中村貞子 2012年07月01日

                          Photo by T.Omiri, Z.Suzuki
                                  & T.Nakamura



 鶏 冠 山(S)

日程:2012年6月24〜25日
参加:鈴木、大森、中村
6月24日(日)曇り時々晴れ。西沢渓谷入り口〜破風山避難小屋

 週末の天気が良さそうというので、延期になっていた山行が急遽実行となった。計画では私が食当に なっていたが、金曜日はボラ仕事があって買い出しその他の準備ができないのと、天気予報の具合を見 て日程は日〜月となった。

 待ち合わせは丸ビル前5時半なので久々に早起き。ちょうどよい時間につく電車は御茶ノ水乗り換え だったため、東京駅で地下に着いたら駅構内で迷ってしまった。ようやく地上の丸ビル前にでるエレベ ーターを見つけて外に出たら、善さんが植え込みの土手に座って待っていた。時計を見たら5時44分、 15分ほど遅れてしまった。車は、道が空いていて30分前には着いていたとか。いやはや、さい先が悪い。

 そんなわけで丸ビル前を5時50分頃出発し、西沢渓谷の駐車場には7時50分頃に到着して、軽く朝食 をとる。それから下のトイレに行き身支度を調えて戻ると、駐車場に2人の姿がない! 携帯に電話し ても誰も出ないし、しばらくあたりを探し回ってもいない。置いて行かれたのは明白、ならば行くしか あるまい。西沢渓谷入り口からとぼとぼ歩きだしたら、前方から善さんが迎えに来てくれた。善さんは 私が下に行ったのを見て、林道にある上のトイレ(15分ほどかかる)に行っていたのだ。 大森さんも入り口でしばらく待っていたけど、あまり遅いので私がもう先に行ったのかと思ったそうだ。 そんなわけないよね。ともかく無事に合流できて一安心。なんだか今回は躓きが多くて不安になる。


 二股吊り橋から、これから登る鶏冠尾根をのぞむ(N)

 笛吹川東沢を右岸に渡渉して鶏冠谷出合が登山口(S)

 気を取り直して、3人そろって出発したのが8時15分頃か。田部重治文学碑前を通り、二股の吊り橋 を8時45分頃通過。吊り橋から、これから登る鶏冠山の稜線がみえる。かなりアップダウンがあって手 強そうだ。15分ほどで東沢から鶏冠谷への渡渉地点に着く。心配していたが、水量はそんなに多い感じ ではない。  靴と靴下を脱ぎ、ズボンをまくってまず善さんが、次に私が、大森さんはサンダルに履き替えて渡る。 膝上までまくったのでズボンもほとんど濡れずに済んだ。裸足でも水の冷たさは心地よいくらいで、9 時6分に徒渉を終わり、鶏冠尾根取り付きに着いた。


 さあ、これから登るぞ(S)

 かなりな傾斜の登りが延々と続く(N)

 このあとはかなりの傾斜の登りが延々と続き、時々現れるツツジのほかは足下に花も見えない。展望 もきかない道を3時間近く歩いて、第1岩峰に12時少し前に到着。ようやく視界が開けてきた。そびえ 立った岩だが、鎖がついているし、ホールドもしっかりしているので、難なく頂上へ。背の低いドウダ ンツツジが咲いている。ちょうど岩の上で休憩している少しの間だったが、日が差してきて下界も見渡 せ、爽快な気分を味わうことができた。


 第1岩峰とりつき(N)

 視界が開けてきた(N)

 第1岩峰のドウダンツツジ(N)

 ホールドもしっかりしている(S)

 岩峰上で一休み(O)

 第2岩峰は、それとは気づかぬ間に通り過ぎたらしい(ここも鎖を頼りに登ったはず―大森)。次に そそり立った大きな岩場は第3岩峰であった。直立した岩には、鎖も何もない。途中下ってきた人が、 「そんな大きな荷物を持って登るのは危険だ、命がけだ」と大仰なセリフを残していったのはこのこと であった。  まず大森さんが少し登ってみるが、いったん登ったら引き返せない感じだという。下から見上げると、 出だしはともかく少し上に行けばホールドなどはしっかりしていそうだけれど、鎖という安心感を与え てくれるものがないのは大きい。行ってみたい気はしたが、今回は最初からチョンボが多いので自制し て安全策をとることにした。

 木賊山への迂回路の表示に従って、岩峰を右側に回りこむ。善さんも行くと言ってくれたので2人が 巻道、すでに登りかけていた大森さんがそのまま岩を登る(要所にはボルトが打たれ、確保の支点はし っかりしていた。しかし鎖があっても初心者には危険との判断で、鎖やロープを付けなかったのではな いだろうか―大森)。  どのくらい回されるか心配だったが、さほど長くはなかった。途中出てきた標識は木賊山へのものし かなかったので、巻道を行くと鶏冠山頂上は踏めないようだと善さんが言う。ということは、第3岩峰 が鶏冠山の頂上ということになるのかな?(第3岩峰の終了点の少し先に「山梨百名山・鶏冠山」の標 識がある。ほとんどの登山者は、ここからUターンするらしい―大森)。12時50分に 第3岩峰下と巻道 との合流点に到着。大森さんも程なく到着。  大森さんによると第3岩峰は3級レベルの岩で、私は行かなくて正解のようであった。頂上からすっ ぱりと切れ落ち、高度感たっぷりで気持ちよかったという。善さんには悪いことしちゃった。


 山梨百名山・鶏冠山(O)

 イワカガミ(S)

 シャクナゲの藪こぎは大変(N)

 ここまでは渡渉や岩稜歩きを楽しめたのだが、この先は難行苦行であった。樹林帯で見晴らしもない 中、黙々と急斜面を登り、また下る。とりわけ倒木が多いのが体力を消耗させた。少し前から足下には イワカガミが咲いていて、時折現れる群落には慰められながらも、さらに前方の見えない藪こぎがこれ でもかというくらい続く。下ではすでに終わっていたシャクナゲも、ここまで来るとまだ蕾をつけ、花 も奇麗に咲いているが、それどころでない。  藪はほとんどがシャクナゲなので、憎らしくなるくらい。知らぬ間にみんな切り傷かすり傷で腕から 出血。半袖だった大森さんはダメージが大きく、血が止まらないので絆創膏で手当する。途中滑ったり 転んだりもして、私のズボンはドロドロ。


 ようやく木賊山頂上に到着(S)

 取り付きから7時間半(N)

 そろそろ木賊山頂上直下ではないかという雰囲気になってきたあたりで、獣道なのかルートなのか判 然とせず、しばらく右往左往。ようやく善さんがルートをみつけ、そこからまた15分ほど藪こぎをして、 4時40分、木賊山頂上に到着した。頂上までの藪こぎでしごかれて疲労困憊し、尾根取り付きからすで に7時間半ほどかかっている。(このルートは何度も登っているが、今回のアルバイトは想定外だった。 シャクナゲの繁茂で巻道が消え、ひたすら痩せ尾根を登り下りしたせいなのか、それとも、単に歳のせ い?―大森)。

 さらに20分ほどで甲武信小屋に到着。大森さんが膝が痛くなったので、とりあえず素泊まりいくらか 聞きに行ったら5000円(寝具なしでも同じ)で、感じも悪いとのこと。私もかなり足に来ていたので泊 まってもいいかなと思ったのだけれど、そんなところに泊まる必要はない。あと少し頑張ろうというこ とになって、水だけ300円分を買う(甲武信岳に登ろうとは、誰も言い出さなかった。もっとも、完全な ガスの中ではあったが―大森)。


 甲武信小屋で水を買う(N)

 良い雰囲気の破風山避難小屋(N)

 さいわい、ここから先は激しいアップダウンはないようだ。それでも足を引き引きといった感じで、 6時少し過ぎにようやく笹平にある破風山避難小屋に到着。休憩を入れて、ほぼ10時間の行程であった。 避難小屋というので小さい汚い小屋を想像していたら、新築されたらしく、大きくて立派。周囲の環境 ともども、なかなか良い雰囲気である。頑張ってよかったと、心底思えた。

 戸を開けて中を見ると30人くらいは寝られそうなスペースの板敷きで(私の感じでは15からせいぜい 20人―大森)、薪ストーブまで備えてある。6時を過ぎても明るいので、外のテーブルで宴会をやろうと 支度を始めたが、すぐに冷えてきた。まだ夏山という感じには早いのだ。日曜夜にこれから来る人もい ないだろうと中に移動し、広い場所を占領して宴会を始める。

 メニューは枝豆、ラタトゥイユ、粉ふきいも、焼きアスパラガス、豚ロース味噌漬け、ショウガ甘酢。 水は豊富にあるわけではないので、枝豆を茹でたお湯で粉ふきいもを作る。アスパラは直火で焼いてマ ヨネーズ。前日仕込んだラタトゥイユはお皿に盛るだけ。飲み物は各自だったけれど、それぞれ分け合 った。ビール(背負い上げたのは、なんとチャウさま―大森)、日本酒、ウィスキーで宴は進む。最高 の環境での宴会となり、甲武信小屋に泊まらなくて正解であった。  豚ロース味噌漬けはガッテン流の焼き方を試みる。焼き上がりは固くならず、まあまあの出来であっ たか。最近食が細いというような話をしながら、2枚はたちどころになくなったが、1枚は残った。こ れは翌朝のラーメンの具材となる。  外は暗くなって、霧雨のような、ガスのような湿った感じになったが、本格的な雨の気配はない。9 時半頃就寝。

 夜中1時過ぎに、寒くて目を覚ます。雨具を着てようやく寝られたが、時々ドアをドンドン叩くよう な音や、キャーキャーと変な声がする。おそらく風の音か、鹿か猿の鳴き声だったのだろう。熟睡でき ずに夜中トイレに出ると外は漆黒の闇で、懐中電灯の光に細かいガスの粒が浮かび上がった。

6月25日(月)薄曇り時々晴れ。破風山避難小屋〜雁坂峠〜広瀬

 朝5時過ぎ、通りかかった登山者の声で目を覚ました。朝は豚骨ラーメンで、大森さんが支度をして くれている。善さんがあまり食べたくないというので、2コに減らす。昨夜の豚ロースの残りとネギを 入れ、朝からガッツリのメニューである。雁坂峠には水場があるらしいが、その前に登りがある。3時 間位はかかりそうというので水は節約し、朝食後のお茶はがまんとなった。


 周囲の環境もなかなか良い雰囲気(N)

 さあ出発(N)

 小屋はきれいだが、掃除の道具がない。三和土用の竹箒はあるが、板敷き用がないのだ。あのままで は、早晩汚れてしまうのではないかと気になった。6時40分出発。鶏冠尾根〜木賊山のしごきで身体が バリバリだが、昨日のような藪こぎはなく、普通の登山道を歩けばいいという安心感はある。しかし西 破風山、東破風山、雁坂嶺と、ピークを3つ越えないと下りにはならない。。

 今日の最高峰である西破風山には7時20分到着、そこからは緩やかな下りと登りで東破風山には7時 55分に着いた。白っぽく立ち枯れたような倒木帯をぬけて、雁坂嶺には8時50分着。ガスがかかって下 界はみえない。雁坂峠には9時35分に着いて、いよいよ下り開始となる(雁坂峠の標識は、最低鞍部の だいぶ手前の稜線上にあった。そのため広瀬に下る道は、峠も小屋も通らない―大森)。


 西破風山(N)

 倒木帯をぬけて(N)

 雁坂嶺にて(N)

 雁坂峠(N)

 まだ先は長い(N)

 ここからの下りはきつかった(S)

 登りはまだ、だましだまし歩けばあまりダメージはないのだが、ここからの下りはきつかった。膝ば かりか、足の裏や指までが妙に痛くなってきた。それでも1時間弱で、水場の井戸の沢に到着。しかし こんなにバテバテで、果たしてこれから何時間かかるのか。とにかく頭を空っぽにして、足を前に出す しかない。  沢を何度かわたり返すうちに、ようやく眼下に舗装道路と橋が見えてきた。沓切沢橋という、雁坂ト ンネルの工事用に作られた道路と橋のようだ。ここでしばらく休んで、11時50分、長い林道歩きが始ま った。緩やかな舗装道路の下りはまた山道とは違う膝へのダメージがある。きょうは1人の登山者とも 行き会わなかった。荒廃しかかっている舗装道路を40〜50分も歩いたろうか、右下方に雁坂トンネルの 料金所が見えてきた。


 ようやく水場の井戸の沢に到着(N)

 これから何時間かかるのか・・(N)

 沓切沢橋、ここから長い林道歩き(N)

 道の駅「みとみ」(N)

 料金所に通じる道を下っていくと国道140(雁坂みち)に合流し、広瀬トンネル(たぶん)が見えてき た。中に歩道がある。確証はなかったが、ここを行くことにしてトンネルを通過すると、下にまた道路 が続いているのがみえた。どうやら正解のようだ。しばし探すと、トンネル出口の右側から柵をまたい で林道に戻る道が見つかった。  そのまま鶏冠山大橋の下を通り、途中からまた登山道に入って久渡沢橋の村営釣り場を通りすぎ、道 の駅「みとみ」に出る。1時頃になるかなと話していた到着時間は、予想通り12時55分であった。元気 な善さんが、そこから車を取りに行ってくれる(沓切沢橋からは雁坂トンネルの開通によって、持参し た地図とすっかり様子が変わっていた。善さんのスマホのGPSがなければ、かなり難渋したに違いない ―大森)。

 13時10分頃、道の駅を出発し、途中牧丘のハヤブサの湯に寄って疲れた筋肉をほぐす。昔ながらの地 元の温泉といった風情で、近隣の人達が数組くつろいでいた。月曜日のせいかガラガラで、ビールと少 しのつまみとおそばを食べてゆっくりしてから、3時前に温泉を出る。半袖Tシャツでちょうどいい気 温と日差しで気持ちよかったが、4時半に東京に着いて車から降りると風がヒンヤリとしていて、ほと んどの人が長袖なのには驚いた。この日、東京の最高気温は20度に届かなかったそうだ。

コースタイム 6/24 西沢渓谷駐車場発8:15→二股吊り橋8:45→東沢渡渉9:00→鶏冠尾根取り付き9:10  →第1岩峰11:55→第3岩峰巻道合流点12:50→木賊山頂上16:40→甲武信小屋17:00  →破風山避難小屋18:10 6/25 破風山避難小屋6:40→西破風山7:20→東破風山7:55→雁坂嶺8:50→雁坂峠9:35  →井戸の沢10:20→沓切沢橋11:35〜11:50→道の駅みとみ12:55

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