先週、梓の夏山が延期になったので8月最終週はどうしても山を歩きたかったが、台風の影
響でどこも天気が思わしくない。台風15号と16号の合間を縫って、近場の会津駒ケ岳に行くこ
とにした。
会津駒直下の小屋までは沢登りを含め何度も登っているが、実は頂上を踏んでいない。
また尾瀬の入り口・御池に続くルートも、大津岐峠から先は行ったことがない。花の時期には
遅いが、1泊2日の日程には頃あいの山だろう。
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会津駒ケ岳(中門岳方向から)
8月24日(月)曇り
4:30家を出て、5:20岩槻IC→6:50西那須野塩原IC。行動食を買ったり朝飯を食べたり
して、9:00桧枝岐の駒ケ岳登山口に着いた。道路脇の空き地に車をとめて支度をし、9:30歩き
はじめる。
少し登ると「近道」の標識がある。「近道=楽な道」ではないかもしれないが、舗装された林
道を歩くよりは気分がいいだろう。ハリブキが鮮やかな赤い実をつけている。近道は10分ほどで
林道に合流し、林道終点の広い駐車スペースを過ぎると登山道の入り口だ(10:00)。
昨夜の雨のせいで道はひんやりとして気持ちよく、やがてブナの樹林に。途中、ブナハリタケ
(鹿(か)の舌(した))を見つけた。バター炒めにすると結構いけるが、今日はその準備がないの
で横目で通過。12:00標高1700m地点で休憩。右前方に会津駒のピークが見える。このあたりは、
太い木枠の中に小石を敷き詰めた道が階段状に続いている。かなり凝った造りで、これなら長い
年月に耐えられそうだ。
敷石の道
13:05駒の小屋に到着。ちなみに、この山域にテント場はなく、駒の小屋に泊まる(素泊まり
のみで3000円)以外に方法はない。不要品を小屋にデポして、13:15会津駒ケ岳を目指すが、
小屋からはなだらかな丘にしか見えない。かつて燧岳からこの山を眺めた深田先生は、「一頭
地を抜いた峻抜な山の形には見えないが、その尾根の長いおだやかな山容が私を魅惑した」と
書き残している。
駒の小屋(右が母屋)
朽ちて傾いた木道をたどり、行きは駒ケ岳を巻いて、14:00中門岳に到着。岳とは名ばかりの
むしろ窪地といった風情で、確かに池塘の脇に今にも倒れそうな大きな標識が立ってはいるが、
「このあたりをそう呼ぶ」という桧枝岐村の注釈つきだ。さらに奥に進むと池塘の点在する台地
に至り、木道はここを一周して元に戻る。池塘の周囲は、一面のモウセンゴケ。そんなに虫がい
るのだろうか。彼らの食糧事情が気になる。。
モウセンゴケ
会津駒ケ岳山頂で
しばらく休んだ後、駒ケ岳に向かう。陽が差してきたが雲が低く、遠く至仏はかすかに見える
ものの、燧の頭は雲の中だ。会津駒ケ岳山頂(2133m)で写真を撮り、15:30駒の小屋に帰着。
とりあえず寝床を確保し(といっても今日の泊りは8人のみ)、周囲を偵察してみる。小屋の裏
手の立派な建物は新館かと思ったが、トイレだった。かなりの助成があったらしいが、総工費
7000万円とは豪勢だ。
することもないので独り宴会の支度にかかったが、レトルト主体のメニューではあっという間。
あとは時間つぶしに、小屋がくれる天水を沸かして飲料水づくりに励む。問題は明朝の出発時間
だが、小屋番によれば、ここから御池へのルートは草刈りをしていないため朝露がすごいという。
かといって、御池発11:05のバスを次の13:10まで遅らせても、2時間で露が乾くとは思えない。
5:00スタートで11:05のバスに乗ることにし、19:00過ぎに横になる。
8月25日(火)曇り
気がついたら、5:00を回っていた。慌てて支度をし、雨具のズボンをはいて5:30出発。両脇
から覆いかぶさる草の露に昨夜の雨も加わって、いきなりのびしょ濡れだ。スパッツを忘れてき
たのが悔やまれる。それでも熟しはじめたクロウスゴやクロマメノキの実を頬ばりながら、快調
に歩を進める。空は高曇りで、陽ざしがないのも助かる。
遠く燧と至仏(大津岐峠から)
6:50大津岐峠。巨大な標識が地面に横たわっている。桧枝岐村は大きな標識がお好みらしいが、
どうも耐用年数に問題があるようだ。ここからは標高差200m近くを下ることになる。
歩きはじめるとブッシュは身の丈を超え、さながら藪こぎ状態。草の露どころか、頭上からシ
ャワーだ。こんな所でいきなり森のクマさんに出合ったら一大事なので、声帯のトレーニングを
しながら進む。やがて登りにかかると、道の傍はユキザサの群落。すでに実をつけはじめていて、
ゴゼンタチバナの赤い実も目につく。
8:10電源開発の避難小屋。鉄骨で3m以上かさ上げした立派な建造物だが、中を窺うことは
できない。ここからは緩やかな尾根歩きになり、行く手に燧岳が迫ってくる。池塘の散らばるさ
わやかな草原(草の露は、あらかた落ちたようだ)を過ぎ、9:15大杉岳に着いた。頂上で燧岳
の写真を写そうと思っていたが、シラビソなどの木々に囲まれ、まったく展望はない。
大杉岳からの下りは急坂を想像していたが、幅が広く、傾斜も緩やかな快適な道だった。ブナ
ハリタケを探しながらゆっくり歩いてみたものの、今日は発見できず。10:10奥只見に続く国道
352に出て、10:20御池に到着。ここで靴を洗ったが、中は思ったほど濡れていない(ゴアテッ
クスを見直した)。11:00沼山峠から、会津高原行きの大きなバスが下ってきた。桧枝岐に戻っ
たら温泉に入り、蕎麦でも食べてゆっくり帰ることにしよう。