大森 武志 2011年07月19日

                          Photo by T.Omori, Z.Suzuki
                                     & T.Nakamura



 はじめて見た純白のコマクサ(O)

日程:2011年07月15日〜16日
メンバー:鈴木善三、中村貞子、大森武志

 数ある高山植物の中でも、コマクサには格別な趣がある。「高山植物の女王」という形容には 必ずしも同意しないが、他の植物を寄せつけない吹きさらしのガレ場に、しがみつくように咲く 花には、強固な意志のようなものさえ感じることがある。  去年7月末には今回と同じメンバーで北アルプス蓮華岳のコマクサを見に行ったが、少し時期 が遅かった。そこで、今年はいろいろ情報収集に努め、八ヶ岳に行ってみることにした。硫黄岳 から横岳にかけてが、コマクサの群生地だという。

7月15日(金)  7:00に東京駅丸ビル前集合の予定だったが、翌日から3連休のせいか渋滞に巻き込まれ、40 分の遅刻。神田橋から先は問題なしと思っていたら今度は事故渋滞で、首都高を抜けるまでノロ ノロ運転を強いられた。  諏訪南ICで高速を降りて、コンビニで行動食を調達。原村の開拓地(かつて光岳の帰り、朝 食をとった四阿があった)を抜け、20分ほど走って美野戸口。さらに美濃戸まで車で入り、赤岳 山荘の駐車場に車を止める(1000円/日)。とたんに、虻の攻撃に見舞われた。むき出しの腕や 脚を狙われ、パッキングもままならない。

 11:45虻の群れを引き連れて歩き出す。油断するとすぐ刺されるので、タオルで払いのけなが らの行進だ。柳川南沢〜行者小屋への道を右に見送り、広くなだらかな砂利道を登っていく。こ の道は、大きな堰堤のある北沢に突き当たるまで続いていた(堰堤工事用に造成された道路?)。 周囲はずいぶん開けてしまったが、ここは35年以上も前に兎山岳会の八ヶ岳合宿で来た際、橋元 兄が遭難した現場ではないだろうか。  虻もほとんどいなくなったので、さわやかな風に吹かれてしばし休憩した後、沢筋の山道を登 りはじめる。鉄骨造りの頑丈な橋を幾度か渡り返すと、やがて、赤岳鉱泉小屋の建物が見えてき た。14:10テント場到着。


 さわやかな風に吹かれてしばし休憩(S)

 昔の赤岳鉱泉との違いを話しあう二人(N)

 ここが夜の宴会場(N)

林の間から頭だけ見える大同心(N)

 ところが、印象がまったく違う。小屋には昔の面影があるものの、目の前に生い茂るシラビソ (たぶん)の林が視界をさえぎり、大同心が見当たらないのだ(小屋の一角から、木の間越しに 頭だけ見えることがわかった)。この前に来てから30年以上はたっているだろうが、ずいぶん様 変わりしたものだ。  何はともあれテントを設営(幕営料は1人1000円!)して枝豆を茹で、ビールで乾杯。夕食は、 屋根つきのデッキ(キャンパー用?)にしつらえられたテーブルに場所を移す。メインディッシ ュは焼肉、酒は日本酒。このメンバーで1升は多すぎると思っていたが、いつの間にか空になっ ていた。近年、とみに腕を上げた人が約1名いるとの説がもっぱらだ。21:00前に就寝。 夜半、天空には煌々たる満月。

7月16日(土)  4:30起床。いつもの雑炊で朝食をすませ、5:45出発。ジョーゴ沢沿いに進んで尾根に取りつ き、1時間半ほどで硫黄岳直下のコルに到着した。快晴微風。遠く槍、穂高、乗鞍、木曽御岳、 甲斐駒、仙丈の峰々が望まれ、目の前には阿弥陀、赤岳が迫っている。頂上から爆裂火口を覗い た後、連立する巨大なケルンに沿って硫黄小屋方向に下りていく


 立派なゴゼンタチバナ(S)

 硫黄岳にて(N)

 硫黄岳から横岳へのなだらかな稜線(N)

 主峰赤岳と阿弥陀(S)

 小屋の周辺から、道の両側に待望のコマクサが姿を現した。花の時期は、早くも遅くもないジ ャストタイミング。立入禁止のロープを気にしつつもフォトジェニックな株を選んで写真に収め た後、まだ見ぬ白いコマクサを探しながら、横岳に向かって登りはじめる。行き会った登山者に よれば、もう少し上に1株あるという。  横岳頂上が間近に見えはじめたころ、登山道の右側に、それはあった。たっぷり時間をかけ、 眺め、写す。思えばここ何年か、夏になるとコマクサを求めて朝日岳、白馬岳、岩手山、蓮華岳 と登ってきたが、必ずしも盛りの花を堪能できたというわけではない。だが条件には恵まれた今 回の山行で、私のコマクサ探訪にもひと区切りついたような気がする。


 強固な意志もて稟と咲く(O)

 横岳にて(N)

 横岳の難所を通過するころには、陽が高くなった。諏訪側を通るときには冷風が吹き上げて快 適だが、清里側に回ると一転、暑くてやりきれない。しかし折角ここまで来たのだから、八ツの 主峰・赤岳(2899m)は踏んでおかねばなるまい。杣添尾根が合流する三叉峰、地蔵尾根との合 流点、地蔵の頭を経て、11:30赤岳に着いた。頂上小屋の周辺にも山頂にも、登山者があふれて いる。


 赤岳天望荘の向こうに赤岳2899m(S)

 赤岳頂上にて(N)

 しばし休んだ後、下山にかかる。記憶が途絶えていたのだが、ルートはここからいったん権現 岳方向への縦走路をたどり、真教寺尾根を左に分けて下っていくと、文三郎道・中岳道への分岐 にいたる。頂上からは眼下の尾根を南から回り込むような形になるため、一瞬、下り口を見失っ てしまった。  文三郎尾根の下りは、上部がすっかりガレていて、予想外に難渋。それでも、次から次へと登 山者が登ってくる。行者小屋に着くと、さすがに今日は土曜日、色とりどりのテントがひしめき、 広場のベンチも満杯だ。辺りを眺めると、なるほど山ガール急増との噂もうなずける。


 すっくと立つ不二の峰(O)

 懐かしの行者小屋(S)

 冷たい水をがぶ飲みして元気を回復し、中山乗越を経て、13:30に赤岳鉱泉帰着。テントを撤 収して、最後の下りにかかる。この時間になっても登山者は引きも切らず、よそごとながら小屋 の混雑が思いやられる。15:30美濃戸の駐車場に到着。警戒していたが、虻の来襲はなかった。

 帰りは小淵沢経由とし、IC手前の道の駅にある延命の湯(600円)で汗を流す。温泉はなかな か快適だったが、併設の食堂がいただけない。地元のお母さんたちの運営ということだが、料理 がよくない上に料金だけは一人前だ。ここからは、善さんに運転を代わってもらう。心配してい た渋滞に遭うこともなく、20:05新丸ビル前に着いた。


 (N)

ホームへ ↑
inserted by FC2 system