2010年08月05日
Photo by Z.Suzuki
,T.Nakamura & T.Omori |
眼下に針ノ木峠を望む・後方は針ノ木岳からスバリ岳
日程:2010年7月25〜27日
参加:鈴木善三(善さん)、中村貞子(チャウ)、大森武志
大町に行くなら中央道・豊科IC経由とばかり思い込んでいたが、調べてみると長野道・麻績
IC経由のほうが距離が短く、高速料金も安い。そこで善さんをピックアップしたあと、15:00
に南浦和駅でチャウと合流。関越〜長野道のルートをとる。
ところが下仁田を過ぎるあたりから雨が降りだし、やがて激しい雷雨となった。「ワイパーが
効かない滝のような雨というけど、まさにそれ。後部座席から身を乗り出してみても、前の車の
テールランプが時どき見えなくなる。かろうじて路面の白線は見えていたが、恐怖だった。大森
さん、こんな状況でよく100キロも出してたね」(中)。
確かに、対向車も信号もない高速道路だから走れたのであって、一般道だったら車を止めて雨
をやり過ごすしかなかっただろう。軽井沢あたりが最もひどく、連続するトンネルだけが救いの
神だった。しかし八風山トンネルを抜けると、道は濡れてもいない。文字どおりのゲリラ豪雨で
あったのだ。
更埴JCから長野道に入り、麻績ICで降りる。ここから大町までは曲がりくねった峠越えで、
決して快適とはいえない。19:00に扇沢に着き、市営の無料駐車場に入る。テントの設営が終わ
ると、プチ宴会の開始だ。
7月26日(月)曇のち雨
6:00駐車場出発→8:00大沢小屋→8:30雪渓取り付き→11:15針ノ木小屋着(テント設営)
→11:50針ノ木峠(2536m)出発→13:00蓮華岳頂上(2798m)→13:30頂上発
→14:25テント場着
かるく雑炊の朝食をとり、駐車場を出発。扇沢駅で朝のお勤めを済ませ(トイレは24時間オー
プン)、登山道に向かう。すると入り口に入山届けのテントがあり、こと細かに記入させられた。
「中高年登山者が多いから、しっかり管理しようということかしらん」(中)。登山カードを書
き終えて、歩きはじめたのが6:30。
大沢小屋を過ぎて、30分ほどで雪渓となる。晴れてはいるが、かんかん照りではない。雪渓上
部から冷たい風が吹き下ろし、休んでいると寒いくらいだ。「簡易アイゼンを持ってきたので着
けてみたけど、歩き方が悪いのか滑って転びそうになったり手をついたり。着けなくても同じだ
ったかもしれない」(中)。
まもなく針ノ木谷雪渓だ(N)
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雪渓を登る(S) | 雪渓はだんだん細くなり、その末端から雪解け水が流れ出ている。「ここが最後の水場かどう
か、少し登って様子を見ることにした。やはり、そこから上は雪渓がなくなり、針ノ木小屋の直
下までザレ場が続いている」(鈴)。ここで各自の水筒のほか、4リットルの水を補給する。
水場からは、スロープ状に整備されたジグザグの夏道をたどり、11:15針ノ木小屋に到着。小
屋で幕営料(1人500円)を払い、快適そうなサイトを探してテントを張る。すでに何張りか先客
がいるが、ほとんどが単独行で混雑というほどではない。11:50サブザックに雨具と行動食を入
れて、蓮華岳に向かった。
頂上近く、傾斜が緩くなるとコマクサが顔を出しはじめる。「しかし、ガレ場いちめんにコマ
クサがみっしりと咲いているというイメージを膨らませていたけど、さほどでもない。株の一つ
ひとつも、ずいぶん小さいという感じがした。この株がもっと大きくなれば、この群落は壮大だ
ろう」(中)。
それに、少し盛りを過ぎた株が多く、5日〜1週間ほど遅かったようだ。また「途中で出会っ
た環境庁の監視員に白いコマクサが1株だけあるからと教えられたが、見つけることができなか
った、残念!」(鈴)。
蓮華岳山頂は間近(O)
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コマクサの群落(N)
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最盛期にはやや遅かったか(N)
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針ノ木小屋・上方緑色がわれわれのテント(O) | 頂上でしばし眺望を楽しむうち、西の空がだいぶ暗くなってきた。きょうの夕立は必至のよう
だ。「小屋が見えてきたあたりから、ぽつりぽつりと始まった。大森さんが一人遅れている。雨
具は合羽も傘も私と善さんが背負っている。早く来ないかなと思っていたけど、小屋寸前で、と
うとう大粒の雨が落ちてきた」(中)。
みんながテントに入るのを待っていたように雷雨が本格化し、風も出てきた。こうなると飲む
しかないが、チャウの顔色がよくない。「下山するころから頭痛が始まった上に、雨に濡れたの
がよくなかった。テントの中で着干しするつもりが、寒気がしはじめたので、男2人を横向きに
させて、上を全部着替えた。それで少し人心地が着いたけど、頭痛は治まらない。呼吸法に気を
つけてはいたが、いつもの病が始まったのだ。つまみにナス、キュウリ、ミョウガの酢の物を作
ったあとは、ほとんど横になっていた」(中)。
「また今回はシュラフを持ってこなかったので、今夜寒くて寝られないかもと後悔する。とに
かく、あるもの全部着て、大森さんのフリースも借りて、足下には合羽の上着を巻きつけた。21
:00ごろトイレに起きると、月の周りに大きな輪ができている。明日は天気、大丈夫かなぁ」
(中)。
7月27日(火)晴れ
5:00テント場出発→6:00針ノ木岳(2820m)→6:30針ノ木岳頂上出発
→7:30スバリ岳(2752m)→9:35赤沢岳(22677m)→10:40鳴沢岳(2641m)
→11:25新越山荘→12:25岩小屋沢岳(2630m)→14:00種池山荘→14:35種池山荘出発
→17:25扇沢・爺ヶ岳登山口到着
「4時だよという中村さんの声で目が覚めた。まだ暗いからもう少し寝ていようという大森さ
んの声にも、そのまま起きる。ゆっくりとテントなど畳んで身支度ができると、大森さんからバ
ナナが2本支給され、ちょうど5:00にテント場を発った」(鈴)。
いきなりの急登だが、足場は悪くない。コースタイムどおりに1時間で針ノ木岳到着。前を歩
いていた年配の夫婦(後に、男性が大森と同じ65歳で、徳山から車でやってきたことが判明)も
ここで朝食のようだ。頂上からは、きのう登った蓮華岳が東方に、西方には黒部峡谷を隔てて剣
・立山が、また北方には、これからたどる稜線の向こうに鹿島槍〜白馬と、素晴らしい展望が開
けている。
イブキジャコウソウ(N)
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シコタンソウ(N)
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ミヤマオダマキ・針ノ木岳にて(N)
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針ノ木山頂の2人(O) | 善さんは、勘違いしていたようだ。「自分は、針ノ木小屋の次は種池山荘とばかり思ってい
た。次の小屋が冷池小屋で、その先の山が鹿島槍。それにしては鹿島槍は低いと感じたが、双
耳峰なので間違いないと思い込んでいた。大森さんと意見が合わず、中村さんの地図で確認す
ると、その山は爺ヶ岳だった。爺ヶ岳も双耳峰なんだ……。種池山荘の手前に新越山荘がある
とわかり、一気に種池が遠くに感じられた」(鈴)。
針ノ木岳を過ぎると、イワギキョウ、ミヤマオダマキ、チングルマ、ショウジョウバカマ、
ミヤマキンポウゲ、シナノキンバイなど、いろいろな花に出会うことができる。スバリ岳と赤
沢岳の鞍部には、コマクサも姿を現した。スケールは蓮華岳に比べるべくもないが、花の密度
では引けをとらない。高山植物の女王といわれるコマクサだが、飛騨側からの寒風に耐えて瓦
礫の斜面にしがみついている女王様は、もしかすると嗜虐趣味がおありなのかもしれない。
剣・立山をバックに・スバリ岳(S)
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ミヤマクワガタ(S)
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スバリ岳を振り返る(N)
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黒部湖を眼下に!(S) | 赤沢岳、鳴沢岳の2つのピーク(その間の地下深く、扇沢から黒四ダムにいたる関電トンネ
ルが走っている)を越えると、新越山荘もすぐそこ。「新越山荘を出たあとだったか、大森さ
んがサルがいるというので前方を見ると、おなかに子供をぶら下げた母ザルを含む10頭余りの
団体さんで、キーキー鳴く声も聞こえる。登山道には黒緑色のかなり立派なウンチがあって、
熊か?と心配したが、真新しいところを見るとサルの糞のようだ。例の夫婦づれによると、サ
ルより前に雷鳥の親子にも出会ったそうだが、私たちは姿を見ることができなかった。残念!」
(中)。
岩小屋沢岳を過ぎて種池山荘が間近に迫ったころ、今日も遠くから雷鳴が聞こえてきた。降
り出す前になんとか小屋に着きたいものと気持ちがあせるが、「種池山荘の手前の湿地は花の
宝庫で、特にキヌガサソウが印象的だった、これほどの群落は見たことがない。それと、もう
少し手前で見たオオイヌノフグリに大きさも似た花は、何という名の花なんだろう?」(鈴)。
キヌガサソウ(O)
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キヌガサソウとサンカヨウの競演(N) | 種池山荘に近づくと、にぎやかな声が聞こえる。「何事かと思ったら、地元の中学生の団体
登山であった。大勢の子供たちが小屋の前を占領し、ウルサイことウルサイこと。そのうち大
粒の雨がぽつぽつと落ちてきたので、小屋の中で休むことにする。大森さんと善さんはビール、
私はアクエリアス。また少し頭が痛くなってきたが、善さんも前夜の飲み過ぎで膝の調子が悪
いという。ビールも少し飲んだだけで、大森さんに渡している」(中)。
そうこうしているうちに外が明るくなってきて、結局30分くらい休んだだけで下りにかかる。
「どんな道か心配だったけど、しっかり整備された歩きやすい道だった。おかげで、古傷をか
かえた右膝でも3時間近くの歩行に耐えられた。これが蓮華の大下りのようであったら、途中
でダウンだ。17:20過ぎ、爺ヶ岳登山口の看板を見つけてほっとする」(中)。
善さんが駐車場まで車を取りに行ってくれ、そのまま大町温泉郷の薬師の湯に直行。「善さ
んによると、ここは剣の帰りにも寄ったそうだが、記憶にない。しかも新館ができて、風呂場
も大きくなっていた。とにかく12時間も行動した後の温泉は、気持ちいいなんてもんでないね」
(中)。
帰りは大町から長野に抜け、高速入り口に近い「おぎのや」で蕎麦を食べた。「入ったのは20
:00前で、最後のお客だった。ここでは僕と中村さんがビールを飲み、あとは大森さんが一人
で運転してくれて、22:30無事南浦和駅に到着した」(鈴)。
(この記録は3人のメモをつなぎ合わせ、大森が1本にまとめました。)
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