大森武志 2014年07月30日〜8月1日

                                       Photos by T.Omori




 小倉山上部から駒ケ岳を望む

7月30日(水)晴れ  14:00に柏を出発し→16:00赤城高原SA→17:00小出IC。渋滞もなく快調。インター出口から小出方向に 少し戻ったスーパーで今夜のビール、食料等を仕入れ、シルバーラインを通って銀山平に向かう。  シルバーラインは、もともと奥只見ダムの建設工事用の道路(1971年から一般車両に開放)で、岩肌むき 出しのトンネルが延々と続く。トンネルを出た銀山平からは曲がりくねった山道(R352)を15分ほど走り、 18:25枝折峠に着いた。

 30台は駐車できそうなスペースに、車は3台のみ。立派な水洗トイレがあるが、ポンプ(電源は太陽光)が 故障とかで、水はバケツでタンクに補充する。黒姫高原にある秦先生(高校の担任で蕎麦づくりの先生でも ある)の山小屋を思い出してしまった。  車の脇に折りたたみ椅子を持ち出し、夕暮れの風に吹かれながら独り宴会の開始。枝折峠は標高1065m。 蚊取り線香を忘れてきてしまったが、蚊はいないようだ。西の空には鎌のような三日月。

7月31日(木)晴れ、ときどき曇  朝、車は10台に増えていた。空は曇がちで、風も涼しい。支度をし、5:10出発。しばらくは登ったり下 りたりの林間の道が続く。やがて気温が上がり、風もやんだ。5:40明神峠を通過。6:05明るい尾根に出 て休憩。はるかかなたに、沢筋に雪を残した駒ケ岳が望める。

 道行山(1298m)を経て、7:20駒の湯からの道が合流する小倉山(1378m)に着いた。だが、もう2時 間以上も歩いているというのに小さなアップダウンの繰り返しで、標高は300mほどしか稼いでいない。  しかし道はよく手入れされていて、階段は登りやすく、木道は5寸ほどの角材を敷き詰めた堅牢なもの。 魚沼市の仕事のようだが、やるからには本物を、という気概が感じられる(丹沢あたりの手抜き工事とは大 違い)。  施工年度を示すプレートを見ると、ここ5年ほどの間に下から順に整備されたものらしい。この山は今や 「越後駒ケ岳」という呼称が一般的だが、今後は「魚沼駒ケ岳」と呼ぶことにしよう。ちなみに、深田久弥 の百名山にもそう記されている。

 登山道の脇にも残雪が現れ、風も少し出てきたようだ。登ったり下りたりのアルバイトがやっと終わり、 駒ケ岳の膝元にたどり着いたといったところか。やがて、百草の池の標識。ただし、今は植生復元のために 立ち入り禁止となっている。  少し登ったところから池を見下ろすと、周囲にはハクサンコザクラ(たぶん)が群生している。ここまで 回復するのに、いったい何年かかったのだろう(20年前の地図でも、すでに立ち入り禁止となっている)。

 駒の小屋――右手奥が頂上

 9:30駒の小屋。夏のシーズンしか管理人がいない避難小屋だが、清潔そうな、なかなか感じのいい小屋 だ。それに水場には、上部の雪田から引かれた冷たい水がふんだんに流れている。たっぷり水を飲んで、9 :50駒ケ岳頂上(2002.7m)に到着。アキアカネ(まだ黄色い)が群れ飛んでいるが、周囲は雲に隠れ何も 見えない。  しばらく休んでいたが状況は変わらず、360度の展望はあきらめて、中の岳方向に少し下ってみることにし た。グシガハナと中の岳への道の分岐点あたりは花畑になっていて、ハクサンフウロやニッコウキスゲなど、 さまざまな花が咲いている。

 小屋に戻り、水筒を満タンにして、11:45下りにかかる。花の写真を撮りながらゆっくり景観を楽しみ、 13:15小倉山を経て、15:45枝折峠駐車場に帰り着いた。

 枝折峠の駐車場

 すぐさま着ているものを脱いで身体を拭き、すっきりしたらまずはビール。家で一昼夜凍らせ、発泡スチ ロールの保冷箱に入れて車の下に押し込んでおいたので、かろうじて冷たさを保っていた。今日は銀山平キ ャンプ場で幕営する予定だったが、1張(4人まで)2000円を払う気にはならない。今夜もまた、ここで車 中泊とする。

8月1日(金)曇ときどき晴れ  4:00過ぎに起床。枝折峠から、銀山平にある荒沢岳登山口の駐車場に下りる。ここには、車中泊もテン ト設営も「許さない」という、伝之助小屋の立札が立っている。隣接する伝之助小屋が地権者らしいが、た いそうな権幕だ。  支度を整えて歩き出すと、すぐに水場が現れる。貯水タンクに蛇口がついているが、ひねっても水は出な い。栓の位置が高いので、小屋で水をたくさん使うときには水位が下がっているのだろう。仕方なく、沢に 入って水を汲む。出発5:10。

 前山(1091m)までは見上げるような、ほぼ一直線の急登が続く。これこそ、まさに新潟の山だ。登るに も下るにも効率的ではあるが、少々しごかれる。すでにキノコの季節が始まっているようで、おなじみのジ コボウのほか、珍しくも赤いタマゴタケの姿もちらほら。6:10前山到着。

 休憩後、比較的なだらかなブナの道をしばらく進むと、急な岩場に行く手を阻まれる。出だし2ピッチほ どは斜度70度近いと思える急傾斜で、鎖がどこまでも伸びている。しかしホールドもスタンスもしっかりし ていて、鎖を使わなければ3級下程度の快適な岩登りが楽しめる。  その後も鎖と梯子の連続で、7:45ようやく岩場を抜けた。と思ったら、眼前には屏風のような岸壁がそ そり立っている。前ー(1536m)だ。一瞬、これを登るのかと身構えたが、よく見ると巻き道がついている ようだ。

 前ーの岸壁――左奥が荒沢岳

 巻き道はいったん前ーの基部まで下り、そこから一気に岩場を登って稜線に出る。うんざりするほど鎖の 連続で、ところどころにロープや梯子が交じる。8:30岸壁下のトラバースを終了。出た所は前ーから続く 狭い稜線で、日差しがきつい。しかし、西方かなたの駒ケ岳は雲の中。いささか疲れた。ここで大休止。

 1時間ほど熱暑の道をたどると、荒沢岳から伸びる稜線に合流した。がぜん花の数が増え、南の沢から吹 き上げる冷たい風が心地よい。花の写真を撮りながら、11:00荒沢岳頂上(1969m)に到着。今日は雲が薄 く、中の岳も八海山も駒ケ岳も、周囲の山々すべてを確認することができる。

 荒沢岳頂上で

 11:35頂上を出発し、下りにかかる。途中、前ーの岩場から水が浸みだしているのを発見。落ち葉や泥を 取り除いてしばらく待つと、小さな水場ができた。水筒の中身も残り少なくなっていたので、思う存分水を 飲む。甘露。  その後は、涼しい風の吹く木陰でしばしまどろんだりしながら、ゆっくり下っていく。途中、登る時に目 にしたタマゴタケの写真を撮ろうとしたが、下りながらではなかなか見つからない。それやこれやで、登山 口に着いたのは16:30を回っていた。

 タマゴタケ――見かけによらず旨い

 さて、次は温泉だ。銀山平キャンプ場に付設された「かもしかの湯」(500円)はカランが3つしかない小 さな風呂だが、清掃も行き届いていて気持ちがいい。今日のねぐらはシルバーライン出口の駐車場を予定し ていたが、行ってみるとダートで埃っぽく、蚊も出そうだ。躊躇なく、また枝折峠に引き返す。


    今さらながらの教訓
    その1:夏の盛りに標高の低い山に来るものではない。
    その2:登山口と頂上の標高差だけでは、山の実相はわからない。
    その3:団扇は必携(首筋用の冷却グッズも有効?)。
    
    出会った花々(思い出すままに)
    ネバリノギラン、タテヤマウツボグサ、オオバギボウシ、クルマユリ
    ハクサンフウロ、ニッコウキスゲ、キンコウカ、ミヤマイワニガナ
    シロバナニガナ、タカネコウゾリナ、ハクサンチドリ、ホツツジ
    ミヤマホツツジ、ミヤマコゴメグサ、ミヤマリンドウ、ハクサンコザクラ
    シモツケソウ、ミヤマツボスミレ、テングノコヅチ、ミヤマママコナ
    マイヅルソウ、バイケイソウ

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