錦秋の秋山郷・鳥甲山(草津から志賀高原を経て) 冨山八十八・大森武志

              冨山八十八 2012年10月25〜27日

                                 Photo by T.Omori
                                 sketch by Y.tomiyama



10月25日(木)

 久し振りで「南浦和」駅へ行った。篭原行きの湘南快速に乗ると停車駅が少なく、ずいぶん早い。 駅前のベンチで待っていると約束の22時に大森さんがやってきた。直ちに草津へ向かって出発。草津 への道は「八ッ場ダム」の道路ができて、これも昔に比べるとスイスイと行ける。草津に入る手前に 道の駅「草津運動茶屋公園」の建物がある。驚いたことに駐車場は仮眠組でほぼ満杯の様子。早速後 部座席を倒して2人並んで悠々と手足を延ばす。  久し振りに星空が眺められてうれしくなる。十三夜ほどの月が出ていて明るい。

10月26日(金)

 草津白根に向かう。草津の町の道路が懐かしい。振子沢入口とあるのも懐かしい。小生のスキー誕 生の地。草津白根の駐車場へ車を入れて、白根の池を見に行こうとするが、立入禁止で頂上経由のル ートとなるので中止。観光バスが来ていて大勢の人が登っている。白根山はどべーっとした山で捉え ようがない。志賀へ向かう。

 草津白根は絵にならない?

 渋峠から志賀に入る。蓮池の黄葉がなかなかの見もの。草津も志賀も雪の真っ白な景色しか記憶に ない。蓮池畔に車を停めてジャイアントゲレンデを見に行く。雪がなくてもきびしい斜度だ。ここを 含めて滑走ルートはきれいに草刈りしている。  懐かしの銀嶺食堂で昼食にする。スキーをやっていた頃は、志賀高原入口付近で車中仮眠して、ゲ ートが開くと登ってきて、銀嶺食堂で朝飯となった。店のビールの銘柄を憶えておいて、同じ銘柄の 缶ビールを持参して飲んだものだった。いつかのスキーのときに、ここでダイヤモンド・ダストを見 たことがあった。目の前の高天原ゲレンデ、西館山ゲレンデなど懐かしい。どこも黄葉、紅葉が見事。

奥志賀スキー場のエビフライが大きかった食堂の前を通って「奥志賀林道」へ入る。見事な紅葉ぶり で圧倒される。いつか仙台のカメ邸泊まりで面白山へ行ったときの黄葉も見事だったが、ここにはカ エデが紅葉していて色彩が多彩で圧倒され通し。所々で車を停めて写真に収める。「大滝」の表示が ある場所が特に紅葉が見事だった。


 奥志賀林道の紅葉

 紅葉と常緑の饗宴

 切明温泉に行く道の分岐の少し手前に「鳥甲山登山口」があって駐車スペースがある。前回、OJ、 尚介さん、Chau、カメと来たときはここでテントを張ったのか。  大森さんの予定ではここに車を置いて鳥甲に登り、屋敷へ下りて林道を徒歩で1時間半戻るという が、林道はずっと登り勾配である。掲示板には、ここから鳥甲山への往復は下りが危険だと書いてあ る。

 のよさの里本家(本館)

 そこから間もなく今夜のテント場の「のよさの里」に到着。受付で手続きして、オートキャンプ場 は300メート上である。温泉つきとは言え、1泊、1人2000円は高い。キャンプ場はよく整備されている。 キャンプスペースは15,6か。われわれのほかに人はいない。  時間は3時頃だったか、テントを設営して温泉へ行く。受付のある本館まで長い木造の廊下が続き、 両側にところどころ個室用の建物がある。

 戻って4時すぎから、外のベンチで宴会を始める。メイン・ディッシュは大森さん特製鶏鍋。ダシ は鶏肉と鶏ガラスープで普通の水炊きのようにして、それにゴマ油が入る。塩をスープで溶いて、そ れにつけて食べる。大森さんによれば、ニラうどんと同じでゴマ油がミソとのこと。さっぱりしてい て食欲が進む。後にうどんを入れる。  暗くなってきたのでテントへ引き揚げ、早々に寝る。

10月27日(土)

 目が覚めると隣の大森さんがいない。外で朝食の準備をしていた。6時頃だったか。無人のキャン プ場に車が1台停まっていた。朝食を済まして大森さんは早々に出かけて行った。新顔の車から人が 出てきた。中年男性が2人。奧志賀林道、志賀の蓮池まで写真撮影に八王子から来たとのこと。彼ら はテントを撤収すると早々に出かけて行った。さては彼らはキャンプ代を払っていないのかも知れな い。キャンプ場には「時々見回りに来ます」との掲示があった。

 朝食は、昨夜の大森さんが作っておいてくれた鳥鍋のうどん。がダシが染み込んでいて美味い。周 りは黄葉に包まれているが、クマが出て来てもおかしくない風景なので、早々にスケッチに出かける。  スケッチはまず「のよさの里」の本館前に場所を決めた。真正面に、鳥甲山がそびえている。きの うは逆光線で鳥甲山が黒いシルエットだったが、今朝は真っ正面から朝陽を浴びて紅葉の山が美しい。 天気予報では今日の午前中は晴が確実なので、急いでスケッチにかかる。だが鳥甲山に雲の影がかか り暗い。それに津南方面は雲ひとつない青空だが、反対方向にはガスが出てきて山の稜線にかかって くる。そしてここにもガスがかかっているのか、山がくすんで見える。


 2枚スケッチして道路に出て、付近の紅葉風景をスケッチする。やがて水滴が落ちてきて、スケッ チブックを広げておれないので雨具をつけて「のよさの里」へ引き返す。どうやら雨となってきたよ うなので、「のよさの里」の建物に入った。  「のよさの里」は栄村営で、玄関を入ると、鈴木牧之が切り株に腰を下ろした等身大の1本彫りの 木像がある。原木は相当に大きい木だろう。なぜ鈴木牧之かといえば、彼が『北越雪譜』を書いて発 行まで月日がかかったので、その間に秋山郷を訪れ、一文を草したと木像の横に書いてあった。像は 脚絆をつけた旅姿である。

 雨が上り、再びスケッチにかかった。山に陽があたり、全山が紅葉に覆われ紅と黄に染まっている。 午前中のスケッチとずいぶん容相がちがう。  突然、大森さんが声をかけた。2時頃か、随分早い。ラッキーなことがあって早く戻れたようだ。


                大森武志 2012年11月9日

                           Photo by T.Omori
                                  & y.tomiyama


 鳥甲山(のよさの里から by冨山)
2012年10月27日(土)

 5:00起床。あたりはまだ真っ暗で、これほど日が短くなっているとは知らなかった。朝食抜きで 出かけようと思っていたが、夜道は気が進まない。昨夜の残りの鶏鍋を温め、うどんを放り込む。食 べているうちに、冨山さんも起きてきた。

 6:00出発。昨日は、場所が変わったという屋敷の下山口を確認した後、のよさの里キャンプ場を 目指したが、今日は逆ルート、切明温泉経由で貉平の登山口に向かう。登山口にはかなり広い駐車場 があるが、まだ誰もいない。

 6:30靴をはきかえ、歩きはじめる。熊出没の注意書きがあったので、ザックにクマ鈴をぶら下げ た。使ってみて気がついたが、登りではあまり鳴らない。ときどき、手で揺らしてみたりする。  道はいきなりの急登。道というより急斜面を切り開いただけといったルートが、ほぼ一直線に伸び ている。「ここは私有地」という看板を見かけたが、もしかしたら地主が、つづら折りの登山道を嫌 ったせいかもしれない。周囲の木々は紅葉末期で、風が吹くたび、赤や黄や薄茶色の落ち葉が音を立 てて降り注ぐ。

 7:15ようやく稜線に出た。西側の谷から冷たい風が吹き上げ、一気に汗を冷やす。ここからは岩 稜歩きで、7:40に最初の鎖場(ちょっとしたスリル)を通過。この後、数多くの鎖場があったが、 鎖自体はまだ新しいのに、支柱が抜けてしまった個所が少なくない。鎖は本当に必要な場所だけに、 しっかり設置してほしいものだ。

 9:10白ー(1944m)到着。登山口から、約1000mの高度を稼いだことになる。最初は晴れていた 空が雲に覆われ、ぐんぐん冷えてきた。薄手のフリースを取り出して羽織る。いつ降ったのか、日蔭 にはうっすらと雪が残っていた。  ここから先、しばらくはひどい道だった。うっかり踏み込むと足の甲まで潜ってしまうような、ぐ ちゃぐちゃのぬかるみが続く。カミソリの刃と称するやせ尾根は、道幅が50cmにも満たない(ここの 鎖も支柱が抜けていた)。これが最後の難所で、10:30鳥甲山(2038m)山頂に到着。居合わせた中 年男性と、記念写真を撮り合う。


 カミソリの刃から鳥甲方向を望む

 鳥甲山頂で

 ポツポツと冷たい雨が落ちてきたので、そそくさと下山にかかる。赤ーまでは展望のいい稜線歩き らしいが、この空模様ではそれはかなわない。屋敷山鞍部(1460m)までは、ノンストップで駆け降 りた。ここからは、急傾斜の下りが続く。樹林帯に入ると、石や木の根に降り積もった落ち葉に足を とられ、転倒すること数度。痛い、悔しい。

 ようやく道がなだらかになると、コンクリートの巨大な構造物(土砂崩れ防止用?)が見えてきた。 それを回り込んで、工事のためにつけ替えたと思しき登山道を下る。13:15屋敷の登山口に到着。車 を置いた貉平まで、まだ1.5時間の上り坂の林道歩きが待っている。

 林道を10分ほど歩いた時、追い抜いて行った車が10mほど先で停まった。窓が開き、「乗って行く ?」と女性の声。まさか、と思うほどの僥倖だ。ドライバーは40代(たぶん)の活発な感じの人で、 車はマニュアルのパジェロミニだが、急坂のギアチェンジも軽快。これから野沢温泉への分岐点あた りまで、シメジを採りに行くのだという。以前はよく山に登ったとかで話も弾み、駐車場までがあっ という間だった。

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