念物の展示コーナー

 ちょうど昼時だったので玄関を挟んで浴場と反対側にある食堂で昼食を摂った。このころになると天気 は爽やかな五月晴れに変わっていた。従業員のサービスはホテル風だが、料理のほうは…………

 食堂より

 長湯をしてのんびり休憩し、昼飯を食べ終わっても、酸ヶ湯へ戻るJRのバスにはまだ1時間少々まがあ った。時間つぶしに蔦温泉の周囲に点在する沼を巡る散策路を歩いてみる。管理は環境省だ。

 沼巡りの散策路へ  周回には1時間半ほどかかる

 最長コースは1時間半ほどかかるが、それを早足で一巡することにした。  酸ヶ湯を起点にしてツアースキーで蔦まで滑るときは、JRバスで睡蓮沼まで来て、そこから猿倉岳、乗 鞍岳を経て、南八甲田の赤倉岳の稜線(写真)に沿って長沼の辺りまで滑り降りる。木立のあいだから沼 が見えてくると無事たどり着いたとホッとしたものだ。最近は雪が少ないので蔦温泉へのツアーができる のは4月初旬くらいまでだという。

 蔦沼から赤倉岳(南八甲田)を望む
 ミズバショウの群落  トチの古木
 エンレイソウ  アズマイチゲ

 時間が限られているのであまりのんびりできなかったが、スキー靴でしか歩いたことのない散策路をウ オーキングシューズで一巡りすることができた。

 帰途の睡蓮沼 蔦温泉へのツアーはここが起点

 今回の八甲田は、後半に天気がくずれて尻すぼみになってしまった。ことに、高田大岳が滑れなかった のが残念だった。10日滞在してもろくに滑れないこともあるのが連休の八甲田である。これはこれでよし としよう。

 最終日 酸ヶ湯玄関前にて 全員集合

 最終日はカメちゃんの運転で南流山まで乗せてもらった。ドライバさん、ありがとうございました。

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